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イタリア語 単語の話(16)

読んで楽しいイタリア語の話
単語で覚えるイタリア語

151.baccalà (バッカラ):“イタリアでは良く食べる魚がこれ”
最後にアクセントがある。これは、干(ひ)だら(干し鱈)のことを言います。これは、venezia語だという説もあるが、イタリア全体でこの言葉を使う。この言葉の語源は分からない。初めてこれを食したのは、イタリアのPiemonte州の山の中だった。何故山の中で鱈が出てくるのか、最初は驚いたが実は、baccalàが意外と頻繁にイタリアで食べられているというのを知ったのは後になってから。名前がユニークなので覚えた。鱈は英語でcodといい、干し鱈は、dried codである。ノルウエイで生産が盛んで、それはバイキング時代から伝えられている伝統的な保存食かと思っていたが、実際には作られ始めたのは500年くらい前からとの説がある。生産国は、ノルウエイ、アイスランド、カナダ、ポルトガルなどである。
イタリア語辞書で「たら」を引くと、merluzzoという名前が出てくる。baccalàはmerluzzoの一種で、merluzzo bianco(白たら)のことを言うとある。サザエさんに出てくるタラちゃんは、こちらの方だろう。確かに、merluzzoという魚もイタリアで食したことはあるが、違いは良く分からない。普通は、baccalàは、「干だら」の意味で使われているようだ。
尚、baccalàには、愚図、愚鈍な人という意味もある。stupidoほど強い意味ではない。あまり良い意味ではないが、なんとなく日本語と似ている単語をここで見つけました。尚、フランスにバカラというクリスタル製品があるが、これはBaccaratと書き地名である。
 
152.cachi (カーキ):“柿は日本から複数で輸入された?”
柿のことである。日本語と同じです。というのもこれは、ポルトガル人が日本から持ち帰って、そのまま呼んでいたものをイタリア語でも採用したから。なお、cachiはイタリア語では複数形であって、単数形はcaco(カーコ)という。
ポルトガル語が日本語になったものに、castella(カスティリア地方から)、confeito(金平糖)などがある(confettoの項)。日本語からイタリア語になったものには、cachiの他にbonzo(坊主=お坊さん)などがある。
さて、もう一度cachiに戻る。この単語は、他にカーキ色の意味がある。英語ではkhakiと書く。カーキ色とは、どんな色の事をいうのでしょう?一般に日本ではいわゆる国防色(軍服の色)を表すとされているが、軍服の色は国や時代ごとに違うので、大分色にも幅があるようだ。カーキ色の定義は、茶色がかった黄色とあり、橙色から緑色に近いもの、黄土色、ベージュ、オリーブ色なども含む。橙色に近い色も含むとなると、もしかして日本語の柿色から来たのではないかという想像も湧くが、これはペルシャ語のkhakから来たもので、意味は「土埃」のことを言うらしい。従い、cachiは「柿」と「カーキ色」の双方の意味を持つが、「カーキ色」は「柿色」ではない。埃はイタリア語ではpolvereであり、polveroneというと「砂塵」の意味になる。中国の黄砂などがpolveroneで、これは黄色っぽくなる。
色が全ての人に同じように見えているのどうかどうして確認するのか解らないが、「茶色」は貴方にとっては何色(どんな色)ですか?「お茶」の色?「お茶」は緑色なのでは?いやそれは緑茶で、紅茶は茶色だと?でも、紅茶は「紅=赤」茶と書きますよね。昔から茶色といったのなら、抹茶の色(=緑)だったのではないかとも勘ぐってしまいます。当然中国では茶色とは言わず、「褐色」と言いますし、イタリア語でもmarrone(栗色)と言いますから、茶の色というのは日本だけのようです。司馬遼太郎氏の本に、日本ではもともと茶は今の茶色で、緑茶はなかったと書いてある。緑茶が出来たのはずっと後で永谷園の創業者が日本で初めて葉っぱの色を緑のまま変えずに、緑茶を発明したとある。そうすると、やはりもともと茶色は、(褐色の)茶の色だったわけです。
英語ではbrownで、これはbear(熊)から来たそうです。熊の色がbrownなのでしょうか。また、茶色の犬を「赤犬」ということから、茶は赤に近い色も指すそうです(日本では)。日本の三毛猫は、白黒茶の3色で、ここにも茶が入っているが、この茶を英語ではオレンジということもある。三毛猫でなくとも明るい茶色のねこをOrange Catと呼ぶ。これは目の感覚が違うのか、色彩表現が豊かなためになす技なのか、私は知らない。
 
