ChatworkのM&Aの舞台裏。開発チームのトップ同士は何を語り合ったのか?
2022年12月16日、人事労務管理サービスを提供する株式会社ミナジンが、Chatworkグループに参画することが発表されました。(参考:2022年12月16日プレスリリース)テクノロジーを駆使したサービスを展開する両社がどのようなプロセスで、何を議論したのか。約1年経った今、どのような変化がもたらされたのか。そして、今後の未来像はどのように描いているのか?開発部門の2人の責任者に話を聞きました。
プロフィール
平本 康裕
Chatwork株式会社 インキュベーション本部 プロダクト部 マネージャー
リクルートに新卒で入社。バックエンドエンジニア、ビッグデータアーキテクト、クラウドアーキテクト、マネージャーのキャリアを歴任。2022年4月、Chatworkに入社。M&AからPMIを担当。連結子会社となったChatworkストレージテクノロジーズ社にて執行役員を担当。2023年1月にインキュベーション本部プロダクト部マネージャー就任。
佐井 高志
株式会社ミナジン プロダクト本部 本部長
フューチャーシステムコンサルティング(現フューチャーアーキテクト)に新卒で入社。複数の小売流通系データウェアハウス構築プロジェクトで、プログラム・バッチ設計開発・データ移行・DBA・チームリーダーを歴任。2008年1月、エイブルワーク(現ミナジン)に入社。勤怠管理システムの開発・運用保守・インフラ管理から、ヘルプデスク・導入・営業まで幅広く経験。2012年よりベトナムに駐在してオフショア開発を推進。2023年10月にプロダクト本部長就任。
「開発チームとしては、Chatworkグループに参画するメリットは、非常に大きいと思います」
ーChatworkグループへの参画の話を最初に聞いたのはいつですか?
佐井:2022年の10月でした。私はプロダクト開発の責任者を務めているので、社長の佐藤から、「Chatworkからグループインの話をいただいたんだけど、技術者目線ではどう思う?」と聞かれました。私自身、コミュニケーションツールとして「Chatwork」を活用していて、技術力の高い会社だと認識していました。Chatwork主催の技術勉強会にも参加したことがあります。
当時、プロダクトの改修や機能追加など、やりたいことは多々あったのですが、エンジニアのリソースが限られていて、その全てを実現するのは難しかったのです。Chatworkグループに参画することで、技術力の高いエンジニアと協働できるのは、大きな魅力を感じました。社長には「開発チームとしては、メリットは非常に大きいと思います」と伝えました。
平本:そんな風に感じていてくれていたとは、初めて知りました(笑)。私はBPaaS*の推進を担当するプロダクト開発部門のマネージャーで、Chatworkとシナジーを生み出せるパートナーを探していました。ミナジンとのプロジェクトでは、Chatworkのプロダクト開発の責任者として、デューデリジェンスから関与しています。
「開発責任者でありながら、あらゆる各論を押さえているのには驚きました」
ーデューデリジェンス(M&A契約前に行う調査やミーティング)はどのように進めましたか?
