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十五の君に伝えたいこと ~「手紙 ~拝啓、十五の君へ~」を歌いながら

彼自身は荒れ野に入り、更に一日の道のりを歩き続けた。彼は一本のえにしだの木の下に来て座り、自分の命が絶えるのを願って言った。「主よ、もう十分です。わたしの命を取ってください。わたしは先祖にまさる者ではありません。」彼はえにしだの木の下で横になって眠ってしまった。御使いが彼に触れて言った。「起きて食べよ。」見ると、枕もとに焼き石で焼いたパン菓子と水の入った瓶があったので、エリヤはそのパン菓子を食べ、水を飲んで、また横になった。主の御使いはもう一度戻って来てエリヤに触れ、「起きて食べよ。この旅は長く、あなたには耐え難いからだ」と言った。エリヤは起きて食べ、飲んだ。その食べ物に力づけられた彼は、四十日四十夜歩き続け、ついに神の山ホレブに着いた。
旧約聖書 列王記上 19章 4‐8節 (新共同訳)

こんにちは、くどちんです。キリスト教主義学校で聖書科教員をしている、牧師です。

「リモートコーラス部」というのを、ほぼ月イチでやっています。気付けばもう3年にもなるのね。ほんと楽しい。

何となく「仕上がったな」と思うと次の曲を探す……というゆるゆる具合で続けているのですが、この度新たな課題曲(?)にしたのがアンジェラ・アキの「手紙」。「十五の僕」が、大人になった自分に宛てて悩みを吐露する手紙を書く。それを受け取った「大人の僕」が、「十五のあなた」に伝えたいことを返信する。そんな歌詞です。

自分とは何でどこへ向かうべきか 問い続ければ見えてくる
荒れた青春の海は厳しいけれど 明日の岸辺へと 夢の舟よ進め
(中略)
ああ 負けないで 泣かないで
消えてしまいそうな時は 自分の声を信じ歩けばいいの
いつの時代も悲しみを避けては通れないけれど
笑顔を見せて 今を生きていこう

歌いながらもじーんと来て、メロディラインと相まって涙ぐみそうになる歌詞。

なんだけど。

今回改めて歌ってみて、「はて、この『大人の僕』は何歳なのか?」と思ったのです。
「いい曲だけど、今の私が十五の私に語りたいことは、これとはまた違う気がする……」と。

私が一番引っかかったのは、「夢の舟よ進め」「笑顔を見せて今を生きていこう」の辺りです。
すごく励ましに満ちていて、前向きな言葉。力をもらえる歌詞です。
でも今の私は却って、その励ましが負担や重荷になることを恐れてしまうのです。
「しんどくて前に進めない日もあるよね」
「笑顔になれないこともあっていいよ」
そう言いたくなってしまう。
そんな風に考えると、この「大人の僕」はきっと今の私より若い、20代~30代くらいの、まだまだ自分自身に「若さ」というエネルギーの満ち溢れている年頃なのかな、なんて思うのです。

夢に向かって進めなくてもいい。その場にうずくまって、倒れてしまっても大丈夫。笑顔で歩んで行くことができなくても、きっとそのうちまた少し力を取り戻して、立ち上がることはできるから。そうしたら、時間はかかっても、また歩を進めることができるようになるから。

励ましよりも、そういう慰めや受容を語りたくなってしまうのが今の私なんだなぁ、と気付いたのでした。

冒頭に引用したのは、エリヤという預言者の物語の一部です。追手に追われ、傷付き疲れ果てて倒れてしまったエリヤは、死をも願います。
しかしそんなエリヤに、神さまは御使いを送り、食べ物と水を与えます。

それらを食べ、飲んだエリヤは、再び力強く歩き出したのでした! 

……とはならない。

エリヤは再び横になるのです。

横たわるエリヤをまた御使いが訪れ、こう言います。
「起きて食べよ。この旅は長く、あなたには耐え難いからだ」。
そしてまた食べ物と水をいただいたエリヤは、今度はそれによって力づけられ、四十日四十夜歩き続け、ついに神の山ホレブに到着するのでした。

ここで四十日四十夜というのは、「長い長い時間」ということを表しています。
死さえも望んでいたエリヤを力付け、それほどの長い道のりを歩ませたものは何だったのか。

もちろん第一には「天からのパンと水」ですが、私は御使いの言葉が気になって仕方ありません。
「この旅は長く、あなたには耐え難いからだ」。
私には耐え難い、私の力の及ばないものがあるということ。でも、「耐え難いものを耐えろ」と鼓舞するのではなくて、「あなた一人にとっては耐え難い旅だけれど、これからの道のりは決してあなた一人ではないよ」という支えの言葉が、エリヤを歩ませたのではないかと思えます。

「頑張れ。あなたならできるよ」。
そんな励ましももちろん素敵です。それによって力を得る人も、そういう場合も大いにあるでしょう。
でも、「自分一人で頑張らなくていいよ。一緒に行くよ。辛いのも知っているけれど、まずは体を休めて、しっかり食べて飲んで、何とかかんとか、もう一回歩み出してみよう」という受容的な促しが必要な時も、人生にはあるのでしょう。

……と、ここで調べてみたら、アンジェラ・アキさん、この曲は30歳の自分に宛てた17歳の時の手紙を基にしておられるそうです。

私より少し年上でいらっしゃるアンジェラ・アキさん。今の彼女なら、どんな歌詞を書かれるのか……。そんなことを思い巡らすのでした。

しかしやっぱり名曲ですよね。次の練習も楽しみです(^^)



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