イタリア語 単語の話(11)
読んで楽しいイタリア語の話
単語で覚えるイタリア語
101.sottovuoto (ソットブオート):“生ものを持ち帰る時に必要な言葉”
意味は「真空の」。sottoは「下の」という意味ですが、食べ物の場合は「~漬け」のような時に使う。「下の、下方の」の意味では、sottoveste(下着)、sottoscritto(署名者:申請書、宣誓書などによく使う)、sotterraneo(地下の、strada sotterranea=地下道=sottoviaでも良い)、sottovoce(低い声で)などが、良く使われることばです。
vuotoは「真空」の意味で、sottovuotoは、「真空の、真空で」という意味になる。同じような使い方には、sotto sale塩漬けの、sotto spiritoアルコール漬けの、sardine sott’olio オイルサーディンのように、浸かっているという意味がある。これと同じで、sottovuotoは、「真空漬け」で、「真空の」「真空に」の意味となる。「絶対真空」はabsoluto vuotoという。真空とは何もない状態を言うが、そんなことは不可能だそうである。絶対真空もあり得ないのだが、仮定の状態として絶対真空という。主に、生ものを買った後すぐにそれを消費しない場合、真空パックをお店で頼めば、大きなお店ならやってくれます。confezione sottovuotoといえば大丈夫です。検疫(quaranteina)基準に引っかからないのであれば、この形で生ハムや新鮮なチーズを土産に買ってくることも出来ます。但し、日本に持ち帰る時は、検疫基準について、良く調べておくこと。
102.terremoto (テレモート) と maremoto (マーレモート):“地揺れ””海揺れ”
terremotoは地の揺れで「地震」、maremotoは海の揺れで、「津波」のことである。しかし、日本語の「津波」は有名で、“tunami”で十分通じる。 地震の揺れのことは、scossa という。この名詞は、scuotere という動詞の過去分詞から名詞化したものである。
日本人の名前で、寺本というのがあるが、寺本さんが来たら、terramoto(terreが単数になっているが地震の意味になる)となって、「地震が来た」になる。
他にも日本人特有の名前で、イタリア人が喜ぶのは、東さん(Azuma)。東さんの息子が喘息で病院へ行った。医者が言うには名前が悪いと。イタリア語でアズマは喘息の意味(ただし、スペルはasma)。他に、岡さんも話題にはなる。ocaはガチョウのこと。
103.torcicollo (トルチコッロ):“寝違えるって、どこの国でもある”
この言葉を書くことになったのは、当校のイタリア人講師が、これになったから。これは、医学的には「斜頚」というがつまり、「寝違えて首が回らなくなったこと」をいいます。torcereは「ねじる」colloは「首」ですから、首がねじれたということ。かなり重症だと、ムチ打ち症状態になるが、ムチ打ち症は colpo di frustaという。frustaは「ムチ」のことで、日本語と同じだ。colpo di strega はStregaで紹介していますが、こちらはぎっくり腰です。
さて、torcicolloで「首が回らない」というと、これは日本語では、その前に「借金で」を付けた意味になるのだが、イタリア語でもcollo(首)を使って、fino al collo(首まで浸かって)という言い方をする。È indebitato fino al collo. は「借金で首まで浸かっている」で意味は「借金で首が回らない」。
collo ついででひとつ慣用句を挙げておきましょう。 obtorto collo 「意に反して」とか「心ならずも」という意味です。これの語源は、ラテン語ですので、obtortoがどういう意味なのか、イタリア語の辞書には載っていませんが、これは普通に使う表現ですから、覚えておきましょう。ラテン語ですよ。
第十章 郷にいては郷に従え
自然現象や交通ルール、歴史や週間など日本とは異なる環境の中では、それなりに生活のルールがあるようです。
