星空を掴む
夜の澄んだ空気を吸い、そして吐く。
街灯に浮かぶ白い吐息は冬の訪れを告げた。
同じような日々の繰り返し。
季節だけが移り変わる。
目に映る景色の色とにおい。
そして高く遠くなる空。
冬の夜空ほど美しい景色を知らない。
まるで散りばめた宝石の砂。
寒空の下、思わず足を止めて仰ぐ。
星座すら薄れるほどの無数の光。
川のようにも見える幾千万。
手を伸ばし、掴む。
何も切り取れなかった掌があった。
何も得られなかった無様があった。
しかしそこには悲しみも無かった。
初めから掴めるはずなど無かったのだから。
ただ掴もうとした行為を愛し、
そこに在る空白を愛おしく思った。