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ペアリングのつくりかた④
④食材×調理×味つけ 狙いどころの考察
前章まではペアリングがファインダイニングに浸透した理由や「どのように」ペアリングを考えるべきなのかというお話をさせていただきました。ここからはもう少し具体的なテクニックやロジックのお話となります。できるだけわかりやすく解説できればと思いますのでよろしくお願いします。第4章は前回お話した「横軸」をもう少し詳しく。そもそも「料理に合うワイン」をどう見つければいいのか?のお話です。
※本当に毎回多くの方にご覧いただき、投げ銭も想像以上に沢山いただいております。本当にありがとうございます。ボンヤリとですが完結してしばらく経ったら全体を有料記事に変更しようと考え始めてます。まだ読んでないご友人やお店のスタッフにはぜひ無料期間の間に読んでもらえるようお勧めください。引き続き記事が気に入った方には投げ銭・スキやシェアをいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。※
①レストランの変遷・飲と食の近代史
②ペアリングはソムリエの「成功体験」のシェア
③マリアージュとペアリングの相違
④食材×調理×味つけ 狙いどころの考察 ⇦イマココ
➄意識するべき総アルコール量
⑥提供温度のコントロール
⑦ペアリングで演出する季節感
⑧核となるコンビネーションの決め方
⑨核を取り巻く流れの決め方
⑩これからのレストラン、これからのソムリエ
不文律の存在
料理とワインの組み合わせ。ソムリエにとって永遠ともいえるこのテーマは何年経験を積み重ねても新しい提案が思い浮かぶことから、大袈裟ではなくそのソムリエがこれまで生きてきた集大成とも言える。何度もお伝えしているトライ&エラーを繰り返し、その都度修正されてきたその人だけのロジックを体感するのは同業者であっても楽しいものだ。そしてそこで得た新たな成功体験を自分なりに分析し、自らのゲストにシェアしていく。こうして世界は少しずつハッピーになっていくわけである。
料理とワインの組み合わせにおいてまず直面するのは「魚に白」「肉に赤」という不文律の存在である。それほどワインに詳しくない方でもこうした認識を持つほどに広まってしまったこの不文律。そもそもこれが正しいのかをまずは検証してみよう。
最初に「魚に白」からいってみよう。このnoteの大半の読者である島国日本にお住まいの皆さんは、「魚」と一言で言われても・・・と感じられることと思う。そのとおり、「魚」には無数に種類があり、そのすべてに白ワインが合う、というのはシンプルに言って暴論なのである。ここでは基本的な素材の話に留めたいので、わかり易く「白身の魚には白が合う」「赤身の魚にはロゼ、または赤が合う」程度にしておこう。これは実際に試してみると一口瞭然。ただし調理法や味つけによってはこの限りではない。また、青背の魚やウナギなども例外となる。これは今後の章で述べたい。
次に「肉に赤」だがこれも魚ほどではないものの非常に種類が多く、一言「肉」という言葉では縛れないというのが実情だ。レストランで使われる肉類、一般的なところで言うと鶏、豚、牛、鹿、羊、鴨、鳩、兎、猪あたりか。これに季節によってはジビエが加わるわけだが、ここでもあくまで素材の話でいくとやはり魚同様「白身の肉には白」「赤身の肉には赤」と考えるといいだろう。そしてこれも調理法や味つけによってはこの限りではないのである。
以上のように、広く一般に知られるところとなった「魚に白」「肉に赤」という不文律がいかに非論理的なものであるかはご理解いただけたかと思う。ただしこれにはエクスキューズが存在し、かつてこの国でワインという飲料が現在ほど一般的ではなかった時代、わかり易くその楽しさを広めるために考案されたのがこの文言だったと推察できる。そしてその時代においてそれは非常に有効だっただろうとも思う。しかし現代においてこの不文律をそのまま放置しておくのはプロフェッショナルである我々にとっていささか怠慢ではないだろうか。そろそろここらで新たな情報にアップデートすべきだろう。
調理による食材の変質を考える
食材に対する飲料の組み合わせ方は更に多岐に渡り、実に深い話なのだが最も重要な「不文律の解体」は済んだので一旦このあたりで置いておいて、一通り話が終わってから最後にもう一度総括という形にしたい。続いてはこれらの食材を「どのように調理したか」によって飲料サイドのアプローチが変わるという話となる。
