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ビジュアル思考型と言語思考型
拝啓 奥さんへ
先日、「ビジュアル・シンカーの脳 ~「絵」で考える人々の世界」という本を読んだのですが、世の中を人を見ていると、「視覚的なイメージから考えるタイプ=ビジュアル思考型」と「言語から考えるタイプ=言語思考型」に二分されるように思います。理系の夫も芸術系の妻も典型的なビジュアル思考型だと思うのですね。そこで、ビジュアル思考型と言語思考型についてお話をしたいと思います。
まずは、マジョリティの言語思考型からです。言語による思考は、つながりがあって1つにまとまっています。おもに言語思考をする人は物事を順序立てて理解します。だから、学校では成績がいい。学校での勉強はたいてい連続していて体系化されているからです。言語思考型は一般的な概念を理解するのが得意で、時間の感覚に優れているが、方向感覚は必ずしもいいとは言えないそうです。
下記に視覚空間型思考を判定するテストがあります。10問の質問で、過半数が「はい」であればビジュアル思考型である可能性が高いです。試してみてください。
考えるとき、言語ではなく、おもに絵を使う。
物事はわかるが、その方法や理由は説明できない。
目に見たことは覚えているけれど、耳で聞いたことは忘れる。
単語をつづるのが苦手。
物体をいろいろな視点から思い浮かべることができる。
時間の経過がわからなくなることがよくある。
行く先は言葉で説明してもらうより、地図を見るほうがわかる。
ほかの人の気持がわかる。
周囲が思っている以上に物知り。
歳を重ねるごとに賢くなっていると思う。
ここまで、ビジュアル思考型と言語思考型の違いを述べてきましたが、「ビジュアル・シンカーの脳」では、ビジュアル思考型をさらに絵で考える「物体」視覚思考者と、数学の好きな「空間」視覚思考者に分類します。後者はこれまで見過ごされてきましたが、ビジュアル思考型の一つの集団で、パターンで考えるそうです。
「物体」視覚思考者は、写真のように正確なイメージでまわりの世界を見ています。グラフィックデザイナーや画家、目端の利く商売人、建築家、発明家、機械技師、設計士などです。アインシュタインは物体視覚思考者だったらしく(なんと死んですぐに脳を分析されたw)、概念は「感覚経験との関連をを通してのみ」生まれるという言葉を残しています。観察力・洞察が高くて、現実的・具体的なお話が好きな妻はこちらのタイプですね。
一方、「空間」視覚思考者は、パターンと抽象的な概念でまわりの世界を見ています。音楽や数学が得意で、統計学者、科学者、エンジニア、物理学者、プログラマーなどが当てはまります。プログラマーから見えれば、コードがパターンに見えるわけです。夫はこちらのタイプだと思います。
ビジュアル思考のメリットとしては、歳を重ねて経験を積むと、ずっと簡単に問題を解決できるようになるということです。記憶に視覚的なデータが増え、連想するイメージを「視覚記憶のファイル」から見つけ出し、さまざまな方法でそのイメージにアクセスして、問題を解決したり、世間を渡ったり、周りの世界を解釈できるようになるそうです。なんだか心が励まされる話ですね。
さて、いままでの話をまとめると下記の3パターンの思考型に分かれます。
言語思考型(A)
物体視覚思考型(B1)
空間視覚思考型(B2)
空間視覚思考型(理系)の僕が言うと、ちょっと意外かと思われるかもしれませんが、「言葉にすることを徹底しよう!」という話をしたいと思います。(お前はビジュアル思考型やろ!とツッコミが入りそうですが)
ビジュアル思考型は言語思考型が言っていることをおおよそ理解できるのですが(普段はうんうんと頷いていることが多いw)、逆に言語思考型はビジュアル思考型の言うことをほとんど理解できません(非対称性)。世の中には言語思考型のほうが多いので、ビジュアル思考型が自分が取り組もうとしていることを言語化していないと、チームの生産性が大きく下がるのです。
言わんとすることを周りの人たちにうまく伝える。単純なことのようですが、空間視覚思考型で日本人である夫には、簡単ではないのです。日本人の言語、文化のもつ思考上の特性でもあるので、意図的に(例えば、このnoteで書く)訓練していきたいと思います。
最後に、空間視覚思考の人が陥りがちな「思考の本質」に関する誤解についてお話したいと思います。人間は言語にしない限り、概念をまとめることができません。「絵」や「図」はイメージをつかむためには有用ですが、概念をきっちり定義するのは言語にしかできない技です。
言語(数式を含む)は、少なくとも数千年にわたって人間がつくりあげ磨き込んできた、現在のところもっともバグの少ない思考の表現ツールです。言語を使わずして人間が明晰な思考を行うことは難しい。「言語化することを徹底しよう!」を締めの言葉として本日のお話は終了としたいと思います。