104.calze (カルツェ):“短ソックスは、スポーツ、カジュアル用。紳士はハイソックスを”
履物のイタリア語を見てみましょう。靴は、scarpe(複)ですが、calzatureとも言い、靴屋はcalzolaioと言います。そしてややこしいのは、calzeは靴下で、calzetteriaが靴下屋(または靴下工場)の意味になります。calzaに-oneをつけると大きい靴下かと思いきや、calzoniはズボンのことを言います。またcalzoneは外をくるんでしまうpizzaとしても有名ですね。
一方、calzaに-inoをつけると、男性用の短い靴下(日本では一般的)を指します。何故、わざわざcalzinoというのか、それは普通の靴下calzeは膝までの長い靴下だからです。男性がイタリアで日本と同じような靴下を探そうとすると、ちょっと困るかも知れません(今はどこにでもあります)。ひと昔前には基本的にロングソックスしかありませんでした。その理由は、脚を組んだときに、毛ずねが見えることは、失礼である、恥ずかしいことと思われていたからです。勿論カジュアルやスポーツスタイルは、綿の短い靴下を履きますから、その時は毛ずねは見えますが。
一方、靴の方のscarpeに、-oneをつけたscarponeとは、登山靴やスキー靴の事を言います(mascarponeマスカルポーネと言う名のtiramisu`の材料として有名なチーズがありますが、これは関係ありません)。反対に小さい方は、scarpettaといい、子供用の靴や婦人用の靴を指します。scarpettaで覚えておくと良い表現は、fare la scarpettaという熟語で、スパゲッティなどのソースやスープをパンのかけらで、お皿の底をすくって食べることをこういいます。pantofoleはスリッパのこと、sandaloはサンダル、zoccoloは木靴(サボ)です。
105.cambio (カンビオ):“オートマ(自動変速機の車)には、乗らない一般イタリア人”
cambioとは、交換の意味。空港や駅の両替所には、cambioと書いてあるので、これは両替の意味もある。一般には、このような意味で使われることが多い言葉ですが、ここではもうひとつの意味を加える。それは、変速機、つまり車のギア、トランスミッションのことを言う。cambio automaticoがオート、cambio manualeがマニュアルである。そして、イタリアではcambio automaticoはわずかしかありません。理由は色々言われるが、私は、基本的にイタリア人は運転が好きで、車をいじることが好きなので、オートでは満足しないからだと思っています。
実際のデータはないが、1990年頃でも1%あるかどうかといわれておった記憶がありますが、2015年を超えた今でも5%は越えていないと思われる。オートは体に障害がある人が乗るものだと思われているフシもあるくらい。イタリアへ行って、会話に不足しないようにするなら、サッカーともうひとつはF1の話題を持ち出せばよい、とは私の意見だが、F1のことや、FerrariやAlfa Romeoを生んだ車についての話が大好きな国民を考えると、やはりオートマチック車に変わることは、まだ当面なさそうな気がする。
106.grandine (グランディネ):“イタリアの自然の驚異、雹”
イタリアの北部では、日本ではめったにあり得ない自然現象がある。そのひとつは、grandine これは雹(ヒョウ)のこと。雹が降るときは、とてつもない大雨になる。どれくらいかというと、道路を車で走っていて、ワイパーを最高に速くしても前が見えないほど。従い、大概雹が降るような大雨だと車は止まる。それは勿論、車を守るためもある。
何故なら、私の経験した雹は、直径が3~4cmほどのもので、車はでこぼこになる。とにかく大量の雹に当たるので、きれいにできぼこになる。つまり、全体が同じようにでこぼこになりますから、そんなデザインだと勘違いするかも知れないくらい。これは板金屋に持っていくしかない。きれいに直してくれました。高速道路で、大雨が来て雹が降りそうになると、高速道路の上を横断している橋の下に車が止まります。勿論先に止めた車が橋の真下に止めるが、その後どんどん回りに止めてきて、橋の周りは車で一杯。しばらくは、動けません。夕立のような雨ですから、すぐに止みます。
