初心者用、文章の書き方:おはなしを書くこと2
こんにちは、くぼひできです。売れてない作家をやっています。ジャンルは児童文です。児童文学というほうが一般的です。noteでは大人向けの話も載せました。
創作論の2つめ。
地元広島で創作講座の教室をやっているんですが(自宅の「創作レッスン・つむあむ」と中国新聞文化センター。あと頼まれて出かけるなど)、受講生の人たちは概ね二つのタイプに分かれるんです。
読める文章を書く人と、読めない文章を書く人。
前者はいいんですが、問題は後者です。まず読める文章にしていかなくてはなりません。
読めない文章とは、単純にいえば「絵にならない」文章です。それと「意が伝わらない」文章。
まず「絵にならない文章」です。
絵にならない文章は、多くは地の文で見受けられます。書いてる本人はわかっているのだけど、読者には伝わらない(もちろん読者の受け取る技術・素養などもあるんですけど、まあそれに達してない文章の話をします)。
絵になるとは、その場がどういうふうになっているかがわかる、ということです。
人間には五感があります。ついでにいえば第六感みたいなものも。それから、時間感覚、空間把握とかもありますね。
その場が、いつなのか、どこなのか。誰がいるのか、なにをしているのか。などがわからないまま、話が進む(多くは会話のやりとりがある)。
何もない空間で二人の人物が延々話していると思ったら、とつぜんそこが夜の港で、二人の周囲には暴走族がバイクをバンバン唸らせていて、バイクのライトで二人が強く照らされていてということが判明すると、がっかりするじゃないですか。
読んだものをあとから構成し直さなくちゃいけない。
これは一番まずいんですよね。あとから構成し直さなくちゃいけないものが多いと読みにくいんです。少しくらいはいいんです。よくあるのは、セリフが書いてあってその次の行にセリフの主がわかる。これくらいの補正はしやすい。
でもある程度進んでから、実はこういう場面だったということがわかるとかなりつらいんですよ(もちろんそれを逆手にとった手法が考えられるけど、毎回それやるわけにもいかない)。
上記の例だと、夜の港で暴走族に囲まれているのなら、まず海の闇とか夜空とか、湿気、風、潮の香り、排気ガスの臭い、族の怒号やバイクの騒音、そういうものが必ずある。それを書いてないと雰囲気が作れないわけです。
まあ、後出しはまだ直しやすい。最初に持ってきてって言えますから。
次に絵にならないのは、一応書きこみしてあるのだけど、結果的にわからないもの。
ものの大きさとか広さ狭さ、明るさや暗さ、そのなかで見えるさまざまは、本当の絵ならば描けるけど、文章ではそうはいかない。焦点人物(ここでは、その事象を体験している人物)が感じることを、読者が感じるように書くといいです。
ある広い学校があって、それを「東京ドーム2つ分」とか書いても、味気ないし伝わらないしおもしろくない。そもそも焦点人物の感覚ではないわけです。焦点人物がたとえば小学生だったら、「いったい教室がいくつあるんだろう。前の学校は2階建てで、先生の部屋や図書室を合わせても6つしか部屋がなかった。でもここは違う。十倍はあるかな。ひとつの階の廊下だって、ここで50m走がよゆうでできちゃう。しかも6階建てで、エレベータまであるなんて!」とか書けば、実際の大きさまで書いてあるわけじゃないけど、焦点人物の実感として読者の中に蓄積されるのです。
絵になる、というのは、描写の技術です。いつもいつも説明(東京ドーム2個分など)は楽ですが、それじゃおもしろくない。描写があれば読者は追体験できます。その追体験を適度に入れることが大事なんですね。そうすると「絵になる」地の文が描けるようになります。
あ、描写ばかりだとうんざりするしお話がすすまないので要注意。ときには説明でざざっと済ませなくちゃいけません。その兼ね合いが作家によって異なります。これが文体を作り出します(これだけではありませんが)。
もうひとつありましたね。「意が伝わらない文章」。
これは読者からの感想でいちばんつらいところなのではないかと思います。「書いてある意味がわからん」とか言われるの。
お話の内容が高尚だとかそういうので伝わらないのなら別に悲しむ必要はないんですが(だってそれはわざとやってるのだし、それがわからない人ならしかたない)。
わかるつもりで書いてたり、わかってもらわなくちゃいけない場面なのに伝わらない。となればこれは直さなくちゃいけません。
意が伝わらない主な原因は、先にあげた絵にならないという場面を除けば、基本的には心のことです。
地の文、セリフのどこででも、言葉選びが違っていたり、接続や連関がわからなかったりすると、伝わらないのですね。
もちろん作者の論理が他の誰にもわからない独特すぎるものであるから伝わらないということもあるのですけど、それはここでは置いといて、とにかく文章のうえで伝わらないということがある。
これらを直すには、1文単位の見直しから始めます。
句点(。)がくるまでが長く、そのあいだに主述がねじまがってしまったとか。
二つ以上の違う主題の文が、読点(、)でつながれているとか。
主格や目的格がわからないとか。
これらは主に、1文を短くすることから解決を図ります。
「おはなしを書くこと」1で、短編から始めるのが良いという話をしたんですが、実は文単体でも同じで、短文(1つの文が短い)から始めるのが良いのですね。
短編を書く練習をしていけば、長編に応用できる。短文が書ければ、長文にすることもできるし、いざとなれば短文に分け直すこともたやすくできるようになるのです。
今回は、絵になる文章の書き方と、意が伝わる文章を書くには短文チャレンジがよいというおはなしでした。
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