路地裏の理髪店【不思議な話】
「こんなとこにあったっけ」
飲み会で遅くなった夜、マンションのすぐ裏手の路地裏で、煌々と光る看板を見つけた。
【〇〇〇理髪】
難しい旧漢字なのか、なんて書いてあるのか分からない。
光に吸い寄せられる虫の如く、フラフラと歩いていき中を覗き込んだ。
チャキ……チャキ……
猫が猫を散髪していた。小さい手で、小さいスキバサミを器用に使っている。寝そべる猫は気持ち良さそうに欠伸を1つして、ふとこちらを見た。
その猫は家で飼っている猫に……よく似ていた。
『にゃおん』
と、窓で隔たれているはずなのに、まるで耳元で鳴いているかのように鳴き声は頭に響き渡った。
次の瞬間、ベッドで目が覚めた。
ぼんやりとした頭で周りを見回すと、飼い猫がこちらを見つめている。
「痛てて……」
二日酔いのせいで頭がぐわんぐわんとする。
支度をして家出る間際、
「にゃおん」
と、飼い猫が一声鳴いた。