畳ビレッジプロジェクト(記事)

「奈良時代から続く伝統を後世に」。

須賀川市の久保木畳店は、畳文化を国内外に伝える拠点を整備するプロジェクトに乗り出した。市内仲の町の製造工場を改装し、2022年10月に畳の体験型複合施設「仮称・畳ビレッジ」をオープンさせる。専務の久保木史朗さんは「畳の可能性を探り、生活様式の変化や新型コロナウイルスで加速する『畳離れ』を食い止めたい」と力を込める。


畳ビレッジでは、国内外からの工場見学を受け入れる。訪れた人に製造室内の見学やミニ畳作りを通して畳文化に興味を深めてもらう。作業風景を撮影しており、オンラインで海外からの見学に対応できる。材料を事前に送り、画面を通して畳を作る体験をしてもらう計画。和室のコワーキングスペースや自宅に和室を持っていない人向けのレンタルスペースを貸し出す。来年5月に着工する。


農林水産省のデータによると、1996(平成8)年に約2600万枚だった畳の生産量は2020(令和2)年には、250万枚に落ち込んだ。さらに、新型コロナウイルスの影響で自宅を訪れなければならない施工を避ける傾向があるという。県畳工業組合によると、会員は2021年9月現在で85人。10年前から半減しているという。


久保木さんは畳文化が減衰する現状に危機感を持ち、畳の可能性を探ろうと、畳を利用したコースターや天面に畳を使ったアウトドア用テーブルなど商品開発に取り組んでいる。世界に販路を見いだし、畳コースターや畳のスマホ置きについて会員制交流サイト(SNS)で発信したところ問い合わせが相次いだ。現在は、市内を飛び出し東京やニューヨークを始め、国内外の200を超える飲食店で使われている。


畳ビレッジでは、置き畳のショールームや畳を使った小物などを売り出す販売ブースを設け、畳のさまざまな用途を周知する。「畳を世界へ広める夢を叶え、畳文化を後世に残す使命を果たしたい」。

久保木畳店の挑戦が伝統を守る。

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