汚れ犬セミキチ(新作2本!)
今年の1月から4月までの期間、note記事として連載でお届けした4コママンガ『汚れ犬セミキチ』ですが、新たに新作2本を加えたいと思います。これまでのセミキチのマンガは全て雑誌で発表した作品でしたが、今回はnote記事用に描き下ろしたオリジナル作品になります。それも19年振りの新作です!その間、ボクも色々な人生経験をして人間的に成長しました。そんな作者が描く『NEW 汚れ犬セミキチ』とは、いったい…
*
*
ごめんなさい!
作者の成長とか、さんざん煽っといて、何の変わり映えもしない「昔と同じセミキチの日常」でした(笑)
今回の作品をUPするにあたり、併せて『汚れ犬セミキチ』という作品についての解説みたいなものを少し語ってみようと思います。というのも、実はnoteにオリジナルの最終回をUPした直後に「あとがき」みたいなものを記事にしようと思って途中まで書きかけてたんだけど、何だかんだと日常に追われ下書きに放置。タイミングを逃しちゃって…もういいやって(笑)それを今回、仕上げたので「新作」に合わせて載せます。(連載当初の担当さんとのエピソード等、以前に紹介した内容も含まれますが、今回は、より詳しく具体的に語ってみようと思います)
『汚れ犬セミキチ』という作品
『汚れ犬セミキチ』はボクが当時、住んでた都内のマンションの近くで飼われていた【汚れた犬】をモデルに(正確には発想のヒントにして)描いたフィクション作品です。が、モデルの『セミキチ』は実在した犬でした。マンガ同様に本当に線路沿いの家で飼われていて、しかも非常に汚れてて臭かった(笑)
その犬はボクが通りかかると首輪をぴんと張って思いっきり寄ってきた。
その犬は見るからに薄汚れているんだけど、痩せてるわけではなくて人懐っこくて元気。寄ってくるから、つい、撫でたり触ったりするんだけど、その後、手が臭くなってしまう(笑)だけど可愛くて、また触ってしまう。
その犬は目の前を電車が通ると、よく吠えてもいた。
ボクはその犬に勝手に「セミキチ」という名前をつけていた。
そんなとき、雑誌(学研「5年の学習」)で4コマ漫画連載の依頼があり、ボクはいつも気になってたセミキチをモデルにマンガを描こうと決めた。それが『汚れ犬セミキチ』(連載当時のタイトルは『よごれ犬セミ吉』)だった。
担当さん、不安になる
上のような簡単な企画書だったが、企画はすんなり通り連載は始まった。ところが連載一回めの原稿を渡した後、担当編集者のY氏から連絡があり、至急、直接会って話がしたいという。会いに来た担当Y氏が開口一番、くちにしたのは…
「汚れてる犬を主人公にマンガを描いている意図って何ですか?」「テーマは何ですか?」ということだった。
担当Y氏は、すんなり企画を通してみたものの、実際の連載1回目の原稿の【ただ汚い犬が出てくるだけのマンガ】を見て不安になり、ボクの真意を聞こうと会いに来たのだった。
ボクは、そのまんまを伝えた。「セミキチって近所に本当にいるんですよね。マンガのように汚くて、触ると臭いんだけど可愛くて撫でたくなっちゃう(笑)で、その犬をモデルに描いたんですよ」
「そうなんですか、モデルがいるんですか」と担当Y氏。
ボクは続けた。「汚いけど可愛いとか、臭くなるのに、つい撫でくなるって何だろう?何で汚れてる犬に惹かれるんだろう?って。そんなことを考えてたら『汚れてるって悪いことじゃないんじゃないか?』って思えてきて… 。つまり、それがテーマなのかもしれないです」
みたいなことを言ったと思う。ボクの話を神妙に聞いていた担当Y氏は「なるほど」と納得して…、いや本当に納得したのかは分からないけど、ボクが一応、真面目に考えてるということが分かってチョットだけ安心したんだと思う。そして担当Y氏は帰っていった。(しかし考えてみると、これが今の…マスク、消毒、手洗いは当たり前の今の時代だったら、まず汚れてる犬を肯定する?かのようなマンガの企画は通らなかったような気もする)
ともかく『汚いって悪いことじゃないんじゃないか?』という大層な?テーマを宣言して連載が始まった『汚れ犬セミキチ』だけど、実際どんなマンガになるのか?ボク自身もわかってなかった。
ボクはとりあえずセミキチの可愛さ、そしてセミキチに関わる子供たちを描いていった。なぜ子供たちだったかと言えば、連載していた雑誌が小学生対象だったという単純な理由。しかし結果的にセミキチと子供たちは相性が良かったようだ。大人や中、高校生が中心に登場していたら、今のセミキチとは世界観がずいぶん違ったマンガになったかもしれない。どこかまだ純粋な子供との話だったから変に話が理屈っぽくなったり重くなることもなく、それでいてちょっと何かがひっかかるような、そんな『良い加減』な作品になった。
