岡山怪談第3部 じゃない方
ある日拝み屋の家に遊びに行った時
拝み屋の近所の人がジャンボたにしの被害について世間話としてしていた
丁度私がきたので
「生き物に詳しい人が来たから相談したら?」
と私に言ってきた
正直ジャンボたにしは卵も乾燥に強いので一々採取して潰すか燃やさないということを説明した
これは誰もが知っていることだとも話
話題は当時はやった騒音問題についてに移った
「今は風鈴の音でも苦情が来るって」
「変な時代だ。じいさん(ご隠居)のいびきの方が酷いのに」
「カエルもよ。近くに田んぼがある家のひとがカエルの声がうるさいから全滅させろって言ったって。今住んでるところは田んぼの近くだけど良い環境音楽でよく眠れる」
などという話をしていたら急に拝み屋がニヤリと笑った
「それ、本当にカエルの声だったな良いな」
そうして語られてたの以下の話だ
ご隠居が生きていた頃、拝み屋は夜に悩まされていたことがあった
一緒に暮らしていたご隠居のいびき
視力はないが聴力が発達しているので、通常の音も大きく感じる
そんな聴力では御隠居の音は側で飛行機並みの爆音だという
表現は大袈裟だが、本人にとっては睡眠不足にも繋がるので、ご隠居とは別の部屋で寝ていた
しかし今度は謎の鳴き声がし始めた
ブモーというテレビで聞いた牛の鼻息のような音
勿論住んでいる家に牛はいない
ましてや近所に牛を飼っている家もない
新たな謎の音でやはり拝み屋は睡眠不足になった
ある日、按摩のお客さんとの会話で、外来種であるウシガエルの存在を知った
「それってこんな鳴き声?」
と拝み屋が真似すると
「そうそう。てかこんなところにも出るんだ」
とお客さんは驚いていた
「じいさんのいびきもいい加減うるさいけど生き物もうるさいんだね」
という話をして笑い合っていたが
「それカエルじゃないぞ」
とご隠居が言い出した
「なんで?ここいらへん牛を飼っている人いないし」
「按摩(ご隠居の方)さんは夜ぐっすり寝てるから気づかなかったんじゃない?」
とも言ってみたが
「あれ、人間だから」
という意外な答えが返ってきた
「人間?それにしては言葉が出てないし」
「言葉が出ないんだよ。だって顔が潰れているんだから」
「顔潰れてたら死んでるやん」
「だから死んだ人間だ。この間風を返した人間が死んだって言っただろ。それが化けて来た」
以前拝み屋がご隠居に押し付けられた呪い返し
相手はプロで、返しの技も知っていたが、それもまた返されて死亡した
しかし、何度も強い呪詛を行っていたため、返しも強く魂も傷がついたという
「顔がぐしゃぐしゃに潰れて口もないから牛みたいな鳴き声を出してたんだろ。お前の事逆恨みしていたからな。ずっと付き纏っていた。俺がいるときは俺が怖くて出られんかったみたいだ」
元柔道選手で体格にも恵まれたご隠居のコワモテはヤクザも逃げるという噂があったそうで、幽霊よけも担っていたそうだ
「恩知らずのコレ(拝み屋の事)が俺のいびきがうるさいとかいうから黙ってた」
ワハハと笑うご隠居は拝み屋の背中を叩き
「こいつは懲りずに風を吹かせている(呪いをかけている)からお前返してやれ。そうしたらもう全部なくなる」
とご隠居に言われて呪いの風を感じた拝み屋は
三度めの呪い返しをその相手にぶつけた
結果は成功したが
「何かこう引きちぎられる音とぶわーっと鼻に沢山の血の匂いがして気持ち悪くなった」
との事
ご隠居に見えた光景は呪いをかけていた霊の体が弾けて辺りに飛び散っていたとのこと
「お前見えなくて良かったな。あんなんみたら焼き鳥の店でお前の好きなつくねとかサガリ(牛肉の横隔膜の近くの肉。福岡の焼鳥店の串の種類にあり)が食えなくなってたな」
そう笑い続けるご隠居に腹が立ったが、ご隠居はしばらく肉が食べられなくなっていたという
「俺は目が見えんがそいうものが見えなくて良かった」
としみじみと語る拝み屋に目が見える私とお客さんはそこの光景を想像し、顔を見合わせて笑った
もしも寝ているとき、同じように何らかの不自然な音がしたときに目を開けるときは十分気をつけて欲しい
終わり