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「賢く生きる知恵(バルタザール・グラシアン)」を読む

拝啓 奥さんへ

バルタザール・グラシアンは17世紀スペインのイエズス会士であり、鋭い観察眼と深い洞察力で人間の本質を見抜き、複雑な人間社会を生き抜くための智恵を箴言集『賢く生きる知恵』に残しました。彼の知恵は、現代社会においても色褪せることなく、私たちに多くの示唆を与えてくれます。

それでは、具体的にバルタザール・グラシアンの言葉を見ていきましょう。

賢者はつねに慎重に歩を進め、用心深く、公平だ。

賢く生きる知恵

世の中を渡る上での処世術ですね。湯川秀樹の言葉に、「現実は、痛切である。あらゆる甘さが排除される。現実は予想できぬように豹変する。あらゆる平衡は早晩打破される。現実は複雑である。あらゆる早合点は禁物である。」という言葉がありますが、賢者はそのことをよく理解し、慎重に歩を進め、用心深く、公平なのでしょう。夫ももう少し慎重にならねばと思いました。

思慮深さは、天からの贈り物であり、誰もが欲しい願う最高の資質である。

賢く生きる知恵

思慮深さというのが天からの贈り物という表現が素敵ですね。何かスキルのようなものではない。どちらかといえばセンスです。スキルは後天的に磨くことができますが、センスに関しては単純な足し算のように身につくようなものではなさそうです。

賢者は慎重だから、大げさに言うより、控えめに言うことを好む。

賢く生きる知恵

これは耳が痛くなる格言ですね。夫に限らず、人間誰しも大げさに言ってしまうのが常ではないでしょうか。イエスキリストが口から出るものが罪となると言っておりますが、まさに大げさに言ってしまうのは罪ですね。賢者のように控えめにするように気をつけたいと思います。

人に好かれるためには、愚かな動物の皮をかぶらなければならない。

賢く生きる知恵

ぬいぐるみをかぶって人から好かれるようになれというような比喩でしょうか。確かに頭脳明晰の人は近寄りがたい雰囲気があります。人から好かれるための処世術といったところでしょうか。ちょっといやらしい感じのする言葉ですが、まぁ賢者には賢者の悩みがあるのでしょう。

誰かに聞かれるまでは、余計な説明をすべきではない。

賢く生きる知恵

「オッカムの剃刀」ですね。オッカムの剃刀は、14世紀のイギリスの哲学者・神学者であるオッカムのウィリアムが提唱した思考の指針です。「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない」という考え方で、 思考節約の原理 とも呼ばれます。簡単に言うと、「よりシンプルな説明ほど正しい可能性が高い」 ということです。Simple is bestは夫のモットーでもあるので、この格言には納得するものがあります。

ものごとを放っておく術をする。
時を味方につければ、どんな相手とも戦える。

賢く生きる知恵

要するにPendingにしておく術を身につけろということでしょうか。
夫はせっかちなのでついつい進捗や相手の反応が気になってしまいますが、そこを放っておくという術でうまく乗り切ることが必要だということですね。言うはやすしですが、実行するとなると鍛錬が必要になりますね。

誠実であれ。熱狂にも暴力にも動じず、正義を守り抜くことだ。

賢く生きる知恵

これは非常に力強く、含蓄のある教訓ですね。古代ローマの哲学者セネカの言葉 "どんなに激しい嵐にも耐えられる強さを持ち、どんなに強い圧力にも屈しない不屈の精神を持て" を彷彿とさせます。夫は誠実なほうだと思いますが、熱狂に浮かれてしまうタイプですし、暴力には暴力で対抗しようとするので、賢者からは遠い存在にあるようです。正義を守り抜くというのは、かっこいい言葉ですが、果たし「正義とは何か」についてはゆっくりと考えていきたいと思います。

言葉が簡潔であるほど、もめごとは起きにくい。

賢く生きる知恵

こちらもオッカムの剃刀ですね。よりシンプルな説明ほど良い。もめごとが起きにくい。

忘れられることは忘れよう。これができれば幸運である。

賢く生きる知恵

よくテレビドラマなどでサヴァン症候群の人が出てきて、なんでも写真のように記録してしまう能力を見て、うらましいなぁと思ったりするのですが、よく考えると嫌なことまで記憶してしまって、忘れられないのは地獄ですよね。忘れるのが自然で、覚えているほうがむしろ不思議なくらいだという言葉もがあります。忘れられることは忘れて、幸運になりましょう。

生まれた時から離れる。

賢く生きる知恵

ふるさとは遠きにありて想うものという詩がありますが、まぁ、真理でしょうね。生まれた土地から離れたほうが、仕事にせよ何にせよ成果を残せるのだと思います。生まれ故郷とはほぼよく距離を保って、つかず離れずで付き合っていくのが良いと思います。

極端な考え方をしてはいけない。

賢く生きる知恵

その通りですね。極端な考え方は、多くの場合、問題を引き起こし、自分自身や周りの人を不幸にしてしまう可能性があります。極端な考え方とは、例えば以下のようなものです。

  • 白黒思考: 物事を「良い」か「悪い」か、0か100かで判断し、中間の状態を認められない。

  • 過剰な一般化: 一つの出来事から、すべてを否定的に捉えてしまう。「いつもこうだ」「どうせダメだ」といった思考に陥りやすい。

  • 心の読み過ぎ: 根拠もなく、相手の気持ちを決めつけてしまう。「あの人は私のことを嫌っているに違いない」などと思い込む。

  • 「~すべき」思考: 自分の価値観を絶対視し、他人にも押し付けてしまう。「こうあるべきだ」「こうすべきだ」という考え方に固執する。

知らないことでは安全な方法を選ぶ。

賢く生きる知恵

これも賢明な選択の方法ですね。リスクヘッジの観点からも無難だと思います。油断をすると、ついついリスクの高い方法を選択してしまう可能性があります。キリスト教?では、二つの選択肢があるとき、より困難な道(狭い道)を選ぶという選択(弁証法的経路)を方法があるようですが、凡人の夫は、そのような高尚な精神は持ち合わせていないので、ふつーに安全な道を選びます。

人が幸福になるには、健康・美徳・智恵が必要である。

賢く生きる知恵

これは古代ギリシャの哲学者アリストテレスの言葉ですね。現代社会においても、多くの人々に共感を得られる考え方ではないでしょうか。健康な身体と心、道徳的な美徳、そして知恵をバランス良く育むことで、私たちは真の幸福に近づくことができるのではないでしょうか。

節度を守れば、やりたいことに才能と時間を温存できる。

賢く生きる知恵

その通りですね。節度を守ることが大切です。あらゆる物事には限度があり、それを超えてしまうと、かえって逆効果になってしまうことがあります。節度というと「燃えよ剣」の土方歳三の言葉が思い浮かんでしまいます。「目的は単純であるべきである。思想は単純であるべきである。新選組は節義のみ生きるべきである」

以上、『賢く生きる知恵』には他にも沢山の名言が詰まっていますので、ぜひ読んでみてください。多謝。

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