107.multa (ムルタ):“罰金も人次第”
イタリアに住んでいるとこれには時々お目にかかることでしょう。何となく日本語っぽいが、重要な言葉です。意味は「罰金」です。最初にmultaを貰ったのは、高速道路で。carabinieriに捕まるとそのうちの1人が小銃をこちらへ向けて来て、車を降ろされました。罪名は、cintura di sicurezza(安全ベルト)未着用です。まだベルト着用があまり浸透していない頃の話しです。助手席の1人も合わせて2人分の罰金を請求されましたが、交渉したところ1人分で済みました。
また、ある日これも高速道路でたまたまパトカーの後ろを走っていたら、前を走っていたパトカーに止められました。罪状は、トンネル内でのランプ未点灯。ところで、どこにトンネル(Galleria)があったかと聞いたら、100mほど前にあったじゃないかと。考えてみたら、恐らく長さが20mくらいの高架(上は高速道路に交差している道路)の下を通ったような気がすることを思い出した。まさか、あれがGalleriaじゃないでしょう、と言っても聞き入れられず、罰金を払わされるハメになりました。またこんなこともありました。まだ住む場所が決まっておらず、ホテルに泊まっている頃に、レンタカーを借りて近くに路上駐車をしていました。翌朝車のところへ行くと無い。昨晩一杯だった他の車も一台もない。置いた場所が違ったのか?良く見ると道路の反対側に私の車がある?!訳が分からない、私の記憶違いなんだろうか?狐に化かされたような感じ。
これは、路上駐車はイタリアではOKだが、週に一度夜中に清掃車が通ります。いつも同じ場所に止めている人は清掃車が来る日が分かっているので、その日は夜遅く車を移動させます。普通、そこに放置されている車はレッカー車がやってきて、multaとなるのだが、私の場合は場所を移されただけで済んだようだ。理由は分からないが、レンタカーだったからだろうか?!
また、こんなこともあった。夕方レストランで食事をして、路上駐車していた車へ戻ると、駐車違反の切符を警官が書いている。これはいかんと走って、丁度警官が切符をワイパーのしたに挟もうとした時に、さっとその切符を私が取り上げた。これは、私の車でこれから出るところだというような事を言うと、その警察官はただただ、ポカンとしていて、結局はその切符を破いてくれた。挟む前であればセーフというルールでもあったかどうかは、知らないがこれは運がよかった例です。くれぐれも、multaには注意をしましょう。
108.nebbia (ネッビア):“霧で見えない時も時速100㎞で走らないと追突される”
もうひとつは、霧。ロンドンは霧で有名ですが、北部イタリアの霧は、もっと凄いとも言われます。ミラノの空港は冬に霧でよく閉鎖され、そのたびにBelgamo、Genovaなどの空港で降ろされます。この霧がどれくらい凄いかというと、少なくとも東京近辺では予測が出来ないでしょう。ひどいときはせいぜい5~10mしか視界がない。
北イタリアの高速道路で霧が発生したら?通行止め?それは、事故が起こらない限りない。高速で霧が発生しても、車は時速100km以上でぶんぶん走っています。私も最初は驚いて、次第にそれに慣れた1人。それは、前も横も見えないときが一番怖いが、少なくとも前の車のテールランプが見えたら、その後を付いていけば良いということに気付いたから。スピードを落とすと追突されるから。それと走っていて気付くが、イタリアの高速は基本的にまっすぐだから、霧が出ても真っ直ぐ進めばよいという道理。怖いのは、高速を降りるとき。まず、案内板が霧の為に見えないので、予測してスピードを落とさねばならないこと(追突される恐怖)。そして、高速から一般道路に出るときにもし、対向車線を越えなければならないとき。全く見えませんから、「エイヤー」と渡るしかありません。尚、霧が濃いというときは、fittoという形容詞を使います。濃い霧は、nebbia fitta.