佐井:デューデリジェンスを目的とした初回のミーティングでは、5時間にわたって話し合いました。お互いの理解が一気に進みましたよね。
平本:そうですね。非常に濃密な時間を過ごすことができました。佐井さんが開発責任者でありながら、プロダクトや技術の各論を押さえているのには感銘を受けました。。データベースのパフォーマンス問題について質問をしたときには、メトリックスを見せていただいて詳細に解説いただいたことが印象に残っています。開発だけでなく、運用やトラブルシューティングの経験も豊富で、頼もしい仲間が見つかったと感じました。
佐井:何事も包み隠さず話そう、とは思っていました。取り繕って誤解を与えてしまうと、お互いにとってプラスにならない。不安なことは不安とお伝えしましたが、平本さんをはじめとするChatworkの皆さんは、真摯に耳を傾けてくれました。だから、5時間にわたって、実りのあるコミュニケーションができたと思います。
初回の打ち合わせの後も、ChatworkのセキュリティやPdMの責任者とのミーティングを行いました。テーマごとの質問をいただいて、一つひとつに回答しながら、お互いの理解を深めていきました。デューデリジェンスのミーティングにかけた時間は、合計15時間以上。それぞれの領域の責任者とも、技術の各論をディスカッションできたので、グループ参画に当たっての全ての不安は解消されました。同時に、双方のプロダクトチームが協働することで、新たな価値を生むことができると可能性も感じましたね。
平本:デューデリジェンスのミーティングは11月中旬まで続きました。ミナジンの佐藤社長に「Chatworkと一緒になった方が、自分たちのやりたいことを早く実現できる」と言っていただけたのは嬉しかったですね。
「グループ参画後、真っ先に取り組んだのは採用活動です」
ーそして、2023年2月にミナジンはChatworkグループに参画しました。その後の変化はいかがでしょうか?
佐井:デューデリジェンスの打ち合わせで確信したことが、現実になりつつあります。グループイン後の最初の全体ミーティングで、平本さんが中心となってまとめた「開発部100日計画」をお披露目しました。あるべき組織を定義して、そこに向かうための計画をメンバーに示したのですが、多くのメンバーに快く賛同してもらえました。
そこからは、Chatworkのプロダクトチームと協働しながら数々の施策を進めました。真っ先に取り組んだのは採用活動です。Chatworkのブランド力や採用力を活かして、すでにPdMやUI/UXデザイナーにジョインいただきました。
加えて、エンジニアの技術力向上も図ることができました。セキュリティやインフラ領域をはじめとして、Chatworkの先進技術やノウハウを共有いただきました。技術基盤戦略室室長(前CTO)の春日さんとも、定期的に1on1ミーティングを実施。最新のITツールやAI活用について教えてもらいました。この約1年間は、個人的にも勉強になりましたし、私がひとりで組織を運営していた頃に比べて、組織が大きく進化したと思います。
「Chatworkからの出向メンバーの中には、『ミナジンで働くのもとても楽しい』と報告してくれる人も」
ーChatwork側から見て、ミナジンのプロダクトチームはどのような印象でしょうか?
平本:ミナジンのプロダクトチームが、温かく受け入れてくれたので協働が一気に進みました。初回のミーティングから、「一緒に良い仕事をしたい」という雰囲気を感じたのを覚えています。ミナジンの開発現場はとても楽しそうで、仲が良いんですよ。
責任者の佐井さんがベトナムにいながら、この雰囲気をつくっているのはすごいなと。ミーティングでもメンバーの意見を丁寧に引き出すので、一人ひとりがイキイキと参加している。Chatworkからの出向メンバーの中には「ミナジンで働くのもとても楽しい」と言う人もいるほど。私にはとても真似できません。
佐井:チームの雰囲気づくりに関しては、ベトナムで10年以上、試行錯誤してきました。冗談を言い合える関係性でないと、仕事上の信頼関係を築くのは難しい。カルチャーが異なる外国人エンジニアを相手に、チームビルディングを行ってきたスキルが活きているのかもしれません。
平本:ミナジンはずっと人を大切にしてきた会社だと思いますね。社長の佐藤さんからも、従業員を大事にするスタンスを感じています。
「ベトナムに渡航。Chatworkのオフショア開発の可能性を検討しました」
ーそして、平本さんは、佐井さんが運営するベトナム開発拠点を訪れたと聞いています。
平本:ベトナムに渡航したのは、2023年の3月末です。初めての経験で、4日間にわたって滞在しました。訪問の目的はオフショア開発の検討です。日本のSaaS企業でも、ベトナムのリソースを活用するケースは増えています。佐井さんと一緒にいくつかの開発会社とアポイントを取り、Chatworkの将来像をお伝えして、その実現に向けての意見交換を行いました。
印象に残ったのは、国全体がポジティブな雰囲気で活力に溢れていること。日本とは異なり若者の人口比率が高く、街に出るだけでも勢いを感じます。エンジニアの皆さんと話をしても勢いを感じました。さらにIT企業の城下町があり優秀なエンジニアが多く在住していて、彼ら同士のネットワークも発達しています。そこに大きな将来性を感じました。
佐井:Chatworkから開発や組織づくりのノウハウを共有いただく中で、こちらからもお返しできたのは嬉しいですね。ミナジンの開発拠点では、20名ほどのベトナム人エンジニアが働いています。10年以上の時間をかけて、様々な失敗を乗り越えながら、高い生産性と品質を担保できるまでになりました。ここで培ってきたオフショア開発のノウハウをChatworkに提供することで、成長を後押ししたいと考えています。ちなみに、ベトナム人エンジニアの間でも、Chatworkは有名です。ミナジンがChatworkグループに入ったことを、うらやましがる人もいます(笑)。
「ミナジンとChatworkの連携で、優れたBPaaSを発明したい」
ーM&Aの発表から約1年が経過しました。今後の展望はどのように考えていますか?