それでもネタを作っていると図らずもテーマ性が強く出てしまった(というかテーマがあるかのように見える)回もある。例えば… ↓
例えば11話の『セミオ』は汚れてボロい服を着てる男の子の話で『子供の貧困』だったり『ネグレクト』といった今風なテーマにも繋がるような設定だ。しかし、作品内で具体的に男の子の事情や家庭環境を掘り下げることはない。(簡単に扱っていいようなテーマではないしセミキチで描くことではないと思うので)
ただ、こんな際どい設定なのに「セミキチ」という作品を通したら、普通にイイ話になったなあ〜って自分でも気に入ってる作品。
それから18話の『ピカピカ犬』では、大切にしてるペットに豪華でカワイイ服を着せて可愛がるオバちゃま飼い主が登場。ボク自身はそれもペットと飼い主の関係のひとつの在り方だと思うし、それが正しいのか正しくないのかはボクにもわからない。もちろん作品を読んで何らかのメッセージ性を感じた人もいたと思うし、それはそれで正しい作品の読み方だとも思っている。
ただ、ボクが描きたかったのは、そんな飼い主がセミキチと出会ったら、どんな反応をするのか?だったと思う。
そうなんです。ボクは『汚れてるセミキチという犬の魅力をが描きたかった』というのが当然一番なんだけど、セミキチと出会う人たちが、どう反応するのか?も描こうとしていたんだと思う。『セミキチ』を描き始めて少ししてから感じてたんだけど『セミキチ』は人を映す鏡なんだなって。
それから喧嘩ばかりしているセミキチの飼い主カップルのエピソード。犬が汚れてるのは飼い主がダメダメに違いないと思うのは普通の連想。だから、こんな飼い主を考えたのかもしれない。だけどそんな飼い主だって全てがダメダメってことはない。ダメダメなりにも何かあるだろうな…って(笑)汚くても可愛くて魅力があるセミキチのように。そんなことを考えながらボクはセミキチを描いていた。
ボクにとって作品を描くということは
何かについて考えるということだったりもするのだ。
そして最終回
そうこうしている内に連載の最終回が近づいてきて、ボクが考えていたのは連載が始まったときに担当Y氏に言ったテーマのこと【汚れてるって悪いことじゃないんじゃないか?】ボクが1年間セミキチを描いて感じた『セミキチが汚れてるってどういうことなのか?』ということをマンガの中で云わなきゃなと思っていた。
そして、それをちゃんと最終回に描いた。
*
*
*
以上。簡単にセミキチという作品について書いてみたんだけど、マンガ未読の人にはよく分からなくて(note公開当時は無料だったけど現在は有料になってて部分的にしかマンガが見られないので)ストレスになったかも。ゴメンなさい。
ご興味がありましたら是非、有料マガジン(100円ポッキリ読み放題)をご購入ください。尚、この後、有料マガジンご購入者様だけが読める特典のオマケも付きます。(この記事も、ほぼ無料で読めますが有料マガジン用に作成しています)
これからのセミキチ
ところでトータルで過去作品を通して読んで感じたのはセミキチが主人公なのにセミキチ主観で描かれたネタがほとんど無いってこと(笑)
それはあくまでもボクのマンガのスタイルということなんだけど(基本、ボクは笑えて楽しい4コマで描いてるので)きっと違う描き方、セミキチの気持ちを出すような描き方もあったんだろうと思う。
じつは、そんなセミキチの物語を
セミキチ大好きな相方
(久保マシン(C)くぼちー)が
考えてるようです。現在、制作中。
それはボクの描いたセミキチとは「同じようで全く違うもの」かもしれない。でも違うようでいて、どこか同じ。いうなれば『セミキチのリブート作品』と言っていいのかも。その『もうひとつのセミキチの物語』をnote記事でお披露目します(近日公開予定)お楽しみに。
そして最後に今回の新作2本目です
1本目が昔と変わらない日常のエピソードだったので2本目は作者(ボク)が19年振りに描いたセミキチということで、同じくらいの時が流れたセミキチの世界です。登場していた小学生の男の子もオジサンになってます(笑)
*
*
サポート&オススメいただけましたら、めちゃくちゃ創作の励みになります。いただいたサポートは今後の漫画制作や活動費用に充てたいと思います。応援どうぞ宜しくお願い致します(ぺこり)