古来から「調理法」と呼ばれるものは多く存在するが、飲料の視点から考察するのであればまず考えるべきはその食材に火が入っているかどうか、つまり生(フレッシュの状態)かどうかであり、続いて火が入っているのであれば「どのように」火を入れたものであるか、を考えるべきである。
火の入れ方、調理法は大きく「蒸す」「煮る」「炒める」「焼く」「揚げる」に分けられるのだが、それぞれの調理法によって食材がどのように変質し、どのような特徴を持つことになるのか、特に食感や香りの部分を意識することで合わせる飲料はグッとイメージしやすくなる。
しかしながら厳密に言うと例えば「焼く」の中には「フライパンで焼く」「オーブンで焼く」「炭火で焼く」「直火で焼く」などと分類され、同じ食材を用いたとしてもそれぞれ異なった特徴の料理に仕上がることになる。同様に「煮る」や「炒める」には「何と一緒に」とか「どのような調味料と」などの要素によって細かく分類される。それぞれどのように仕上がる料理なのかをテキストで見て瞬時に判断できるようになるまでトレーニングする(食べる)しかない。
一例を挙げると、「揚げる」ことによって表面がカリッと仕上がった料理に対して(ここでも衣の有無や衣に何を使ったかという問題は存在するのだが)、レモンを絞って食べるイメージそのままに柑橘の香りや酸味の強い飲料と組み合わせたり、使用した食材によっては油脂と相性の良いタンニンを多く有する飲料も合うだろう。この様にある料理に対していくつかの選択肢を持つことで前回のお話であった「食事の流れを邪魔しない」最善の案を採用すれば良いわけである。
食材の部位の違いによる仕上がりの違い
最後にペアリングの狙いどころとしてある意味最重要とも言える「味つけ」のお話。ここまでお話してきた食材×調理にこの味つけを加えることで料理は完成する。僕個人の話だと、例えばシェフから「今度のコースのメインは仔羊のロティで行きます」と聞かされた際、必ず聞くのは「部位」と「ソース」である。
「部位」はソムリエとして食材をイメージする際にとても重要なパートで、例えば「仔羊のロティ」とだけ聞かされるのと「仔羊背肉のロティ」や「仔羊鞍下肉のロティ」と聞かされるのではイメージが異なる。もっとわかり易く言うとマグロの赤身と大トロではよりハッキリと異なる。
もしこれを読んでくれているシェフがスタッフに詳しい部位を伝えてなかったり、メニューに明記してなかったりするのであれば今すぐに改めていただけるようお願いしたい。ご自身はその部位の持つ特性の違いをご存じでも若いスタッフやソムリエ、ゲストが皆あなたと同じくらいモノを知ってるとは限らない。是非その知識や経験を共有してあげてほしい。良いソムリエは良いシェフと仕事をできる環境でしか育たないというのが僕の持論である。
味つけ・ソースは料理において決定的な役割を果たす
「ソース」はダイレクトに五感で感じることのできる、特に香りと味わい両方の要素を強く持つため、前述のとおりこれらの「味わい」が最終的にその料理に合わせる飲料を考えるうえで決定的な役割を果たすことが多い。赤ワインやマデイラ、ポートを使ったソースならやはり白ワインとは少し難しくなるだろうし、醤油や魚醤の旨みを活かした味わいも赤ワインの方がしっくりとくる、といった具合だ。
コースに対してペアリングを考案する場合、前回お話した縦軸の「流れ」を意識しつつ、今回の「食材×調理×味つけ」を意識した横軸を、できれば何通りか考案して取捨選択できるようにすることが最終的に全体がうまくまとまったペアリングを作るうえで重要なことなのである。
今回のこのお話は真剣に書きすぎるととても10分で読める内容ではなくなるため、かなりパーツを端折った仕上がりとなってしまい個人的にもちょっと不本意な出来となってしまった。ギリギリ必要なことだけは羅列したつもりだが正直なところ消化不良気味である。そこは素直に申し訳ない。故に10章まで描き切った後、それこそ有料版としての追加記事がアップされる可能性がグッと高まった。こちらも乞うご期待、である。
ではまた次回。
※案の定今回あたりから筆は進むものの端折るための編集に時間がかかり、更新ペースが若干落ちてしまった。皆さんの投げ銭(サポート)や「スキ」にお応えできるように頑張ります。初回から伝えてるとおりあんまり過度に期待せずにハンター×ハンターの連載再開を待つくらいのノリでいてくれたらほんと助かります。そこんとこよろしく。
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