BLACKシリーズ開発ストーリー
畳を後世に残す。
それは伝統を受け継ぎつつも現代に合わせてカタチを変えていくこと。
今回は今年3月に発表し好評をいただいている「BLACKシリーズ」の開発ストーリーについて紹介していきたいと思います。
テーマは「畳と鉄」
なぜ畳と鉄の融合を目指したのか、
そこに込められたメッセージとは
1.フレンチからの依頼
「うちに合う畳コースターを作ってもらえませんか」
そんな依頼があったのは今年の1月。
ニューヨークから帰って間もないころでした。
訪問したことがないお店だったので、
営業前の時間帯にお話しを伺いに行くことに。
引用:公式facebook(写真クリックでリンク)
福島県郡山市の紹介制フレンチで県内外から多くのお客さんが集まるお店。
しかしながら、フレンチ。
今までは和食店が中心だったため、
「フレンチに合う畳とは?」と頭を悩ませました。
話を持ち帰って検討の上提案させていただくことに。
2.西洋文化と畳の融合とは?
和食ではなくフレンチに合う畳、
言い換えれば西洋文化と畳の融合。
これはまさしく私たちが掲げる「畳を世界へ!」
の課題でもあります。
畳を西洋文化に迎合させるためには
このテーマを追求したものづくりが始まりました。
3.畳と鉄の融合へのチャレンジ
思考としてまず、「西洋文化に迎合させる」ためにフレンチのテーブルウェアで何が使われているか、素材(マテリアル)を洗い出しました。
■素材(マテリアル)
・食器:土、石
・グラス:硝子
・カトラリー:鉄
・テーブルクロス:布
ここで私たちが目を付けたのが「鉄」です。
引用:freedesign.jp
このカトラリーも「木」と「鉄」を掛け合わせることで、和の質感を残しながらも西洋空間に溶け込んでいます。
畳もステンレスやアルミを取り入れればうまくいくのではないか。
そう考えた私たちは福島県内でも特に技術が高いと言われる鉄の精密機械加工工場を訪ねました。
車で約2時間の道のり。
まずは工場内を見学させてもらうことに。
実はこれ鉄をつなぎ合わせることなく、この鉄の塊を削って一本で作ったグラスです。
技術力に驚きながら、今回の相談をしてみました。
「畳のヘリを鉄製にしてみたいのですが可能でしょうか。」
「うちの技術的に鉄を加工することは可能です。」
「ステンレスは錆びにくく、アルミは色を出しやすいです」
うまくいけるかも! 一歩前進できました。
詳細の寸法をミリ単位で打ち合わせをして見積もりを待つことに。
後日、見積もりをいただいて確認。
想定はしていたもののコースター1枚が7,000円以上になってしまいます。
これではとても市場には出せない。
「畳と鉄」の融合は失敗に終わったかと思われました。
4.鉄の色とは
素材で攻めることがうまくいかなかった私たちは、色の視点で検討しました。
約200種類のヘリの中から鉄の雰囲気を持つものを選び出してゴザとの相性を比較検討しました。
そこで意外なことに目についたのがヘリではなく手前の「鉄瓶」
これまで頭の中にあったのはナイフやフォークの「銀色」の印象でしたが、
この鉄瓶の色に日本的な伝統の重みを感じました。
そしてこの「鉄瓶色」をヘリに表現しようと考えました。
それに合わせるゴザは黒を選定。
従来の緑や白のゴザではなく新しい価値観である黒い畳です。
この黒はシェフのコックコートからも連想を得ています。
西洋のテーブルウェアから連想して挑戦した畳と鉄の融合
素材の融合がうまくいかず鉄の色を用いることに。
そこで偶然目に入った鉄瓶が放つ色に日本的な伝統の重みを感じ
それを畳に表現しました。
ここに至るまで2か月かかりました。
5.新しいデザインを生み出すということ
今回のものづくりを通して新しいデザインを生み出すということについて経験を振り返ってみます。
決して立派な話をするわけではなく、あくまでも今回の振り返りです。
①利用シーンを想定してそこから連想されるものを追求すること
②現場に足を運び新しい素材や価値観に触れること
③コストと照らし合わせ市場価値を検討すること
④ふとした出会いを得るためには普段から悩み続けること
依頼を受けてから2か月後、遅くなって申し訳ありませんとサンプルをもってお店に伺いました。
オーナーシェフは一言
「はい、これでお願いします!」
「職人さんが考えて作ってくれたものに口出ししたくないんですよ!」
その日からお店でご利用いただいております。
悩みに悩み「畳と鉄」の融合を目指した新しい畳コースターの完成です。
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■掲載のお店
・レストラン名:なか田
・所在地:福島県郡山市清水台1-6-23
・営業時間:ディナー: 17:30~
・席数:12席
・ご予約:紹介制
(2020年4月11日現在)
<追記>
4/11現在、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてお店は臨時休業中。
一刻も早く再開されることを心から願っております。