詩 「同乗者」




同乗者


道に入ったときに、
君は気づかなかったが、
地平線までずっと一方通行だ。
いや、実はさっき、Uターンできるところを通り過ぎたのだが、
僕は黙っていた。
(戻りたい地点がわからなかったから)

何年前だったろうか。
やはり、こうやって二人で車で走っていたが、
今、道の両側には何もないが、
あの時は、町を見つけ、車を降りた。

町に入ると、車を置いた場所が分からなくなり、
僕たちは、
船から鰐だらけの島に降りて戻れなくなった海賊みたいに、
町をさまよった。

いや、鰐どころか、夜中の町には誰もおらず、
夜の建物たちが生きているのは、昼間誰かが使っているからだが、
ビルも道も、
その他、この町にあるもの全部、全く息吹が感じられず、

使っていないとしたら、何のために、この町は作られたのか?

あの時点に戻りたい。

存在しない寝息を、君と一緒に探した。



君が運転していると思っていたのに、
今、君は、助手席にいる。
(そして僕も運転していない)

この先に三叉路がある、と示す標識が現れた。
どこまで行っても三叉路はなかった。

道の先に、カタツムリの殻が見えた。
つまり、
三叉路ではなく、
道の右側に、カタツムリの殻のように、丸い通路がくっついている。

通路は道から出て、道に戻っていた。
僕たちは、通路に車を入れ、ぐるりと回って、道に戻った。

「この通路のところは、前に来たことがある」と君は言った。
(Uターンしていないのだから、前に来たはずはない)

僕はたぶん、
この数年にわたって、忘れていたのだ。

君が生まれつき声を持っているというあたりまえの事実も。
君が僕の考えとは真逆の意見を発話する可能性も。

「前に来たことがある」
君はもう一度言った。




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