小4の壁…子どもが勉強で躓いたら?【小4の壁③】
小4の勉強の壁:抽象的なことが増えて難しくなる
宮後:それでは前回は小学校4年生の肉体的・精神的成長や交友関係の変化についてお話を伺いましたが、今回は勉強面についてお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
深澤:勉強面では、小学校4年生は質的な違いが出てきます。難しい言葉になりますが、”抽象的なこと”が増えてくるのです。例えば、算数だと”垂直・平行”といった概念的な言葉が増え、小数や分数など具体的に考えるのが難しい表現が増えてきます。社会でも工業地帯、理科では電気などが具体的にイメージしにくいですよね。もちろん国語でも抽象的な語句が多く含まれた文章がでてきます。 多くの子どもが急に学校の授業を難しく感じる時期なのです。
計算方法だけでなく、やり方・考え方が大事
久保田:小学校低学年は、足し算・引き算・掛け算・割り算など、計算の操作のトレーニングがメインですよね。ここまでは操作が単純ですが、小4で習う小数の割り算などは操作が複雑になり、考え方をよく理解しておかなければならないものが増えてくるように思います。
深澤:その通りなんです。これは小4算数でよく詰まる代表例を一つ紹介したいと思います。小数の割り算を筆算で練習するところです。
深澤:手順としては、
①割る数を整数にする分だけ、小数点をずらす
②割り算して、商(答え)の小数点はそのまま
③余りの小数点は元の位置から下ろす
この3手順なんですが、この小数点の位置をよく間違えるんですよね。特に余りの小数点の位置を元の位置からおろしてくるのをよく間違えます。ここで、考え方を理解して間違い直しをするのか、操作の練習だけで復習するのかで、その後の習熟度が大きく変わってきます。考え方を理解した子は同じ間違いを繰り返しませんが、そうでない子は時間が経つとまた同じ間違いをしてしまうのです。
宮後:一旦わかりやすい数字で余りがどのように変化するか考えるのがいいですよね。余りの小数点は元の場所のままになるのが分かりやすい例をあげてみます。
50 ÷ 20 =2 ・・・ 10
5 ÷ 2 =2 ・・・ 1
0.5 ÷ 0.2 =2 ・・・ 0.1
桁数が変わっても、答えの商の部分はどの桁数でも同じだけど、余りは元の数に合わせて桁数が変わっていることがすく分かります。これで小数点の場所の間違いは減りますよね。
深澤:このようにわかりやすい数字で考えてみるとすぐに理屈がわかるんです。その過程を飛ばして勉強してしまう、今回の場合だと操作として
”①桁数ずらす ②商の小数点はそのまま ③余りの小数点はもとの場所から”
と暗記するように覚えてしまうと、考え方が身につかなくなってしまいます。いつまで経っても計算トレーニングの延長としてしか算数を捉えられなくなってしまうのです。
久保田:算数が嫌だ、苦手だと感じている子どもの大半がこういう考え方を理解せずに計算手順の暗記だけで学んでしまっていることに原因があるのではないかと思います。
深澤:これはあくまで一例なのですが、手順だけだでなく”考え方を理解しないと答えに辿り着けない”ということが勉強面での小4の壁の正体ではないかと思います。こういうことは算数だけでなく他の科目でも増えてきます。
苦手意識が膨らみやすい
深澤:前回お話したことにもつながるのですが、この時期に勉強に躓くと子どもの中で苦手意識が膨らみやすくなってしまいます。
宮後:確かに、前回のお話だと、子どもは自分を客観的に見たり、周りをよく見るようになったりするというお話がありました。まわりの子が出来ているのに、自分だけできていないと、他人と比較して”自分は算数が苦手なんだ”と思うようになってしまうかもしれませんね。
深澤:そういう傾向が目立ちだすのがこの時期なんです。この時期は成長に個人差があるので、何でもスムーズにできる子と、そうでない子に分かれるのはどうしてもあるものなんです。そのような子が自信を失わないようにサポートすることはとても大切なことだと思います。
久保田:今お話を伺ったところですと、勉強面の小4の壁は2種類あって、
①内容が抽象的で、やり方だけでなく考え方を学ぶ必要がある
②周りの子と比べて自分が劣っていると感じ苦手意識を持ってしまう
この2点がポイントになっているというお話だと思います。
この2点に注意すると、小4の壁は乗り越えるのも難しくないということですか?
深澤:そうですね。次回は、この2つのポイントに焦点を当てて小4の壁を乗り越えるポイントを説明していきたいと思います。次回もよろしくお願いします。