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小4の壁…勉強面のサポートはどうするのがいいの?【小4の壁④】

※この記事は、深澤英雄先生(神戸市の小・中学校で38年間教壇に立ち、教職大学院の特任教授を4年半務める。現在は和歌山大学教育学部の非常勤講師として学生の指導にあたる。)をお招きして、久保田学園グループ代表久保田勤とグループ講師宮後のお話をベースに記事にしています。
※この記事は前回の続きです。


答えよりも、やり方・考え方

宮後:それでは、勉強面の小4の壁を乗り越える方法についてお話いただきたいと思います。注意するべき点は
 ①内容が抽象的なことがふえている。やり方だけでなく考え方を学ぶ必要がある。
 ②周りの子と比べて自分が劣っていると感じ苦手意識を持ってしまう。

この2点に注意しながらサポートしていくことが大切とのことでした。具体的な方法についてお話を伺いたいと思います。

深澤:算数を例にとりますが、小学校3年生までは計算方法がわかれば答えに辿り着く問題を多くやっています。ですので、子どもの意識は答えを”出すことが大事”と思っているんです。この意識を、答えよりも”考え方・やり方”があっているかの方が大事だと思っ、そのように子どもの意識を変えてもらうことが大事ですね。

宮後:以前お話を伺ったように、”答えの間違い”を悪だと捉えないように接する事が大事だという事でしょうか?

深澤:その通りですね。簡単に言い直せば、答えの部分より答えにたどりつくまでの過程の部分をよく見ることが大事になってきます。小学校4年生だとまだまだ自分で答えを見て、自分の考え方の何が間違っているのかを理解するのは難しいと思います。そういう部分に指導者や保護者のサポートがあると、子どもはスムーズに学べるようになるかもしれません。自分の間違いを肯定的に捉え、過程の部分に注目してもらう方法については、以前お話した記事があるので、ぜひそちらを参考にしてください。

宮後:現在はタブレット教材などでは正解・不正解の確認、進捗のチェックなどをしてくれるものは沢山あるので、周りのサポートとしては、考え方があっているかについてよく確認してあげるのが効果的なんですね。

深澤:ほとんどの問題は同じ考え方でできているので、一問一問全部つきっきりでいる必要はありません。答え合わせをする前などに、考え方を聞いてあげるのが効果的なんです。

他人と比べない


宮後:周りの子と比べて自信を失うことに対してはどのようにすればよいでしょうか?

深澤:まず先ほどのお話に戻るのですが、間違いの結果そのものを悪いと考えないようにする事が大事ですね。悪いことだと思っているから人と比べて劣等感を感じるわけです。人間得意・不得意が誰にでもあるんだから、今できないことを恥ずかしく思う必要はないと励ますのが大事だと思います。

久保田:その上で、前の自分ができなかったことができるようになったら自信を持つように伝えることが大事ですね。小4くらいから、自己肯定感を心の中にもつようになるといわれていますが、このできなかったことができるようになったという自信がなによりの自己肯定感のもとになると思います。まだ小学校4年生なんだから、今の成績の良し悪しで決まることなんてほとんどありませんよね。結果の点数を見て一喜一憂するのではなく、子どもの変化や成長を保護者が認めてあげて、子どもが自信を持つ手助けをすることが大事なんです。

深澤:どうしても学校ではテストがあり、集団の中で勉強する以上、子どもは周囲の目が気になるものです。サポートする大人がその目を気にする必要はないことをきちんと伝え、子どもの変化や成長をしっかり見守ることが大切なんです。

できれば小学校四年生までに 計算と読書

宮後:今までのお話を聞いていて、小4の壁を超えるのに必要なことはある程度分かってきたように思えます。ですが、いくつかは小4年までに準備しておきたいことあるように思います。具体的には計算や抽象的な言葉との向き合い方については躓かないように準備が大切だと思います。

深澤:そうですね。算数の場合小4は考え方・やり方を理解した後に計算が乗っかってきます。掛け算の九九など基礎的な計算ができないといくら考え方を理解しても答えに辿り着きません。小4になって考え方を学びながら計算練習をするとなってしまうと、苦労は二重三重になってしまいます。基礎的な足し算・引き算・掛け算・割り算などの計算は、やはり3年生までに修得しておくことが望ましいでしょう。基礎計算の習得が不十分と分かれば、苦手部分にさかのぼって練習することが大事です。急がば回れです。

久保田:抽象的な言葉とのふれあいについては、やはり読書が大事ですね。読書体験による、言葉のふれあいは抽象的な言葉を理解するには一番効果的だと思います。

宮後:先日、大変読書好きな生徒に会いまして、その人の体験が面白かったんです。小学校4年生まで全然読書なんて好きでもなかったそうなんですが、たまたま本屋に連れて行ってもらったときに、一冊の本が目に入ったそうです。タイトルや筆者を知っていたとかではなく”表紙の絵がとてもきれいだった”という理由でその本を読んだそうです。それ以来たくさんの本を読んで、今では中原中也や太宰治、志賀直哉を読んでいるそうです。もちろん、今では成績がぐんぐん伸びて、学校ではほぼトップの成績だそうです。

深澤:何がきっかけになるかなんてわかりませんよね。うちの子どもは本なんて読まないから…と保護者が思い込んでしまうのは損だと思います。図書館や本屋さんにいって自由に本に触れてもらうことはとても大切だと思います。また、本の種類にこだわる必要はありません。絵本だって漫画だって図鑑だって、言葉を知るには効果的だと思います。料理に興味がある子なら料理のレシピ本でもいいわけです。最近の本はイラストも多くてとっつきやすくイメージがわきやすいものが多く、子どもにも案外読みやすいものが多いですね。

久保田:小学校4年生では、それまでの好みなども変わってしまいますので、”子どもの興味に蓋をしない”のが大事ですね。子どもが何かやってみたいと言い出した時に”どうせ長続きしないでしょ!”と保護者は思ってしまうんです。これは私自信も我が子に言ってしまったことがありますね。急に”この子、今までにないことを言い出した”と思うとは思いますが、親としても「長続きしないで元々だ」と大きく構えて、一旦やらせてあげる事が大事ですね。何かにつながるかもしれませんし、すぐに飽きてしまったとしてもそのわずかな経験が何かの役に立つこともあるのです。

深澤:この本好きになった生徒の例だと、”イラストが好きなだけで本を読むなんて、どうせすぐ飽きるに違いない”と、思わずに本を与えたからこそ後に読書好きになったわけですよね。きっかけはそういうものだと思います。買い与えるのもよいですし、お小遣いの範囲で子どもに決めさせてみるというのも良いのではないかと思います。

宮後:深澤先生、久保田代表ありがとうございました。これまで4回にわたって、小学校4年の保護者の方に向けて、小4の壁についてお話をnoteにしました。このnoteを読んで質問などありましたら是非お答えしますので、どんどんご質問ください。次回は5年生のお話を伺いたいと思います。

まとめ

・子どもは、答えを求める事に意識が向きがち。答えよりも考え方を理解しているかを、よく見てあげることが大切
・子どもの結果よりも、成長・変化に目を向け、認めよう。この時期は発達段階に個人差がでるので、結果に目を向けすぎると他人と比べて自信を失ってしまうこともある
・計算の基礎などで躓いている場合は、前の学年に戻って練習しよう。急がば回れ
・いろいろな事に興味を持ち始めるので、”本当にやるの?”と思いがち。まずは軽く始めてみるくらいのつもりで。長続きしないで元々だという気持ちが大事