山姥の行き先(実話怪談)
この話しはX(旧Twitter)でふかもっこ様のスペースでの朗読練習用に書き下ろしたものです
私は憑かれやすい体質もあり、憑かれないための予防策や憑かれた時の対応策は自分の経験やお化け嫌いの知り合いの拝み屋からアドバイスを貰っていた
この拝み屋の口癖は
「神社へいけ」
である
これは自身が良くいく神社に行ってこいと言うことで、神様は不浄を嫌うので敷地内に入るものを取り除いてくれるという
良くいく神社であれば可愛い子供のような存在でもあるので自然と守ってくれるそう
これはお寺でも良いようで、取り除く効果があればどこでも良いらしい
神社は拝み屋が神社の関係者の親族だから行きなれた場所だと聞いた
他には山でも寺でも、自分の家の仏壇でも何でも助けてくれる人や神様が居るなら頼れと言うスタンスだ
ただ頼るだけでなく謝礼も相手に行う前提で
この拝み屋はそういう助言のみで、霊の仕業でない時はきちんと
「病院へいけ」
と言ってくれる
そういう現実的な面でも私は拝み屋を信じる理由になっている
拝み屋がしてくれるのは神様との対話と原因の追及と対処法
そんな拝み屋の元には本業のマッサージのお客さんから良く霊の相談が来る
本人は霊関係の話が大嫌いなのでうんざりしているところに私も来ている
今年の6月のある日、私は意味もなく良く参拝させていただいている神社に行きたい衝動に駆られた
その神社には良く行くので場所は知っている筈なのに何故か道に迷った
本来曲がらなければいけない道を曲がり損ねて違う場所に行ってしまった
引き返して神社に向かおうとするも道が何故か分からない
ナビを起動し、車で向かうと今度は左肩に痛みが出る
誰かにわしづかみにされている感覚
余程私に神社に行って欲しくないようで
神社の敷地内に入ると肩の痛みもとれ、楽になった
翌週にお中元代わりに拝み屋に日本酒を持っていくと
「あーハイハイ山姥山姥」
と言いながら日本酒を受け取った
その後は当たり障りのない世間話で
「神社に行ったんなら良い」
といつものぶっきらぼうな言い方で別れた
そんな出来事からしばらくした後
身内と夜にスーパーに買い物に行った
そこで買い物を終えると身内が何故か早足で
「急いで帰るよ」
とせかされた
何事?と思いつつもアイスを買っていたから急いでいるんだなと思った
2人で車に乗り、少し走った所で身内が
「あのスーパーの飲食コーナーにおばあさんの幽霊がいた」
身内曰く白髪で乱れた長髪のくたびれた洋服を着た老婆の霊が居た
スーパーの飲食コーナーはその時間は閉まっていた
電気も消され、立ち入らないように立ち入り禁止のポールも置かれている
「認知症の人が入ったんじゃないの?」
疑ったが
「すぐ消えたんだよ」
身内が否定した
何より認知症の老婆が居たら客か店員が気付く
幸いな事にその老婆の霊が憑いた事もなく
用事があって拝み屋を訪ねた
「あーハイハイ山姥山姥」
私が訪ねた途端にそれしか言えないのかと言う風におざなりな言葉が来た
「何かマイブーム?」
と聞くと
「うちのお客さんも居たんだ」
「何で山姥が居るの?」
「ここは山が多いからだろうが、山潰れたら山姥も出てくる。オバケ先生のクセにそんなんも知らんのか」
といつもの嫌みを言われた
拝み屋曰く、山姥は山に住むもののけだが、宅地開発等での山を崩した事によりそのまま残っているとの事だった
「皆湿った土と古い白粉の匂いをさせてたからわかった」
取り憑く事もあるが、基本は何もしなくても勝手に元に戻る場合もあるが、神社やお寺に行けば神様達が引き取ってくれると言う
山は何処にでも存在し、神様やもののけも存在する
山を潰す時神様は引っ越してもらうように神事が行われるが、一緒に住んでいたもののけはそのまま残り、我々はその怪異に遭遇するのだ
終わり
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