153.cioccolata (チョッコラータ):“ココアはチョコレート”
フランスの映画で「ショコラ Chocolat」を覚えておられる方もあるでしょう。これはチョコレートのことだが、それを固めずにとかして飲むとココアになるので、映画の中ではココアの事を指していた。イタリア語でも一般にcioccolataと女性形にすれば、ココアの事も言い、cioccolatoと男性形にすると、これはチョコレートのことになる。cioccolatinoといえば、小さい一口用くらいのチョコレートの事を言う。イタリアのBarでcioccolataを頼むと、液状化したチョコレートが出てくる。実は、このココアと飲み物のチョコレートの違いが良く分からない。日本はココアといえば、○○ホーテンのような、粉末状のものを溶かして飲み、cioccolataほどドロドロにはしないので、どうも別の飲み物だという気がしてしまう。
同じような事がプリンにも言える。イタリアでプリンと言えば、crème caramelle という。これはフランス語なのだが、日本語に訳すとカスタードプリンである。カスタートプリンとプリンの違いがよく解らないが、何れにしろ日本で食べるプリンと同じものとは思えない。
明治維新以来日本には海外のものが色々入ってきたが、本物はなかなか手に入れがたかった。例えば、紅茶でも普通のセイロンティーが紅茶だと思っていたが、1980年頃からだろうか次第に、オレンジペコーやらアールグレイやらが飲めるようになって、紅茶にも色々あるんだなと、感心していたものだ。しかし、その頃イギリスへ行って飲んだアールグレイが、日本で飲むアールグレイとは全く香りも味も異なることに気付いた。今では、普通にこれらのものが日本にも入ってくるが、当時は、恐らく安い部類のお茶を輸入していたのだと考えられる。コーヒーも然り、またワインなども然り。本物を手にするまでは相当な時を要してきたのだと思う。
さて、イタリア語に話を戻すと、同じものを表現するのに、男性形を使ったり女性形を使ったりするものがある。Cioccolato、cioccolataも一つの例であれば、時間を言うときの30分(半)はmezzoでもmezzaでも良い。tavoloはtavolaというときもあるが、基本的にtavolaは食卓である。果物は、mela-melo(りんご)、pera-pero(西洋梨)、castagna-castagno(栗)、arancia-arancio(オレンジ)など、男性形と女性形があるが、女性形はフルーツ、男性形はその木である。fruttaは果物、fruttoは果実である。従い、バナナの木は、banano(バナーノ)という。
 
154.confetto (コンフェット):“お菓子、コンペイトーの原型”
お菓子のこと。特に砂糖菓子のことを言う。つまり、金平糖の原型であろう。金平糖はポルトガル語のconfeito(コンフェイト)から名付けられたものだそうだが、ラテン語同類のイタリア語にもその名の元は見出すことが出来る。お菓子屋さんのことは、confetteriaという。英語でも confection やconfectionaryと言えば、お菓子の事を指す。日本語の食べ物、特に菓子・ケーキ類はポルトガル語から来たものが多い。有名なカステラは、イタリア語ではcastello(お城、但し語尾は-oとなって男性形だが)があてはめられるが、これはスペインのカスティリア地方、またカスティリア地方のお菓子の名前から来たという説が有力だそうだ。
さて、「丸ボーロ(又は丸芳露)というお菓子をご存じだろうか。これは、佐賀県の地方銘菓だが大変伝統のあるポルトガル伝来のお菓子として知られている。このボーロについても、色々説があるようだが、boloというだけでポルトガル語では「ケーキ」の意味だそうなので、それをそのままとったということであまりはずれていないのではないだろうか。京都には「蕎麦ぼうろ」という蕎麦入りの菓子がある。ちなみに、イタリア語でboloの意味を調べると、「口に入れた食べ物の量」という、日本語にはしにくい意味が書いてあるが、実は口の中に入れて咀嚼して飲み込む前の段階の食べ物の塊を言う。何れにしろ、boloというのは、食べ物に関する言葉であることは間違いないようだ。
 
155.focaccia (フォカッチャ):“パンの種類”
ピザでもなく、パンでもなく、ケーキでもないが、地域によってはそのどれかと思われていることもあるようだ。focacciaは、だいぶ古い時代からあるそうだが、最も代表的なのはリグリア(ジェノバ付近)地方のfocacciaだ。Olio di olivaやハーブなどを添えて食べることが多い。最近は日本でも売られているので、名前は浸透してきたようだ。イタリアでパンのようなものを食べる時には、それぞれ呼び名が違うので苦労する。Pane、panino、tramezzino、cornetto、briocheなど。grissiniは、細い乾パンである。panettoneはクリスマス用の大きなケーキ。同じようなものにcolombaがあるが、これは復活祭の時に食べるもの。panzerotto(panzarotto)は、一般にPuglia地方のPizzaのcalzone(Pizzaを折りたたんで、その中に詰め物をいれる)だと言われているが、ミラノのDuomoの裏の有名なpanzerottoはちょっとpizzaとは思えない。元々はPuglia州からやってきた人が開始したもの。売っているお店の名前もpanificioというので、これはパン屋の意味だ。pastaと言えば、パスタ(スパゲッティやマッケローニ)の事かと思うと、これにはケーキの意味もある。従い、pasticceriaというとこれはお菓子屋(ケーキ屋)のこと。しかし、一方、日本にはビスケットとクッキー、そしてサブレなど、形状なのか製法なのか材料なのかで別れているが、イタリアでは全部biscottiと呼ぶ。食べ物は、本来ところ変われば品変わってこそ面白い。どこでも同じものが食べられるのでは旅行の楽しみもなければ、特産品の意味もない。
 
