君と出会ってⅤ
ピピッ
井:今日はありがとうございました!
長居しちゃってすみません
○:大丈夫
僕も井上さんとたくさん話せてよかったよ
井:私もです!
○:じゃおやすみ
井:はい!今度お洋服洗ってお返ししますね!
おやすみなさい!
結局、また夕飯を食べるまで一緒にいた。
案外時間というものは過ぎるのが早いらしい。
井上さんは僕の貸した白いシャツと黒いパンツを履きこなして僕とファミレスに行った。
井:美味しいです
○:だね
井:なんだかんだファミレスっていいですよね
○:うん
井:ファミレス巡りしようかな〜
○:はははっ、なにそれ
井:冗談ですよ!
○:井上さんは冗談が下手だね
井:あー!バカにしてるでしょ!
○:してないしてない
けど、面白くって
井:そういうのを馬鹿にしてるって言うんですよ!
○:ごめんって!
ほら、ハンバーグちょっとあげるから
井:え⁉︎いいんですか⁉︎
○:どうぞ
井:やった〜!
なんか後輩というより歳の近い妹の面倒を見ている気分になってきた。
なんとなくそう思わせるのは井上さんのフランクさと表情の豊かさのおかげかな。
僕に妹はいないけれど、こんな妹がいたらちょっとだけ毎日が楽しくなるような気がした―
家に帰った後、さくさんへの返信のことを思い出した。
どんな本が好きか
正直本はあまり読まないタイプで特に社会人になってから呼んだ記憶があまりない。
だから、正直に読まないことを伝えて、オススメを教えて欲しいと話を繋げることにした。
『実はあまり本読まないので
おすすめあったら知りたいです。』
ピロンッ
○:え?はやい
「これ、今ちょうど読み終わったんですけど、おすすめです」
あまりの返信の速さに驚いた。
たまたまタイミングが良かったのかもしれない。
○:ありがとうございます。
明日本屋に行く予定があるので探してみますね!
さ:もし、よかったらなんですけど貸しましょうか?
○:いいんですか?
さ:はい、会う理由にもなりますし。
○:それもそうですね。
じゃあ、お言葉に甘えて。
さ:今夜空いてますか?
今夜⁉︎
今夜いきなり会うのか⁉︎
なんの準備もしてないし、声すら聞いたことない相手といきなり会うのか⁉︎
あまりにも急展開すぎて急に落ち着かなくなった。
○:今から会うんですか?
さ:電話しようかなって
○:電話?
さ:使ったことないんですけど、アプリに通話機能がついてるみたいで。
それで。
○:あぁ、そうなんですね
さ:いいですか?
○:大丈夫です
何時からにしますか?
プルルルルッ
今⁉︎
今かけてくるのか⁉︎またしても不意打ちにあたふたしてしまう。
とりあえずかかってきてしまったものは出るしかない。
○:も、もしもし…
さ:あ…えっと…きゅ…急にかけて…その…ごめんなさい…
電話口から少し低めな声が控えめに聞こえた。
○:いえ…
さ:さっき、何時からにしますかって返信が来たの確認して…その…い、今で大丈夫でしたか…?
○:大丈夫です
さ:よ、よかったです…
○:はい…
さ:あの…
○:はい?
さ:その…○○さんって…よくシライシって洋食屋さんにいらしてますか…?
○:え?あ、はい
さ:で、ですよね…
○:え?もしかして?
さ:私もよくお昼に行ってて…
○○さんのこと見たことあるなって…
○:あ、あぁ…なるほど…
さ:その…すみません…
○:え?
さ:ず…ずっと気になってて…その…
○○さん、優しそうな人だなぁーって…
○:え?あっ…ありがとうございます…
さ:い、いえ…
○:…。
さ:その…どうしてアプリ始めたんですか…?
○:あ、えーっと…同期に初めてみろって勧められて
さ:そ、そうなんですね…
○:はい
さくさんは?
さ:わ、私は…そろそろ結婚考えたらって両親に言われて…
その…いい人いないかなぁ…って…
○:あー、言われますよね
さ:い、言われるんですか…⁉︎
○:言われます
「○○!彼女はできたか⁉︎」とか「そろそろ結婚相手はいないの?」とか
さ:お、同じだ…
○:だから、ちょっと居心地悪いんですよね
実家に帰ると
さ:わ、わかります…!
わ、私も毎回黙ることしかできなくて…
○:はははっ…似た者同士ですね
さ:は、はいっ…
○:それで、会う約束するんですよね?
さ:あ、はいっ…えーっと…
い、いつがいいかなぁ…えっと…
○:明日はどうですか?
さ:あ、明日…⁉︎
え、えっと…
さっきまでとんとん拍子でなんでも進んでいたから早い方がいいのかと思って思い切って明日を提案したけれど、どうやら僕はミスしたらしい。
○:あ、じゃあさくさんが決めてください
借りるのは僕なので
さ:わ、私が…⁉︎
えーっと…
○:…。
さ:あ、あし…た…で…
○:いいんですか?
さ:は、はひぃ…
○:ふふっ
さ:え…?
○:あ、いや、はひって
噛んでて面白いなって
さ:は、恥ずかしいです…。
○:ごめんなさい
さ:い、いえ…
○:えっと…それじゃあ、明日で
さ:は、はい…
○:場所はシライシで12時でいいですか?
さ:は、はい…
○:では、明日の12時シライシに…
さ:あ、あの…
○:ん?
さ:わ、私多分話しかけられないので…その…
明日、○○さんから話しかけてもらってもいいですか…?
○:いいですけど…
さ:あ、ありがとうございます…
○:いえ。
さ:じゃ、じゃあ…
○:あ、待って!
さ:えっ…?
○:写真、見せてもらっていいですか?
さ:写真…?
○:顔写真。
申し訳ないんですけど、顔がわからないと話しかけるの難しいかなって…
さ:あ、あぁ…そうですよね…
すみません…
○:いえ…ごめんなさい
失礼なこと言って。
さ:い、いえ…
じゃ、じゃあ…電話切ったら送りますね…
○:はい、よろしくお願いします。
さ:じゃ、じゃあ…しつれいします…
ガチャッピーピー
――
電話が終わってから大体3時間くらいが経った。
もう日付が変わろうとしている。
もしかしたら忘れられたのか。
そんな疑念が脳裏をよぎったとき
ピロンッ
「明日はよろしくお願いします。」
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