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呪いの手紙【ホラー】

何故こんな手紙が貴方宛に届いたのか、皆目検討もつかないでしょう。両親にも恵まれ、順風満帆な学生生活を送り、社会人としてもキャリアがあり、奥さんに子供が2人もいる。それなりの苦労はありつつも贅沢や旅行で楽しい一時を過ごしていますね。しかし私はそんなあなたに死んで欲しい。可能な限り苦しみ抜いて一縷の希望に縋り、それにすら裏切られて絶望の中汚らしく惨たらしく死んで欲しい。あなたがこの世界にのうのうと生きている事が本当に許し難いし、汚物と欺瞞の塊が人の皮を被っているのに気付かない周りにも反吐が出ます。あなたは息をする様に嘘をつきます。悪びれもせずに。保育園では隣にいただけの私の靴に泥を擦り付け、「花壇を潰した」と先生に言いましたね。確かあれは先生が初めて園の為に製作した花壇でした。私ではないと訴えても先生の前ではいい子ぶりっ子のあなたが擁護され、私は冤罪なのに謝らざるを得ませんでした。私は嘘つきのレッテルを貼られ、行きたくもない園に行かされ、それこそ石を投げられた事もあります。自分がやった訳ではないのに「あなたがやったんだから我慢しなさい」と親に言われる気持ちが分かりますか。小学校に上がれば何か変わるかと期待しました。無駄でした。お調子者のあなたはたちまちクラスで人気者になり、男女問わず持て囃され、グッピーが入っていた水槽を割った時でさえ私のせいにしました。教室内で紙を丸めて作ったボールで野球をしていた時です。覚えていますか。それとももう記憶は綺麗さっぱり抜け落ちましたか。たまたま私の机が近くにあって、たまたま私の足が床に伸びていて、それを踏んだクラスメイトが体勢をくずして持っていた箒で水槽を割ったのです。先生が来てあなたはいの一番に「私が足を引っ掛けた」と言いました。耳を疑いました。私に一体何の恨みがあるのでしょうか。先生に叱られるだけでなく、弁明も虚しく親にも叱られ、更に孤立し、ただただ耐える日々。物が無くなった事は数しれず、バレれば親に叱られるから言い出す事も出来ず、筆箱の中には校庭で見つけたであろう虫達が入れられ、雑巾を絞った後の水をかけられ、帰宅しては叱られる。一体何度、何度死にたいと思い手首に刃を走らせたことか。それでも私が死ななかった、いや、死にきれなかったのはあなたへの怒りと憎しみからです。中学校での生活など今思い出しても動悸と吐き気が止まりません。保健室登校の意味など果たしてこの世にあるのでしょうか。先生からは仮病の癖になどと表立って愚痴をこぼされ、放課後誰かに見つかろうものなら男子も含めて10人程で追いかけ回され、荷物は全て溜池に捨てられる。そんな毎日が続く傍で、あなたはバスケ部として全国大会に行き有終の美を飾っていました。その看板が校門に飾り付けられるのを見て、私はぽっきりと心が折れました。朝起きる事も出来ず常に頭痛と吐き気に苛まれ、肌は荒れ髪も抜け落ちました。母がしたのは市販の頭痛薬を買ってきただけ。それから何年が立ったでしょうか。あなたが教職に就くと風の噂を耳にしました。私がどれ程怒り狂ったことか。父に止められていなければそのまま包丁を持って小学校に押し入るつもりでした。私が直接ぶち殺しにいければと常に考えていますが、代わりにこれを送付します。あなたと、あなたの家族、友人、教え子、仕事仲間を疑い、自ら破滅へと導いてくれる様に祈って。

怨具 仲畑


児童10人、職員2人を刺殺
子供2人と妻を撲殺した後、家に放火し自殺した男性の部屋より手紙
また、一対の人差し指と大量の髪の毛を押収━━

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