「私はヨーコ JAL17期生」
香港で買い物すると、安い、早い、を実感する。
英国領であった頃の話だ。
チョンサンと呼ばれるチャイナドレスを2日で仕立て上げてしまう。生地はイタリアやスイス製。値段は仮縫いも含めて5ドル(米ドル)。
午前中に頼むとササっとサイズを測り、午後に仮縫い、そんでもって翌日の午後には出来上がり。
ステイは2日くらいしかなくても間に合う。
仕立てはしっかりしていて10年くらいは毎年夏に着ただろうか。
香港には中国側からの密入国者が後を絶たない。小さな島にぎっしりと詰まって、当然人件費なんてあってないようなものだ。どの職種でも腕のいい職人を安く雇い放題だ。もちろん60年前の話ですよ。
仕立て屋といえば、こんな怪し気な噂が流れていた。
仮縫い室のカーテンはしっかり閉めるな、油断していると拐われて売られる・・・。
嘘みたいな話がまことしやかに語られるのも、猥雑な雰囲気が満ちているからだろう。街全体、隙間なく犯罪の匂いがする。
信じるわけではないが、仮縫いの間は友達に付き添ってもらった。
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