ユークリッド空間から位相空間への写像
拝啓 奥さんへ
本日は、人工知能の本質に近い部分のお話です。
まず、ユークリッド空間ですが、ここでは「数値で表せる空間」と考えてください。センサーが集める情報や人間の視野に入る情報は「数値」を含んでいます。数値は「高い」「低い」の集合です。カメラで写した画像や動画のデータもそれぞれ画素があり、RGBの値がどれだけか、このデータが画素の数だけあるわけです。
私たちは、数値をもった世界、「ユークリッド空間」の中で生きていますが、脳は空間に含まれる数値はほとんど意識しません。絶対的な距離などは気にならず、空間の中にある「同一性」や「類似性」に着目します。例えば、空間で認識できた2つの人物像は同じ人か?こうした問いに対して、絶対的な数値より、同一性や類似性から判断します。
次に、「位相空間」ですが、この場合の位相とはつながり=ネットワークだと考えてください。人のつながりでいえば、自分と直接つながっている人のネットワーク、もしくはその人とつながっている人までのネットワークです。そこから先は普段はまったく意識しません。
例えば、「犬」という概念があったとき、それが猫に近いか、狼と同類か程度は意識しますが、犬がテーブルに近いか、コーヒーカップと同類かどうかは気にしません。犬の周辺だけを意識してマッピングし、ネットワークに直しています。
このネットワークに直すという行為こそが、脳の本質的な処理です。不要な情報は一気に棄ててしまい、ネットワークの形成に必要な情報だけを意識する。これができた時点で、位相空間ができたということになるわけです。
ユークリッド空間から位相空間への写像マシン。脳は位相化を行う装置であり、人工知能の本質はそれをエミュレートするところにあると言えます。多謝。