156.gelato (ジェラート):“2種類のジェラートとは”
日本語でも使われるので、説明の必要はないでしょう。gelatoは、gelare(凍らす)の過去分詞形ですから、もともとは単に「凍った」という意味。どうしてアイスクリームのことになったのかは分からない。同じくghiacchareという動詞も「凍らす、氷結させる」という意味があるが、その過去分詞から派生した ghiacciolo(ギアッチョーロ)はアイスキャンデーのことを言う。冷たいものの仲間で、sorbettoはシャーベットのこと、またghiacciataといえば、氷の砕いたものが入っている飲み物を言う。granitaもカキ氷のことを言う時に使われる。
さて、gelatoとは本来アイスクリームとは違うと言われているが、イタリアではgelatoをgelato artigianale とgelato industrialeとに分けている。前者が一般的に言えば、お店で種類を選んでコーンや箱に盛ってくれるもの。後者は紙箱やケースに入ってスーパーやデパートで売られているもの。そしてその違いは、かなり明確です。まず、お店で食べるgelatoは、乳脂肪分が6-10%、箱入りは8-12%となる。空気含有量は前者が最大35%、後者は最低70%と大きく異なる。これは、密度を表わすので、前者はかなり密度が濃いがカロリーは低いということになる。両者の違いは、基本的には生産から消費までの時間であり、前者は速く消費されるのに対し、後者は遠くへ運ばれることもあって、長い保存に適したものとなっている。イタリアのgelatoが何故おいしいか?それは、世界中で唯一、gelato artigianale(ハンドメイド)の販売量がgelato industriale(工場生産)を上回っているという本物志向の国で作られているからでしょう。
 
157.gianchetti (ジャンケッティ):”ミラノだけで通じるジャンケッティ“
biachetti(ビアンケッティ)とも言うらしいが、ミラノではgianchettiである。Liguria料理(ジェノバ近く)だそうだが、これは、「シラス」「シラウオ」または「ジャコ」のことを言う。なんともユーモラスな名前で、忘れられない。このシラスは、特別なネットを使って捕る、そして捕る時期も決められており、比較的価格は高い。茹でで、温かいうちにオリーブオイルとレモンをかけて食べるととてもおいしい(この食べ方はリグリア料理)。捕れるのは、冬だけ。従い、春先に食べるのが良い(この時期でないと食べられない)。まあ、一度聞くと忘れられない言葉のひとつでしょう。何しろ、ジャンケンに似ていますから。辞書を引いてみたが載っていない、イタリア人でもBianchettiと言えば分かるが、gianchettiでは分からないひともいる。でもね、やはりこれはgianchettiでないとね。
 
158.macedonia (マチェドニア)、frutti di bosco (フルッティディボスコ):“本当はデザートがメインのイタリアでの食事”
これらは、イタリアのデザートの定番です。前者は、フルーツポンチと訳される。日本のフルーツポンチのイメージとはちょっと違うかなと思いますが、強いて言えばそういうこと。後者は、「森の木の実」と訳されるが、実質はミックスベリーである。more(ブラックベリー)、lamponi(ラズベリー=きいちご)、miltilli(ブルーベリー)がその主役、gelatoをかけて食べると実においしい。是非トライして見てください。甘いのが駄目な人には無理かも知れませんが。
dessert(デザート、砂漠はdeserto)に関して日本との違いは、まずとても甘いこと、次に量が多いことでしょう。しかし、私が個人的に最も感じるのは、dessertが食事のメインであるということです。気が違ったか、メインはメインだろう、つまりイタリアならsecondo(これがメイン料理のこと)だとおっしゃることでしょう。いや形式的にはそうですが、私は絶対イタリア人の実質的な本当のメインはdessertで、メインでさえもdessertをおいしくする為にあるとしか思えないのです。その理由、たとえprimoやsecondoをパスしても、絶対にdessertはパスしないこと。dessertをパスしたイタリア人を私は見たことがありません。日本の方、特に日本から旅行や出張で来られた方は、dessertをパスする人が多い。それは、量が多いということと、お酒を飲む人は甘いものを食べない習慣からということが多いようですが、イタリア人は酒と甘いものは両方好きです。もうひとつの理由は、dessertを食べるときが一番おいしそうに、至福のときであるかのように楽しく食べるのです。だから、私はイタリアのメインは誰がなんと言ってもdessertだと思っているのです。
 