109.noleggio (ノレッジョ):“イタリアでは車間距離を空けてはいけない”
レンタルやリースの意味ですが、autonoleggio(レンタカー会社)のように使うことが多い言葉です。レンタカーのことは、macchina da noleggioとか、macchina noleggiataのように言います。「ノレッ」って言っているみたいでしょう。イタリアにも多くレンタカーがありますが、cambioの項で書いているように、ほとんどマニュアルシフトの国ですから、オートマ車を指定するのは大変です。借りる場合はマニュアルの覚悟をしておいた方が良いですね。レンタカー利用者には外国人も多いですから、オートマ車が絶対無いわけではありません。前以て予約すれば、ある可能性はあります。私も何台かオートマ車を指定して借りたことがあります。
それと、高級車(特にドイツ車)を北(ミラノあたり)で借りるときは、ナポリや南方面へ行くというと、貸してくれない可能性があります。もしくは、高い保険代を払わされるかも知れません。勿論盗難保険です。南イタリアを旅行するなら、小さい薄汚れたようなイタリア車がお勧めです。
イタリアの車の運転はどうか、運転が粗いかどうか:欧州では粗い方でしょうね。ドイツやスイスの整然とした運転からイタリアに入ると、当然楽しくなるくらいです。フランスも結構粗い方ですが、フランスの方がルールをまだ守る気がします。
運転がうまいかどうか:これだけ粗く運転しますから、結構うまいと思います。イタリアでの運転のコツのひとつに、「車間距離を空けるな」というのがあります。とにかく空けるとすぐ割り込みされます。そうでなければ、クラクションがうるさいでしょう。
イタリアで覚えた車の乗り方に、速度メーターの使い方があります。速度計が最高180kmの車(小型車、ベンツのディーゼル車など)は、高速道路では180kmでずっと走ります。260kmの車(BMWやSAABなど)は260kmで走ります。ここまでは私が実際に乗った車(私の運転ではない)による経験談。そして300km以上(ポルシェやフェラーリ)は300kmで走ります。速度計が「伊達」ではないということを学びました。しかし、これは古きよき時代の話です。速度制限が以降大分厳しくなったと聞いています。くれぐれもご注意下さい。
尚、家の賃貸は、noleggioではなく、affitto(アッフィット)を使います。
110.raccomandazione (ラッコマンダツィオーネ):“コネ社会の必需品”
推薦、もしくは有力者の後押し(つまりコネ)のこと。イタリアで就職するにはコネが必要だと言われる。また何か重要な事を頼む時には、一体誰を(有力者)を知っているかが鍵になる。振り返って日本はどうだ。たいして変わらない気もするが。
1970年代前半のころ、知り合いが某大手広告会社にどうしても就職したがっていたが、コネがないことであきらめていた。彼がいうには首相の推薦状なんかは最低条件で、そんなのは決め手にならないと言っていた。本当かどうか知らないが、いずれにしろ現在でもコネが日本社会で全く関係ないとは言えないだろう。
だから、イタリアのコネ社会を揶揄などできたものではないが、このraccomandazioneはイタリアでは、病院への入院、銀行との取引、航空会社や劇場などのチケット入手では大変効くようだ。
これも昔の事だが、「中国では金など何の役にも立たない」と、会社の先輩が言っていました。当時の彼の国では、金があっても買うものがないが、権力があれば国の金を思う存分使えると、、、。確かに、権力があれば高級車に乗り、別荘を持ち、いつでも庶民の予約を反故にして飛行機に乗れた。勿論権力とのコネがある人もそうなのだが。どうやら今は金がものを言う世界になったようだ。
さて、raccomandareは、raccomandazioneの動詞だが、この動詞は「推薦する」という意味以外に「~を要請する、願う」という意味がある。したがい、Ti raccomando di non dire nulla.(頼むから何も言うなよ)という使い方がある一方、raccomandarsiと再帰動詞の形で、Mi raccomando!と言えば、(お願いです!)と使える。また、raccomandataは「書留郵便」のことである。