「夢を叶えるために脳はある(池谷裕二)」を読む
拝啓 奥さんへ
池谷裕二さんの「夢を叶えるために脳はある」を読みました。669ページに渡る大作で、池谷裕二さんの渾身の一作(総集編)と言って間違いない本だと思います。すべてを紹介するのは不可能なので、本文からピックアップしながら解説していきたいと思います。
日本人は情緒の民族らしく、ここ一番になると歌を詠むようです。
古今和歌集の歌らしく、池谷裕二さんの好きな歌だそうです。
脳は回路ですので、その回路から心が生まれるというのは、脳科学的な立場として順当な回答ではないでしょうか。夫はそれほど脳にウエイトをおいていないので、身体(その複雑なネットワーク)から心は生まれると考えます。
人間が思考するときは記憶(短期記憶、長期記憶)を利用するというのは、妥当な回答だと思います。
ここは原文を読んでほしいのですが、「猫のゴンドラ実験」というもので、その証明がなされています。自分から積極的に動き回らない限り、見えることがないのだという面白い実験結果が書かれています。
これは一種のパラダイムシフトになります。普通は逆に考えるものですが、自然の状態としては寝ているのが自然で、動き回るほうが不自然なのです。これは言われてみるとなるほど!と思いました。
要するに、ランダムなものの中に何かしらのパターンを見つけようとするのが人間の特性としてあるわけです。人間とは物語を作らずにはいられない生き物なのです。
これはかなり飛躍した考え方だと思いますが、カントの純粋理性批判やフッサールの現象論やフロイトなどを統合して考えると、そういうものなのかなという気もしてきます。難しいですね。
自己啓発本などでよくあるパターンが、抽象と具体の往復運動ですが、池谷裕二さんの場合は、思索(内部世界)と確認(現実世界)の往復運動という表現をされていて、実に面白いと思いました。
これは面白い観点ですね。曖昧(脆い)な記憶によって、現実が成り立っている。こうなると、なぜゲシュタルト崩壊しないのか、正常でいること自体が不思議に思えてきます。
例えば、誘導尋問によって人の記憶というのは、たやすく操作されてしまいます。そのような記録が現実を成り立たせているというのは不思議ですね。現実って、何なんだろうと思ってしまいます。
逆に言えば、秩序や類似性が見つかってしまうと、「わかった!」と思うわけです。そして、「わかった!」「なるほど!」というのは脳の落とし穴で、本人の自己陶酔に過ぎないわけです。
池谷裕二さんの実験室のかけてある看板に書いてある言葉らしいです。
「知好楽(ち・こう・らく)」とは、孔子の教えである論語の「これを知る者は、これを好む者に如かず、これを好む者は、これを楽しむ者に如かず」という一節を略した言葉です。仕事においては、まず仕事が好きになることが大切で、好きになって楽しくなれば自然と多くの仕事をするようになり、上達もするという意味があります。
これは励みになる言葉ですね。アルバムでも見て、楽しい体験を思い出しましょう。
ここは原文を参照してほしいのですが、目的主導型でも消去法型でも選択できない場合は、適応力を身につけるしかないという結論になっています。これからの時代は、確かにそうかもしれませんね。
ここは「なんでやねん!」と突っ込みたくなるところですが、興味のある方は原文を読んでください。
だんだんと怪しげな方向に池谷裕二さんが舵をきっていきますが、大きな物語を読むような感覚でコンテキストを読んでいけば良いと思います。
これは局所的に見ればエントロピーが増大に反しているが、系全体としてはエントロピーに増大に寄与しているということになります。結局、エントロピーは増大するんかいという話です。
脳を持つ生物は、圧倒的に少ないわけです。ほとんどが植物とかバクテリア。まぁ確かにそうかもしれませんが。
これは池谷裕二さんの本「進化し過ぎた脳」を参照してください。
進化し過ぎた脳には、どれだけのポテンシャルがあるのかがわかります。
本文から少し離れますが、世の中には六角形で省エネをしているものが多いということで豆知識として覚えておきましょう。
脳科学の本かと思っていたら、経済学の内容まで網羅していて、もう全方位的に思索を深めているという感じがしました。
脳って面白いですねw 偏見だらけなのに、偏見がないと思っている。
ここで最初のタイトルに戻ります。メビウスの輪をまわって戻ってきたら、考え方や見え方や心構えが違う。
ここが池谷裕二さんの最も言いたかったことのようです。「僕らは生きているだけで役に立っている!」なんて、企業の経営者が聞いたら、ひっくりかえりそうですw
これは選挙に似ていますね。哺乳類の脳は独裁を許しません。なぜなら、環境変化に応じた、適応力を発生させる必要があるからです。そして、そのことが脳の機能を桁違いに柔軟にしました。そして、高い学習能力を獲得することにつながりました。
ここも原文を読んでほしいところですが、シナプス強度のバラツキは対数正規分布になっています。
可塑性とかいう難しい言葉を使うからわからないだけで、要するにシナプスはプラスティックみたいなもの。英語で説明してくれたほうがわかりやすいとは、困ったものですね。
最後も詩で締めくくりです。本当に総集編ですね。
長くなってしまいましたが、池谷裕二さんの渾身の一作ですので、
是非、原文を読んでください。多謝。