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プロへの呪い返し

こちらは12月14日の大分で行われたあめや怪談会で配布された小冊子と同じ内容の物です
個人的な見解だが、拝み屋と霊能者の違いは、神様が見える、もしくは声が聞こえるか否かの違いであると思っている
霊能者は修行を積み、霊を祓う力を手に入れるが、拝み屋は神様から目や耳を借りて神様の指示に従って悩みを解決するための方法を示唆する時には除霊なども行う人もいるが、その方法も指導されるらしい
かと言ってどちらかが優れているわけでけでもなく、どちらかが劣るとかではない
それぞれの得意分野を活かしていると言うことだ
だが、その一線を超えた場合破滅に向かうものも出てくる
平成初期から中期の頃、まだ田舎の方には拝み屋は多かった
ほとんどが高齢者であったため、衰退していくこともやむなしと言った所だった
拝み屋は後継者を見つけるのが困難な職業である
ましてや神様から借りた力なので自分の持つ技術を教えると言うことが難しい
ましてや除霊などの技術も神様から教わって行うか神様にやってもらうと言うスタンスが多いので、拝み屋と霊能者が一緒にすることもあったという
霊能者の方は神様がらみが言葉が通じないため、拝み屋もしくは神主に力を借りると言うこともあった
いわゆる他業種との連携だ
知り合いの拝み屋も除霊関係が苦手であった為、師匠であるご隠居や兄弟子の田口さんに協力をしてもらっていた
しかし、師匠が高齢化のため、除霊に体力を奪われ寝込むこともあったた
田口さんの方は会社員で平日は頼ることも出来ない
なので田口さんの紹介で霊能者に頼ることとした
その霊能者は最初は親切に拝み屋を手伝ってくれた
「この力は他人のために使うものだから」
と報酬ももらわなかった
代わりに拝み屋は食事を奢ったり、本業の按摩のサービスを行ったりした
時には神様関係の厄介な仕事の手伝いもした
しかし、その良好な関係も霊能者が変わったことにより壊れた
突如神様を名乗り出したのだ
神様は自分が神様であるとは絶対に言わない
自分の存在がバレて名指しされるのを極端に嫌うという
自分は神様の使いである
もしくは人間のふりをしたり、獣であると言ったり様々である
拝み屋は勿論、霊能者の間でもそのルールは暗黙の了解のようなものであったがそれをその霊能者は破った
いきなり
「私は神様から自分の名前を名乗れと言われた。私はこれから○○神だ」
と言い始めた
以前はボランティアだった除霊も金品を請求するようになり、トラブルも増えたという
「あの人なーおかしくなったわ」
近づかない方が良いと田口さんから言われた拝み屋は他の霊能者と手を組むようになった
「うちの兄さん(兄弟子)も報酬は取るし、金品を貰うのはまあ本人の好きにさせといたら良い。ぼんさん(坊さん)も神主も金は取るし。でもその分の仕事はせんといかん。こう言う仕事は神様も見とるから」
他の霊能者からも元からの顧客も離れていき、孤立していった霊能者はますますおかしな言動をするようになった
そしてとうとう拝み屋の元にも現れた
「あんたたち、私の客をとっただろう。さては私の神の力に恐れ慄いて客を横取りしたな」
あまりの言いがかりに
「あんたおかしいぞ。頭の病院に行け。先生に見てもらえ」
とストレートに返した
「私はおかしくない。さてはお前神様とか言いながら動物霊に騙されているな。この私が除霊してやろう」
奇声を上げる霊能者からは獣臭がし、拝み屋は貰い物の日本酒を霊能者にかけた
「あんたの方が獣に取り憑かれてるじゃないか。いいから帰れ。そして病院に行け」
動物霊が病院でどうにかなるかは不明だが、拝み屋は霊能者のあまりの変貌ぶりに恐怖を感じたという
お酒をかけられた霊能者は憤慨し、拝み屋につかみかかろうとしたが、ちょうど遊びにきていた近所の人に取り押さえられ、警察に引き取られた
「あいつの家族に事情を話したかったが家族とも縁を切っていたからそのまま注意されて家に戻ったらしい」
お酒をかけた拝み屋もやりすぎだと注意は受けたが、あの霊能者の勢いに
「大変ですね」
と同情されたという
その件はこれで終わりだった
拝み屋としては
だが、ある日の晩、寝ようとした拝み屋は鼻につく異臭に気づいた
呪いの風の匂いに獣の血のような生臭さ
「あの神様とやらと生き霊までセットになってきやがった」
獣の唸り声に合わせ
「死ね!死ね!お前なんか心臓がひっくり返って死ねば良い」
霊能者の怨嗟
「こいつは本気で俺を殺す気か」
拝み屋は返す前に霊能者に語りかけた
「おい、聞こえてるんだろう?お前こんな呪いをかけて自分がどうなるかわかってんのか?わかったなら手を引け。待ってやるから。プロなら呪いの収め方ぐらいわかるだろう?」
なるべく穏便に済ませたかった拝み屋だが
「死ね!死ね!私の方がお前よりも能力は上だ」
相手の耳には何も入らなかった
むしろ自分の方が上だと言う霊能者に
「すまんこいつの後ろの神様(守護霊)おるかおらんかはわからんが返すぞ」
後ろの神様に話しかけ、生き霊、獣、呪い全てを返し、そのまま拝み屋は気絶した
翌朝、拝み屋が起きてこないことを心配した拝み屋の付添人が拝み屋の寝室を見ると泡を吹いた拝み屋を発見したので慌てて救急車を呼んだという
診断結果はてんかん発作のようなものとは言われたが、持病にてんかんはなくストレス性と言われた
「一気にプロに呪い返しをしたから魂が揺れたんじゃないか?」
とは拝み屋の師匠の話
「お前ー、相手よりも上手でよかったな。俺だったら寿命が削られるか、最悪内臓が死んだぞ」
豪快に笑った師匠だが
「あんだけの呪いを返されたからな。人死が出たことは忘れるな」
と説教も食らった
その後くだんの霊能者は自宅で亡くなっているのが発見された
発見したのは田口さん
師匠に言われ家を訪ねたが、応答はなく、
近所の人から異臭がすると言われ、警察を呼んで一緒に入ると霊能者が冷たくなっていた
死後1日が経っていると言うことだったが、その割には腐臭が激しく、警官も兄弟子もその場で吐いたという
死因は心不全(死因不明の総称。もしくは解剖しなかった)
事故事件自殺の疑いはなく
何かしらの疾患によるものだと警官は判断した
「霊能者って言ってたからなんか悪霊に呪われたんでしょうね」
と呑気な警官の答えだった
「人を死に追いやるほどの風(呪い)だから内臓が腐ってもおかしくはない。プロの風は威力が強い分返ってくるのも強い。多分魂もぐちゃぐちゃになっているだろう」
と師匠が話しているとお茶を持ってきた兄弟子が
「酷かったよー顔面がえぐれてた。何も見えない聞こえない状態みたいで自分の死体の周りを這いずってた。後自称神様もぐちゃぐちゃでひんひん鳴いてた」
とわざわざ説明した


人を呪わば穴二つ
自分を過信した霊能者の末路はあまりに酷いものだった


終わり

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