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蠱毒が生まれる原因(実話怪談)

この話は登場する神様の関係で住所も人物も特定出来ないように一切の情報を伏せます

Cさんが以前働いていた職場の話
そこの男女比は男性が多い
Cさんはそこで働いている時に戸棚の隙間から誰かが覗いているのを見つけた
それは怒っているような人間の表情
仕事場なので誰かいるのは当たり前だが、問題はその顔の大きさだった
明らかに人間とは違うサイズの顔
しかも睨み付けている
Cさんは
(幽霊かな?)
と思いながらその場を離れ、仕事に戻った
別の時間帯にそこに行くと顔はなく、それは多分通りすがりの霊であるだろうと思っていた
その後Cさんは友人と会って話をしていたついでにその大きな顔の話をした
「それって人間じゃないの?仕事もしてるんだから不機嫌になるよ」
そう言って友人は笑っていたが、尋常ではない大きさの顔であることを説明すると
友人は軽く目を閉じ
「ああ」
と頷く
Cさんの友人は占い師をしており、霊視もできるそうだ

「その顔は神様だよ。そこに住んでいる土地神様。自分の住処に勝手に建物を作られてたくさんの人間や機械がザワザワ騒がしく動いているからキレてるんだよ」
Cさんは建物を建てる時に地鎮祭をやってないから怒っているとか?
と疑問を口にした
「地鎮祭って言っても一方的なものだからね。その神様は納得してなかったんじゃない?勝手なことばかりしやがって。って言う感じだから。人間にも影響を及ぼしていることがあるんじゃないの?」
そう聞かれてCさんは思い当たることがあったという
Cさんの部署ではトラブルメーカー的な女性が存在する
リーダーをやっているその女性はお局的なポジションで常にイライラしていて同性への当たりが強い
急に機嫌が悪くなり、パワハラも起きているとか
上司などに訴えることもあったが、リーダーは注意を受けてもしばらくすればまた元に戻り、上司的にも面倒ごとに巻き込まれたくないと言ったスタンスだった
それに感化され、周りの人間も性格が変わったように態度が変わったり
時には怪我や病気なども発生するという
「ねえ、蠱毒って知ってる?」
急に友人から聞かれCさんは頷く
「本来は虫とか蛇とかで作るものなんだけど、人間でも一定の場所に集まるとそれができるのよ」
蠱毒というのは呪いの中でも最近はメジャーになっていて
毒虫や蛇などの生き物を複数壺に入れて共食いをさせ、生き残った生き物を使って呪いを行う
呪う相手の家の庭に埋めるのが通常だが、思念でも可能である
例えば江戸時代の大奥や吉原のように大勢の女性を一か所に閉じ込めるだけで怨念が集まり、巨大な蠱毒となる
特に女性は同性間の嫉妬やイビリなどが強い
同じようなことがCさんの職場でも起きているとのこと
「どんなに真面目な人でもその毒気にやられたらおかしくなるね。病気や怪我にもなりやすい」
Cさんは友人に
「神様にお供物とかしたほうが良いの?持っていきづらいけど日本酒とか」
そう聞いてみたが
「神様はそういう問題じゃないんだよ。いくら供物を供えられても、機嫌は治らない」
友人曰く
自分にとって不快な建物が消えて人間がいなくなるまで人間を使った呪詛をやめないという
さらに友人は続けた
「今度から神様らしき姿を見ても無視しなよ。おかしな事が起きてもことも口にしちゃだめ。神様が自分の話をされていると気づいたら怪我程度で済むかわからなくなるから」
Cさんはそれ以降神様の姿を見ることもなく、その職場を退職するまで人間関係以外はおかしなことは起きなかった


以上の件を去年の秋ごろにCさんに聞かされた
その時はちょうど大分怪談会で語る怪談を執筆中で、後回しにしていた
神様系の話は通常の怪談話よりも体力気力を使うもので、ましてや下手な解釈は命にも関わるからだ

そしてこの短い話ではあるがこの話を書く前に、一応拝み屋に話して書いても良いかを相談した
拝み屋は
「良いんじゃね、ただの怪談話だし。ただ出てくる神様にバレないようにしろよ。そういうタイプは人間の噂に自分が出ても怒るから」
と念を押された

地鎮祭は神様のためのものとはよく聞くが、人間の都合で神様の土地をいじってそこに人間が活動する
良いよと気さくに言ってくれる神様もいれば
いいやそれはダメだ
そもそも住もうとしてんじゃねえと怒る神様もいる
こればっかりは神様の気分次第なので我々人間は従うのみである


終わり

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