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「AOI夜」(2019)FNCY(1stアルバム「FNCY」収録)

(2021.10.15発行フリーペーパーより抜粋)

 ヒップホップにおいて「リアルじゃない」事は「フェイク」とされ、時に糾弾されます。スーパー雑に例を挙げると不良アピールをしながら実は大して悪くないヤツなどですが、それが転がりに転がり「ラッパーは悪くきゃ!」みたいな層が一定数存在します(否定はしません)。無論反対に「別に悪くなくてもいいだろ」って層も存在する訳で、何十年も前からスチャダラパーを筆頭にギャングスタ・ラップとは異なるヒップホップは存在し続け一定の人気を獲得しています。
 そしてこの曲においても、リリックに80sヒップホップでは切っても切り離せない幾つかの思想は不在です。むしろロマンティックで、MVはカラオケのイメージ映像風で、バブル期〜90年代初期の日本のムードがハズし要素となっています。

「AOI夜」
https://youtu.be/nKd-QTZjFF4

楽し〜〜!!

そしてそれが3人にとっての「リアル」って事なのだと思います。

 「共感性ないし別に不良とか憧れないし、アウトローなリリックが邪魔!」なーんて30代以上のヒップホップリスナーにとっては、不快な情景が浮かぶ事もなく余計な事も考えさせられずに踊れる昨今のヒットチャートにランクインする楽曲とは一線を博すFNCYの曲たち。20代以下のリスナーにとっては「新しい!」と思われるのかも知れません。

 スネアとキック、シンセサイザーのサウンドから80s USダンス・ミュージックっぽさをありありと感じる事が出来るのですが、古臭く感じないのはアレンジや鎮座DOPENESSのフロウ、なんといってもグルーヴなのでしょうか。hey! ho! と、古っぽい要素もあえて入れ込んでるのかなと思うんですが(だって単純に気持ちいいから!!)と、良い音楽の創造をスキルフルな3人がピュアにおこなっていて、プロモーションにも積極的です。割愛しますが新しい手法に驚きました。

 G.RINA、最先端クラブ•ミュージックをプレイしつつ80sディスコサウンドへの愛があり得意ともしている、という認識です。シンガーとしても大好きです。

 ZEN-LA-ROCK、日本のヒップホップファンには言わずもがなですが定期的に(この人すげえな〜)って思わされます。大エンターテイナーだと思っています。必殺仕事人。

 温故知新と一言で言っても、それを体現する事は指南の技。FNCYはそれを軽々とやってのけているのか、苦労に苦労を重ねて生み出した楽曲たちなのかはわかりませんが、リリースペースから察するに前者なのではと思います。末恐ろしや。

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