平本:ミナジンは人事労務領域を専門としていて、膨大なノウハウを持っています。システムだけではなく、アウトソーシング事業も提供しているので、その道のプロフェッショナルも多く在籍している。蓄積されたノウハウとテクノロジーを掛け合わせることで、利便性の高いBPaaSをを実現していきたいと思っています。
佐井:Chatworkグループと密接に連携することで、ミナジンの事業の可能性は大きく広がると考えています。たとえば、ミナジンの勤怠管理システムとビジネスチャット「Chatwork」との連携は面白いと感じますね。人事部に所属しているユーザーは、「勤怠入力のリマインド」に困っていることが多いです。日々の出社時間と退社時間の入力が漏れている従業員を、月末に手作業でリスト化して、メールで催促を行っています。このような一連の作業を、勤怠管理システムと「Chatwork」を連携することで、自動でリマインドを行えるようになるかもしれない。
また、勤怠管理にとどまらず、健康診断や人事評価、経費精算や税務処理まで、あらゆる連携が考えられます。バックオフィスの業務には、従業員とのコミュニケーションが不可欠ですので、「Chatwork」との相性が非常に良いのです。そこに大きな可能性を感じていますね。
「Chatworkグループの拡大は、自らのキャリアにとっても、得られるものが大きい」
ーこれからもChatworkグループは拡大すると思いますが、ご自身のキャリアの今後は、どのように描いていますか?
平本:中小企業の皆様のDXを実現するために不可欠なBPaaSプロダクトを作っていきたいと思っています。
ゼロベースで必要なプロダクト機能を検討できる機会が豊富にあり、自身のキャリアにとっても、得られるものが大きいと考えています。
佐井:日々の開発のシーン以外にも、Chatworkから刺激を受けることは多いです。先日、全社員が集まる全社総会「Cha会」にオフラインで出席しましたが、ミナジンにはないカルチャーを体感できました。経営会議の運営方法や、日々のチャットでのコミュニケーションなども、勉強になっています。ベトナムでの拠点を立ち上げたときと同じくらい、多くのことを学べている実感がありますね。今後、新たなグループ企業との連携が生まれることで、自分の守備範囲もおのずと広くなっていくでしょう。
終わりに
いかがでしたでしょうか?
ミナジン社がChatworkグループの一員になってから約1年。
開発責任者同士がM&Aからどのように歩み寄って、一緒に伴走してきたのか、少しでも感じていただけましたら幸いです。
また「一緒に考える」プロダクト組織を作り上げるために、この1年どのような取り組みをしてきたのか、そして、これからどのような共創をしていくのか、来週 12/7(木)19:00~オンラインイベントにてさらに詳しくお話します!
参加者の皆様からの質問も募集しておりますので、ぜひお気軽にご参加ください⭐️
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