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魂の記憶
あなたとの25年振りの再会は、実に突然の出来事だった。
誰が予期できただろう、あの青天の霹靂とでも言ってそんな風に大袈裟な言葉で大きく括ってしまいたくなるような、心奪われる再会のシーンだったのだから。例えるなら、北川悦吏子のドラマのワンシーンのようだった。今思い出してみても、『ちょっと出来すぎていたよな』と、当事者の私ですらそう思ってしまうくらいに。
あの日、私は中学の同窓会へ向かう電車に揺られていた。
目的地へ向かうには3つルートがあり、
私は当初、大学時代に通学で使っていた西武線で、あの独特のローカル線の空気感で心を落ち着かせながら会場まで向かおうと思っていた。
でも家のことをしながら身支度を整え、化粧も入念かつナチュラルに見えるように仕上げていたら、あっという間に会のスタート時刻に間に合わせるには第2候補のJRと東上線を使うルートで向かわないと余裕をもって到着できない時刻になっていた。
せめて途中でコーヒーでも飲んで会場へ赴けるようにと、少し慌ててそそくさと家を出て吉祥寺駅へと足早に向かった。
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途中の乗換駅でウコンの力とそこまでする必要があるのか?と自分で自分に突っ込みながら携帯用歯ブラシセットを買い込み、ウコンを一気飲みして歯磨きをし、深呼吸をするような気持ちで口紅を塗り直して武蔵野線に乗り込んだ。
最後の乗換駅のドトールでホットカプチーノを買い、1月のまだまだ北風で肌寒い東上線ホームに降り立った。下り電車が来るまで5分以上あり、立ち止まると寒いからまだ少し熱いくらいのカプチーノを飲みながら少しホームをフラフラ気の向くまま歩いていた。
アナウンスが流れしばらくするとホームに電車が入ってきた。その時の私は特に何も考えていなかったように記憶しているけれど、電車が止まりドアが開き、下車する乗客を待って目の前のドアへ吸い込まれるように乗車した瞬間、ほんのコンマ何秒、確かに時が止まったような気がした。“きつねに摘ままれた”のだろうか、こんな感覚は生まれてはじめてだったかもしれない。
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