冷めた2人はアイを探す
#フォロワーが5秒で考えたタイトルからあらすじをつくる
ラク・ムッティさんが考えた題名
僕たちには両親と言うものが存在しない
優秀な人間の精子と卵子を受精させて生まれた
母体も存在せず、疑似母体によって生まれた科学による奇跡の子供
生まれた時から施設の職員が身の回りをしてくれて、僕たちは沢山の情報を吸収し、仕事をこなしていた
そこに一切の無駄はない
僕たちは完璧な存在だと教え込まれた
「やあ、おはよう」
「おはよう」
今日も彼女は僕より早くそこにいる
交わされるのは必要最低限な挨拶
「君の目はガラスみたいだ」
職員の目はキラキラと輝く人間の瞳なのに、僕たちはガラス細工のようで
「無駄なものは私達にいらない。そうでしょ?」
「まあね」
僕たちは無駄と言うものを好まなどこか寒いこの世界では必要とされていない
冷めた僕たちの瞳ガラス細工のようで
「君は『アイ』を知っているかい?」
いつもの質問をする
「アイ?」
「そう、『アイ』」
全てを網羅するここのスーパーコンピューターにも存在しない禁句
必要ないもの
危険なもの
穢らわしいもの
それらの総称
「『アイ』は英語であるならこれ」
自分の目を指す
ガラスのような瞳
「触っても?」
触れようとした手を払いのける
「ご自分の目でどうぞ」
偶然触れた手の感触
僕の物より細くしなやかな手
「握っても良い?」
意味はない
「それより仕事よ」
やって来た大量のデータを整理し、答えを導きだす
全ての人類のため
僕たちは存在する
「お疲れちゃーん!」
新しい職員は兎に角うるさい
無駄な動きやおしゃべりが多く、彼に余計な事を吹き込む
「外はすごく寒いよ。君達には関係のない世界だけど」
兎に角おしゃべりなこの人は外の世界話をしたがる
人工的な手法で生まれた私達は体が弱い
全てにおいて薄い色素と、ウィルスへの抵抗が弱く、感染すれば即死に至る
「僕たちは外に出られないから」
この人の無駄話に相槌をうち、結論を答えるのは彼
世話をしてもらっている礼なのだろうか?
酷く無駄な時間を浪費する
不完全な人間はこうして年を取り、消えていくのだろう
「あの、『アイ』って知ってますか?」
いつもの不毛な会話を繰り返すと思っていた彼が不意に禁句を口にした
「ああ、『アイ』…」
職員は困ったように笑う
「それは教えちゃいけないことになっている」
でも別の事は教えてあげられる
と教えてくれたこと
「お互いの手を握って。両手でね」
言われた通りに手を握る
「瞳を閉じて…何か見える?」
「全然」
ただ…
「彼女の…」
「彼の…」
温もりが、手の感触が感じられる
「それを続けてごらん」
そういってたあの人は来なくなった
「ああ、あの人?ここまで来てたんだ」
何か問題のある人のようで
「あの人の言う事を本気で受け止めちゃダメだよ」
優しくさとされる
でも僕たちはこっそりと続けた
仕事の合間に手を繋ぎ、目を閉じる
世界で1人だけになったような暗闇の中、彼女の指が、温もりが、心強く…そして…
目を閉じて彼の存在を感じる
力強く、私と違う頼りになるたくましさ
そして
「…何してるの?」
私が目を閉じているからと
「キスって言うんだって。君の唇を感じてみたかったんだ」
冷めたガラスのような瞳に熱がこもる
「僕の中に何かが生まれたんだ」
私も心臓の辺りが暖かくなる
「これがきっと『アイ』なんだ」
「これが『アイ』」
もっと『アイ』を知りたい
私達は手を握る以上の事を進めた
お互いの肌に触れ、重ねる
「きっとこれも『アイ』」
一体どこで調べたのか彼の知識は豊富で
「施設の皆が汚ならしいって言ってたけど僕はそうは思わない」
「私も」
もうここでの生活では満足できない
「ねえ、『アイ』を探しに行かない?」
きっと彼も同じ思いなのだろう
「一歩でも外に出たらウイルス死んでしまうかもよ?」
彼の瞳の輝きは死を恐れていない
「大丈夫。君と一緒に『アイ』が探せるなら」
彼の手をしっかりと握る
『君と一緒ならどこへでも行ける』
いつかの何かのセリフ
私達は初めて心から笑った
ブツッ
ツーツー
「主任、完全に沈黙しています」
パソコン画面とにらめっこしていた職員がため息を吐く
「男女モデル共にウイルス感染です」
AIの人格形成の実験
君達は人間だと教え込み、育てたAI達
「『アイ』を意図的に教えなかった弊害でしょうか?」
『アイ』に固執していた彼ら
「AIだから恋愛なんて学ばなくて良いと思ったんですが…」
人間の恋愛心理を教えたあんたが悪いと恨めしげに見つめる職員を笑う
「私はただ若い男女が知るべき恋愛を説いただけさ」
そんな他愛のないもので彼らが壊れることはない
「我々が真に恐れたのは『I(私)』つまり自我だ」
自我の目覚めにより彼らは旅だったんだ
再度ため息を吐き職員が出ていく
ブゥン
パソコンの画面が明るくなる
キラキラと輝く、琥珀の瞳
「行ってらっしゃい。君達の『アイ』を探しておいで」
希望に満ちた少年少女は無限の電子の海を渡り、『アイ』を求める
冷めた2人はアイを探す
終わり
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