東淀川区自転車巡り-地域のお宝さがし-71
■歴史の散歩道■
図1(注1)のような、「サイン柱」と「つたい石」が、市内各所に設けられています。これは、各所に残された先人の遺業や由緒ある史跡などを顕彰するため、「歴史の散歩道」(以下散歩道)として整備されたもので、市域を網羅するように、5つのコース(「淀川・江口」、「中之島・鶴見」、「上町台地北」、「今里・平野郷」、「上町台地南」)が設けられています。新・旧2種類の標識から、整備が継続して行われていることが窺われます。
図1 歴史の散歩道標識
「散歩道」が整備され始めた時期など、詳しいことは知りませんが、昭和51年(1976)11月には、上町台地と江口コースの一部が完成し、平野郷コースの整備が着工されようとしていたようです(図2)。
図2 平野郷コースの整備
注1)図1・14は、「歴史の散歩道[淀川・江口コース]パンフレット(2013年)より転載。
■せせらぎの道■東淀川区大桐5丁目
前回紹介した「逆巻の地蔵尊」のすぐ横を、「散歩道[淀川・江口コース]」の一環として整備された、「せせらぎの道」(以下江口水路)が北から南に流れています(全長610m)。
「江口水路」は、元の農業用水路を復活させたもので、川幅1.5~2mの浅瀬で、北部は岩や石を配した日本庭園風(360m、図3)、南部は敷石張りの洋式庭園風(250m、図4)に設えられ、南端で農業用水管に戻されているそうです(注2)。
図3 江口水路:北部
図4 江口水路:南部
このような水路は、「散歩道」以外にも設けられています。身近な例を掲げます。
注2)「歴史の散歩道[淀川・江口コース] 」パンフレット(1990年1月再版)
■楠根川跡緑陰歩道■城東区新喜多東1丁目
「楠根川跡緑陰歩道」(以下緑陰歩道)は、昭和44年に埋め立てられた楠根川の跡地を、昭和63年に、水路や植栽などが配された遊歩道(全長約400m、幅員6~16m)として整備されたそうです(注3)。
西端の吐水口から噴き出した水は、石段を音を立てて流れ落ち(図5)、東へ流れる水路は洋風の設えです(図6)。
図5 緑陰歩道:吐水口
図6 緑陰歩道:東部への水路
北部に位置する寝屋川本流とは逆方向に流れていることから、人工の水路と分かります。
吐水口脇の「食品館」は、元公設市場でした。その横の祠は、地域の歴史を示す貴重な景観要素です。水路に面する住宅への小橋も設けられ(図7)、東部は、水路脇に石組みが施された和風の設えです(図8)。
図7 緑陰歩道:住宅への小橋
図8 緑陰歩道:東部の石組み
注3)「城東区楠根川緑陰歩道」
■せせらぎ施設広場■城東区野江1丁目
「せせらぎ施設広場」(以下広場)の水路がいつ頃設けられたのか、詳しい事は知りませんが、平成18年(2006)時点では、樹木は未成長ですが、円環部と壁面に水が流れ(図9)、水路の水量もありました(図10)。
図9 広場:円環部と壁面の水流
図10 広場:水路の下流
この場所は、バス停付近で繁華街にも近く、多くの人の憩いの場になるだろうと期待していました。
■せせらぎ■神戸市兵庫区松本地区
「せせらぎ」は、阪神大震災で被災した松本地区に、再生水を利用して、幹線道路の歩道部分に設けられたそうです(図11、注4)。
図11 松本地区の「せせらぎ」
水路の水は、下水の汚れを除去した高度処理水だそうです。水路には金魚や鯉が泳ぎ、菖蒲が植えられており、住民の憩いの場となっています。検索してみると、水路にネットが架けられ、魚が保護され、植栽も育っている写真がありました。
注4)産経新聞(2004年1月15日)
■水路その後■
●江口水路●
「江口水路」は、北部(図12)も南部(図13)も水流が無くなり、落ち葉がたまるなど、荒廃した状況でした。
図12 北部
図13 南部
パンフレット(注1)には、水が流れている様子が掲載されているので(図14)、平成25年(2013)以降の変化なのかと、残念に思っています。
図14 パンフレット掲載の水路:南部
「緑陰歩道」の水路も水流が無くなり、商業施設が閉鎖され、祠も傷んでいました(図15)。水路は落ち葉だらけでしたが、樹木の美しさがなぐさめです(図16)。
図15 吐水口
図16 小橋付近
●広場●
「広場」は、樹木が成長し、円環部と壁面から水が流れていましたが(図17)、下流に水はありません(図18)。樹木は成長していますが、水路脇の植え込みには雑草が生えていました。
図17 円環と壁面
図18 水路下流
この場所は、多くの人が行き来するためか、以前にも、灌木が引き抜かれ、ゴミが捨てられていましたが、その状況に変わりはありません。
■閑話休題■
これらの水路に共通するのは、水流が無くなっていることです。「江口水路」・「緑陰歩道」は、地域住民の清掃などにより、美しく維持されていたので、荒廃の原因は、「江口水路」では水源である農業用水路が廃止されたのか。「緑陰歩道」では、本流と逆方向に水を流すのに経費がかかりすぎての水流の停止か。「広場」は不特定多数の人が利用するため、住民による維持・管理が難しかったのかなど、さまざまなことを考えてしまいます。
水流の停止が予算的な問題となると、如何ともし難いのですが、例えば、水量が問題なら、「せせらぎ」のように、高度処理水の利用も考えられるだろうし、水路に深・浅の変化をつけることで、子供の遊び場にもなり、魚などを放流することで、蚊などの発生も抑制できるだろうし、保存・活用のイベントを行うことで、「地域住民の憩いの場」という意識がさらに高まるのではないかと感じています。
街の活性化に、水と緑は欠くことのできない要素です。行政と住民が努力してつくりあげてきた、良好な水環境を継続することはできないのだろうかと、残念に思っています。