川越・ここ和|ココア専門店の看板メニュー「大人のココア」に思いを巡らす
ココア=甘いイメージが強く、ブラックコーヒー派のわたしはココアを家で飲むことがありません。
そんなわたしを惹きつけたのが「大人の贅沢」「大人のココア」というフレーズ。ほろ苦さが味のスパイスになりそうな、特別感のあるココアが頭に浮かんできます。
「ココア専門店」とのことで、知っているココアとはなにが違うのか。新たな出会いと発見に胸をふくらませ、週末メインでお店を開く川越の小さなココア屋さん「ここ和」に行ってきました。
小さなココア屋さん ここ和
2019年9月にオープンしたココア専門店のここ和は、観光客でにぎわう一番街から離れた場所にあります。観光地としての川越ではなく、地元川越の雰囲気があるエリアにて、住宅に並ぶようにお店を構えています。
開店時間にあわせて向かうと、信号待ちのときにお店の前で並んでいる人を発見。見通しのいい大通りに面しているので、遠くからでもお店の様子を確認できました。
ここ和は東日本唯一のココア専門店です。オープン当初はゲストハウスも兼ねて運営していましたが、2021年11月のリニューアルを経て宿泊業を無期限休業とし、空いた中二階をカフェスペースとして開放しています。
靴を脱ぎスリッパに履き替えて入店するスタイルです。先に並んでいた方で奥のテーブル席が埋まっていたので、入口近くのカウンター席にしました。はじっこの席って落ち着きますよね。
席につくと、店員さんがメニュー表を持ってきてくれます。
「お荷物はこちらにどうぞ」という声かけがあり後ろを振り向くと、ファブリック素材のスツールが並んでいます。6個ほど置かれているので、バッグのほかに手荷物があっても余裕があるスペースです。
カウンター席の前にある窓は飾り棚になっており、メルヘンな置物やドライフラワーなどがレイアウトされています。わざわざ腕を後ろに回して瓶を支えているうさぎの置物がかわいらしく、ドリンクがやってくるまでしばらく眺めていました。
大きな窓がいくつか配置され、日の光がほどよく差し込む店内です。店内は温かみのある照明が使われているので、日中は食事が映えるちょうどいい明るさ。夜はムードのある雰囲気になりそうです。
パッチワークソファやイエローグリーンのハイチェアなど、木のぬくもりと調和するインテリアが選ばれていて、センスのよさをうかがえます。おしゃれさと親しみやすさのバランスがちょうどいい空間です。
気になるネーミング「大人のココア」
冷たい風が吹きどんよりとしたお天気の日でしたが、温かい店内のおかで体のこわばりがほぐれてきたのでアイスにしました。連れは冷えた体を温めるためホットに。ここ和の定番メニューです。
「大人のココア」は、控えめな甘さとコクにこだわってつくられています。
天然甘味料のきび砂糖や純正はちみつで甘さをだし、油分の多さが特徴のオランダ産ココアパウダーを使用。隠し味としてチョコレートの原料であるカカオマスを加え、深みとコクをプラスしています。甘いミルクココアとは異なり、大人の甘さを味わえるココアです。
白砂糖を使わないこだわりから、ほろ苦さのあるちょうどいい甘さです。甘さが変に舌に残るミルクココアがあるなか、大人のココアは嫌な雑味が残らず、まろやかな口当たり。氷の量が控えめでサイズが小さいので、キンキンに冷えてるわけではなく、寒い日でも飲みやすいです。
初めにココアだけ、次にホイップを溶かしてクリーミーにしながら飲み進めます。トッピングのころんとした小さなマシュマロは、アイスだと溶けないので、箸休めのような存在です。
純粋にココアを味わうひと口目から、飲み方を変えつつ飲み終えるまでじっくり味わったものの「ピュアココアベースのココアと大差ないな」というのが正直な感想です。専門店だからこその味ではなく「知っているおいしいココア」にとどまります。ココア専門店というフレーズと、口コミ評価の高さに期待しすぎたのかもしれません。
レトロモダンなグラスに対し、スプーンストローをそえているのも気になるところです。ストローだけだとどうしてもチープな印象になってしまうので、ほかのメニューで採用している黒のカトラリーやシルバーのロングスプーンとセットにすると、全体的な印象や完成度が高まる気がします。
キャッチーなことも冷静に見極めたい
たくさんありそうで実際は全国に2店舗しかないココア専門店(現在は3店舗あります)。広まらない理由のひとつとして、製品化された高クオリティのココアに対する、味の差別化がむずかしいのではと考えさせられます。
ここ和には、保存料をはじめとした添加物を加えない、白砂糖を使用しないなどのこだわりに共感できる方が集まるのかもしれません。もしかすると、ここ和の定番・人気メニューである大人のココアよりも、フレーバーココアやココアカクテルのほうが評価されているのでしょうか。
喧騒から離れた場所にあり、休日でも気兼ねなくゆっくりできる場所は貴重です。やさしい接客とリラックスできる雰囲気から、街歩きのあとにふらっと立ち寄る休憩スポットとしてちょうどいいお店でした。