白い息【怪談】
「ねぇねぇ、何で冬になると息が白くなるの?」
スーパーからの帰り道、息子がにこやかに尋ねてきた。はぁー、はぁーと何度も息を吐き出していたから気になってしまったのだろう。
しかしまだ5歳の息子にどう説明したものか……水分量がどうのと言っても難しいだろうし。
そう思って横を見ると、まだ息を吐いている。
「えっ」
見間違い……かもしれない。今見れば全く普通な様子だし、疲れているのだろうか。
「どうしたのお父さん」
「え、あ、いや」
「ねー、どーして白くなるの?」
そう言って再度吐き出した白い息は、霧散せず、固まり、確かな質量と形を保ったまま、また息子の口へと吸い込まれた。
私が唖然としていると息子はまたしても息を吐き出したのだが、今度は吸い込まれる事無く空へと登っていった。
それが原因なのだろうが、その日以降、息子は全く笑わない子になってしまった。