好きと気づいたその日から6
ピロン
「和です。よろしくね」
『○○です。よろしくお願いします。』
オウム返しのように返事をするとすぐに既読がついて返事が返ってきた。
和:今何してた?
〇:部屋の片づけです。
引っ越しの荷物が全然片付かなくて。
和:そっか、引っ越してきたばっかりだもんね
〇:そうですね
でも、あと一箱なので多分すぐに終わると思います
和:じゃあさ、ちょっとだけ時間を貰ってもいいかな?
○:時間をもらうって?
和:息抜きにお話ししたいなって
〇:いいですよ。
和:とは言ったけど、何話せばいいかわかんないや。
○:それじゃあ、井上さんは今何してたんですか?
和:私は絵を書いてたよ
〇:絵描くんですね。
意外です。
そう返信してしばらくすると驚くほど上手な彫刻のデッサン画が送られてきた。
○:上手すぎて驚きました
本当に書いたんですか?
和:大げさだよ
でも嬉しい
うん、前に書いたやつなんだけどね
〇:すごいですね
和:今は別の絵を描いてるんだけど、完成したら○○君に送っていい?
〇:ぜひ
井上さんの絵もっと見てみたいです
和:ありがと
頑張って描くね
〇:はい、楽しみにしてます。
和:それじゃ、話に付き合ってくれてありがとう‼︎
おやすみなさい
―
「転校生くん」
〇:ん?
?:おはよう
〇:あ、昨日の
?:ふふっ、モンブランどうだった?
〇:喜んでもらえました。
選んでくださり、ありがとうございました。
?:いえいえ。
〇:そういえば同じ高校でしたっけ?
?:そうだよ。
転校初日は忙しそうだったね。
〇:まぁ...。
桜:そうだ、名前言ってなかったよね?
私は桜。
〇:苗字は?
桜:秘密。
〇:秘密?
桜:だって、苗字教えちゃったら絶対苗字で呼ぶでしょう?
〇:それは...
桜:ふふっ、だから名前だけしか教えません。
不思議な人だ。
桜さんと話しているといつの間にか彼女のペースに引き込まれてしまう。
まだ二回しか話したことはないけれど。
〇:あ、そうだ。
僕は...
桜:知ってるよ。
小川○○君だよね。
〇:知ってたんですか。
桜:もちろん、有名人だもん。
〇:有名人?
桜:ほら、今話題の転校生でしょ?
〇:話題って大げさですよ。
桜:そんなことないよ?
ほら、今だってみーんな○○君のこと見てる。
〇:えっ?
桜:嘘だよ。
でも、それくらい○○君はみんなから注目されてるよ。
〇:そうなんですか...。
桜:うん。
あ、それより聞きたいことがあるんだけど...
〇:何ですか?
「○○君と和ちゃんってどういう関係なの?」
〇:どういう関係って...まだ知り合ったばかりですし、部活が一緒なだけです。
それ以上でもそれ以下でもありません。
桜:ほんとにそれだけ?
〇:何が言いたいんですか?
桜:ふふっ、なんでも。
〇:...?
桜:それより、学校遅れちゃうよ?
〇:え?
桜:ほら、走れ~!
〇:あ、ちょ...!!
突然桜さんに手を引かれて僕たちは走り出した―