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ヨーロッパの近代建築④バルセロナⅡ-地域のお宝さがし-125

■グエル公園■
 グエル公園は、当初は分譲住宅として計画されましたが、それが頓挫したため、1922(大正11)年に、バルセロナ市に寄贈されました。公園には、正面階段の奥に「市場」、その上部に「ギリシャ劇場」、左側に「アーケード」が配されています(注1)。

注1)最初の訪問時にガイドは、「市場」は元市場、「ギリシャ劇場」はグ             ランド、「アーケード」は遊歩道と説明したが、現在は、「」の名称             が用いられている。

●門衛館●
 入口の「門衛館」(図1・2)と「待合館」(図3)を見て、サルバドール・ダリが「砂糖をまぶしたタルト菓子のようだ」と評したそうです(注2)。確かにその通り。この上手な比喩に、思わず「座布団1枚!」。入る前から楽しそうな予感がします。

図1 門衛館
図2 門衛館の頂部
図3 待合館

注2)ウィキペディア「グエル公園」。

●入口●
 入口正面の階段の奥にある「市場」の上部が「ギリシャ劇場」です(図4)。階段中央部の丸い壁面の後ろに、有名な「トカゲ」がいます(図5)。初めて見たとき、「トカゲ」というより、「サンショウウオ」じゃないかと、突っ込んでしまいました。もっとも、この「トカゲ」は、「ドラゴン」としても紹介されています(注3)。

図4 正面の階段
図5 トカゲ

注3)下村純一『不思議な建築』(講談社現代新書、1986年)。

●市場●
 「市場」の周囲にはドリス式オーダーが並び、その上部の突出部は、「ギリシャ劇場」周囲のベンチ、顔を突き出した動物は犬に見えますが、雨水を排水するガーゴイルと思われます(図6)。

図6 ギリシャ劇場周囲のベンチとガーゴイル

 「市場」の内部は多柱室、天井はモザイクタイル張りで、各所に円形の美しいモザイクの装飾が設けられています(図7~9)。

図7 市場側面
図8 内部
図9 天井のモザイクタイル

●ギリシャ劇場●
 「ギリシャ劇場」の周囲には、石垣やモザイクタイル張りのベンチが設けられています(図10・11)。

図10 ギリシャ劇場周囲の石垣
図11 周囲のベンチ
図12 ベンチ部分の陥没部

 ベンチ部分の地面が陥没していたので、よく見ると、鉄骨が配置されているのが分かり、改めて、「ギリシャ劇場」は、「市場」の列柱廊に支えられている人工のグランドだと実感しました(図12)。

●アーケード●
 アーケードは結構な距離があり、変化に富んだ景観が楽しめます(図13)。入口の天井部は、鍾乳石のように石を張り付け、その奥の、柱・天井ともに石張りの半ドーム状の空間は、とても落ち着きます(図14・15)。石が張り付けられた柱の外側面には、人体像が作り込まれています(図16)。

図13 アーケード
図14 入口
図15 入口奥
図16 柱の外側面の人体像

■閑話休題■
 筆者が工高時代の教科書『建築史』(実教出版)は検定教科書、大学時代のテキスト『建築史』(市ヶ谷出版)は一般書籍です。テキストを購入した際、両書の共著者が同一で、写真に若干の差異があるものの、内容がほぼ同一なことに気がつきました。そこで、両者の「まえがき」を比較すると、建築史を学ぶ目的について、前者は、「生徒が建築家ならびに建築技術者として必要な常識を養うことにある。」、後者は、「学生が建築家ならびに建築技術者として必要な常識を養い、(後略)」とあり、「生徒」が「学生」に変わっただけでした。これにはびっくりした反面、建築史(歴史)で学ぶ内容は、生徒も学生も大差がないのだと改めて認識しました。

次回は、グエル邸、グエル別荘、サグラダ・ファミリアなどを見ます。

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