159.novello (ノヴェッロ): “イタリアのヌーボーはノヴェッロ”
縮小辞として-inoがあるが、-elloも縮小辞にあたる。nove-elloは nuovo(新しい)に縮小辞をつけて、「出来立ての」「生まれたばかりの」という形容詞になる。この縮小辞は他には、albero(木)→alberello(若い木)、vino→vinello(アルコール分の少ないワイン)、poverello(かわいそうな)などにみられる。novelloはフランス語のヌーボーにあたるもので、ワインの新酒としてはボージョレーヌーボーだけが日本で有名だが、イタリアではvino novelloという。秋になると、イタリアでもvino novelloが出回って、レストランでは一杯振舞われたりするが、ヌーボーワインは熟成されていないので、沢山飲むのは体に良くないとのこと。収穫のお祝い事として、グラスに一杯だけ飲むのが良さそうだ。何のお祭りだったか忘れたが、ミラノで12月頃に開催されるお祭りでは、vino novelloがただで振舞われていた。運が良ければ、ただヌーボーに当たるかも知れませんね。
ワインではないが、スピリッツという蒸留酒をイタリアでは良く飲む。代表的なのは、grappaという葡萄酒からのspiritoである。45度以上の強い酒で、食後に一気に飲むのが習慣のようだ。Spirito di patataという言葉もある。意味は、ジャガイモから作った蒸留酒のことだが、別の意味で「つまらない冗談」の事を言う。「親父ギャグ」をイタリア語でなんというかと言えば、この言葉が近いのではないだろうか。ただ、親父の意味はどこにもない。
 
160.ossobuco (オッソブーコ):“穴付き骨”
ossobucoは子牛の骨付き脛肉の煮込みで、ミラノ料理である。ossoは骨、bucoは穴である。ossobucoは穴が開いている骨だと思えば良い。骨髄も食べる。ただ、骨付きなので、意外と食べる量は少ないかも知れない。とてもお腹がすいていていっぱい食べたい人にはお勧めできないかも。逆にいっぱい食べたい人は、fiorentina(フィオレンティーナ)を薦める。これは、勿論フィレンツェ料理で、正確にはBistecca alla fiorentina という。大体一人前1kgが基本だと言われるが、骨付きで1kgなのか、骨なしで1kgなのかは分からない。普通の人がどれくらい食べるのか知らないが、5人くらいで食べに行ってfiorentinaを1kg というと、一般の日本人には丁度良いのだが、まあだいたい、「そんなんじゃ情けないから駄目だ」と、言われる。実際には、一般のレストランで、一人前300~500グラムくらいの量が一般的のようだが、店によっては量を売り物にしているので、1人1kg単位の話になる。一度4人で、追加も入れて3700gほど注文したことがあるが、この時は大食漢が二人ほどいて、この二人で3kg以上平らげた。
有名なローマ料理には、saltimbocca(サルティンボッカ)がある。これは、salto(跳ぶ)+in+bocca(口)で、「口に跳びこんでくるくらい、簡単に出来るもの」という意味らしい。「跳ぶ」という料理で思い出すのが、中国料理の「仏跳壁」。この料理をご存じだろうか。これは、作り方はよく解らないが何日も煮込んだもので、上海に有名な料理店があって食べたことがある。「仏が跳びあがるほどおいしい」という意味だと聞いたが、本当かどうか。さて、saltimboccaのほうだが、ローマだけの料理ではないが、ローマのものが有名である。子牛の肉と生ハム、セージを巻いて、ワイン、小麦粉、バターなどで作る。
さて北から段々降りてきたので、次はナポリになるが、ナポリは料理の名前よりも、spagehtti、pizza、 そしてfrutti di mare(海の幸)料理ならここが一番と言うほど料理全体として奥が深い。ピザの中から一つを上げるとするとpizza Margheritaである。ご存知の、pizzaの定番で、大体一番安い。mozzarella、pomodoro, basilicoをトッピングしているだけだが、pizzaといえば、これが代表格。Margheritaとは、Umberto一世(イタリア王国2代国王)の妃の名前で、このpizzaは彼女に捧げる為に作られたとも言われる。赤(pomodoro)、白(mozzarella)、緑(basilico)がイタリア国旗の色を表わすことから。

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