工高生の作品①-地域のお宝さがし-107
■工高生の作品-工芸高校Ⅰ-■
最近、学生時代の友人のYouTube動画をよく見ます。彼は、早い時期に建築から画家に転身し、現在も精力的に制作するかたわら、動画で水彩画の着色やペン画スケッチなどの技法を紹介しています(注1)。そんな関係からか、絵画の描き方やデザインに関する動画が、集まってくるようになり、その中で、「視るデッサン」(3年前、大阪府立工芸高校)が目にとまりました。
以前(と言っても昔話になりますが)、大阪市立工芸高校の建築科(現:大阪府立工芸高校 建築デザイン科)で建築史の授業を担当した際、絵の上手な生徒が多いことに感心しました。授業は、スライドを用いて、日本・西洋・近代の建築の流れを紹介するという形態です。定期試験だけでは面白くないので、暑中見舞いの作成を夏休みの宿題に課しました。条件は、歴史的な建築を描くが、それ以外でも可。はがきは「カモメール」とし、上位3作品には、賞品(製図用シャーペン)を贈呈。ただし、当選の景品は筆者のものとするというものです。その一部を紹介します。
注1)江刺家隆「青いカモメの絵画教室」。興味がある方は、覗いてみて下さい。
●エレクティオン●(図1)
エレクティオンは、アクロポリスにあり、パルテノンの北部に位置しています(図2)。土地の高低差を利用した複雑な立面構成で、イオニア式オーダーが美しい、瀟洒な神殿です(図3)。エレクティオンといえば、図1の左側、突出部の女神像(カリアティディス、図4)が著名なのに、なぜ描かなかったのか、と思った記憶があります。ペンで良い雰囲気に仕上げられています。
アクロポリスでは、パルテノンが必見です(図5)。
●フラウエンキルヘ●(図6)
フラウエンキルヘは、ドレスデン(ドイツ)にある、バロック教会堂です。『西洋建築史図集』に掲載されている写真を参考にしたと思われますが、色彩の雰囲気がとても良いと思います。
●アメリカ館●(図7)
はがきには、「アメリカ館(ブファンド邸)大正期築」との記載がありますが、どこにあるのか分かりません。水彩の着色で美しく仕上げられています。
●アメリカ国会議事堂●(図8)
この作品は、2枚のはがきに描かれています。大きなドームから、当初は、イギリスのセント-ポール大会堂(ロンドン)と思っていましたが、調べてみると、アメリカ合衆国会議事堂(ワシントン)と思われます(左右が省略されている)。陰影による表現で仕上げられています。
●サグラダ・ファミリア教会堂●(図9)
サグラダ・ファミリア教会堂は、バルセロナ(スペイン)にあり、現在も建設が行われています。この作品は、4枚のはがきに分割して、点描で描かれていました。4枚そろった完成図を見たときは、本当に「ギョ!」としました。ペン画で点描を用いて仕上げられています。筆者も同様のアングルで撮影しています(図10)。初見時には、正面以外、まだまだ工事中でした(図11)。
●グエル公園門衛館●(図12)
この作品も点描で仕上げられています。ガウディの作品のなかでは、目立たない建築と思われますが、着眼点が面白い。グエル公園は(図13)、1階列柱廊の天井(図14)や、その上部の公園のベンチにもモザイクが施され、回廊の柱は人体像で構成される(図15)など、視るところが多い公園です。
学生時代の教科書には、ガウディの作品では、「カサ-ミラ」が掲載され、「幻想的な曲面の構築が特色である」とありましたが(注2)、実見すると、街の景観に溶け込んだ素敵な建築でした(図16)。
注2)藤岡道夫他『建築史』(市ヶ谷出版、1970年)
■閑話休題■
結局、カモメールでの提出は少なく、景品も当たらず、賞品の出費と作品が残りました。そこで、次は年賀状と意気込ました。次回は、それらの作品を紹介します。