血筋絶やさん土持氏 その③
玄武城を落とすと、大友軍は三田井に進み、三田井の兵を加えて県へ向かった。
まだ攻め始める前、大友が日向攻めをするという噂が耳に入り、土持には頼りになるのが島津しかおらず、島津に親成の養子である高信は薩摩へ向かい、もしもの時は援軍を出してくれるよう依頼しに行ったのだった。
しかしながら、確約はしてもらえず高信は傷心のまま帰ってきた。
ちょうどその時、大友の使者が松尾城を訪れ、高信が薩摩から帰って来た事がバレてしまった。
大友は府内に来るよう命じたが、慈福寺という禅寺の藤寿という和尚に代わりに行くようお願いした。
この僧は、元土持の家臣の者で力も十分にあった。そして、僧ならば、手にかけられる事もあるまいと思ったのだが、思惑通り行かず、誠意のかけらもなし!と、藤寿は討たれた。
いよいよ大友軍は兵を進めたということである。
親成はなんとしてでも血筋を絶やさぬようにと高信の子、親信を家臣の土持氏山城守に預け、島津の元へ送った。
※ 親信は実は親成の子であるという説もある
土持家家臣、奈津田弾左衛門勢は大友軍に立ち向かい奮闘したが、多勢に無勢、戦死してしまう。
城主親成は自分の死に場所は行縢山であると決め、高信を松尾城に残し、行縢の砦へ向かった。
※ 行縢山
親成は要害に籠もり、防ぎ戦うもわずか50騎あまりではどうしようもなく、弟の金綱、栄綱兄弟は討ち死にし、親成は捕らえられた。
一方、松尾城に残った高信も大軍にどうしようもなく、城より逃れ、鹿狩瀬に出て、祝子川に沿って下るも乗馬した「城影」という馬が倒れ、徒歩で妙という地区まで来るも、「もはやこれまで」と自刃した。
これが高信が腰かけたといわれる岩である。
※ 今そこには高信公を祀る神社があり、その本殿の裏には高信公や土持家臣団と侍女の墓があり、子孫の方々、地元の方々に大切にお守りされている。
親成は豊後へ向かう途中浦辺にて切腹させられたという。
ここに700年にわたる日向の名族、土持家も最期を告げたのであった。
さて、いよいよ大友と島津の一騎打ち。
耳川の合戦で見事に島津が勝利した。
日向国は島津が支配し、親信は県の地へ帰って来たのである。
その後も島津は幾多の勝利を重ね、九州を統一するかに見えた。
大友は豊臣秀吉に直接会いに行き、救いを乞うた。
秀吉はもともと九州も支配しようと考えており、好機となった。
土持氏も島津氏と共に佐土原で奮戦するも、島津は秀吉軍に敗北。
土持氏は薩摩へ逃れた。
※ 系図がいろいろあるらしく、このころの土持氏は久綱とも親信ともあり、同一人物、もしくは別々説もあり、あえて土持氏とした。
その後、この県を任されたのは、後に三田井家を滅亡に追いやった高橋元種が領主となった。
その後の土持氏は島津に仕え、朝鮮国への出陣もし、久綱(親成の養子高信とされる)の子とされる信村は朝鮮国で戦死。
久綱は京都にて病死したという。
親信は、江戸時代には県(安賀多)神社(延岡市古川町)の神職を務め、土持家の血を受け継いだという。
土持神社の説明文を書かれていた土持綱義さんは、76代目の当主で土持神社の宮司であったが、残念ながらお亡くなりになった。
また、親信を連れて薩摩へ行った山城守は島津、大友の戦い、朝日岳城の合戦にて討ち死にしたが、その子嘉右衛門栄久は薩摩へ逃れ「中城」と改め、その子孫は延岡市三須の庄屋を全うし、今のその子孫が残り、山城守の太刀を今でも大切に家宝としているという。
さて、高千穂にいる土持氏は、いったいいつの頃から入ってきたのだろうか!?
永禄年間のこととして、県の土持氏が高千穂の岩戸へ移住したといわれている。
永禄年間は1558年から1570年頃である。
土持秋綱の弟弘綱は分家し、その子越前守左衛門次郎重綱が高千穂へ入り、三田井氏は客分とし岩戸城へ居らせた。
土持重綱は三田井親武に仕え、名を富高主水助昌重と改め、富高将監大夫昌繁ともいった。
これが、高千穂地方における土持氏、富高氏の始まりである。
その後の高千穂での土持氏の話は以前まとめた通り。
『永ノ内は長野内』
https://note.com/kucky918/n/n9a19423276f7
『名家老、藤田左京ここにあり』
その子孫は岩戸村の庄屋も務め、水利開発にも尽力を尽くした。
今ある高千穂の風景を作ったと言っても過言ではない。
今でも、土持、富高、佐藤と、苗字こそ違うが受け継がれており、また高千穂だけでなく、延岡、そして薩摩でも子孫を残し、西郷隆盛と義兄弟の契りを交わすなど、様々な所に、この血筋が続いているのである。
一族の強い絆を感じることのできる氏族、土持であるといえよう。
参考文献
高千穂太平記 西川功著
日向戦国史 土持一族の光芒 荒木栄司著
日向戦国武将物語 土持戦記 佐野量幸著
土持神社大祭記念講話 より
大友興廃記の翻訳と検証 原著杉谷宗重 翻訳秋好政寿
伝承 あまのいわと
かるめご
名利無縁 工藤寛著
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