ドローン・レベル3.5とは?
作業部会で新たな提案
2023年11月17日(金)に、規制改革推進会議の作業部会で、国土交通省からドローンの「レベル3.5」の新設が提案されたことが一部で話題となっています。
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_02startup/231117/startup06.pdf
レベル3.5以外にもいくつか新しい話題が出ていますので、資料から分かる範囲で解説します。
「レベル3.5」とは?
現状制度の問題点
まず、話題となっている「レベル3.5」からです。
資料2ページでは、現在のカテゴリーⅡ(レベル3)で必要とされている「立入管理措置」を撤廃するとしていますので、カテゴリーⅡの実質緩和と考えるのが妥当でしょう。
たとえば、人口集中地区(DID)や周囲30メートルに人や物件がある場所で無人航空機を飛行させるには許可承認が必要なのが原則です。これに対して、操縦ライセンス(二等無人航空機操縦士)を取得した操縦者が、第二種機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合には、原則として個別の許可承認は不要です(カテゴリーⅡB)。
ただ、カテゴリーⅡに該当させるためには、必ず立入管理措置を講じなければならないとされています。
「立入管理措置」の内容は、航空法施行規則236条の70に定められています。
狭い日本で、周囲30メートルに人や物件がない場所を探すのはかなり困難ですので、日本でドローンを飛ばす場合、多くでは、補助者や看板などが必要となっていました。これはかなりの人手と手間がかかることになります。
立入管理措置の撤廃の範囲は?
そこで、立入管理措置を撤廃すると国交省は述べています。
どこまで立入管理措置が撤廃されるかは、資料から明らかとはいえません。ただ、冒頭の記述からすれば、以下のようなことを考えているということでしょうか。
機上カメラの活用 ⇒ 立入管理措置の撤廃
操縦ライセンスの保有+保険への加入 ⇒ 道路・鉄道等の横断に際して一時停止不要
明らかでないのは、立入管理措置の撤廃が、操縦ライセンスの保有と保険への加入を要件としないということか、です。
詳細は案が公表されるのを待つ必要がありそうですが、もし上記の通り機上カメラの活用だけを要件とするのだとすると、一人で飛行させている人も、機上カメラで立ち入る人がいるかを確認すれば、補助者や看板の配置は不要ということになり、大きな変革といえるでしょう。
年内実施とあるので、法律の改正ではなく、立入管理措置の内容を定める航空法施行規則236条の70の改正または解釈の変更で対応すると思われます。施行規則は「その他の適切な措置」と定めているので、施行規則を改正しなくとも解釈(「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」などのガイドライン)を変更するだけで対応可能と考えているかもしれません。
1日での許可・承認
資料3ページでは、以下のように1日での許可・承認を目指すとしています。
飛行に許可承認が必要となるのは、大きく以下の3つの場合があります。
操縦ライセンス(無人航空機操縦士)または機体認証を受けた無人航空機なく、特定飛行をする場合
カテゴリーⅡAの場合(操縦ライセンス(二等無人航空機操縦士)を取得した操縦者が第二種機体認証を受けた無人航空機を立入管理措置を講じて特定飛行させるが、空港等の周辺、150メートル以上の上空、催し場所の上空、危険物の輸送、物件の投下のいずれかを行う場合)
カテゴリーⅢ(レベル4)の場合(立入管理措置を講じない特定飛行)
現在、第二種の型式認証を受けた市販の無人航空機はありませんので(この点は以下参照)、レベル4を除き、ほとんどの特定飛行は上記1.で許可承認を受けて行っています。この許可承認の申請は10開庁日以上前に行うよう指導されており、それよりさらに遅延することも多く、不評を買っています。
今回、許可承認を1日で行うとしており、歓迎すべきです。
問題は、1日での許可承認が「レベル3.5」について行うとしている点です。
レベル3.5が何を指すのか分かりません。レベル4(上記3.)は除く、ということは分かりますが、上記1.と2.の両方について1日で許可承認をするということなのか、または上記2.だけを指しているのか、このあたりは今後の動向を注目したいところです。
なお、余談ですが、そもそもカテゴリーⅡAについて個別の許可承認を必要とするのは止めた方が良いのでは、と思っています。多く利用が想定される農薬の散布は物件の投下と危険物の輸送にあたりカテゴリーⅡAとして常に許可承認が必要なのですが、さらなる安全措置が必要なのであれば、農薬散布の限定解除のような制度を設けて、訓練とライセンスの制度を設けた方が、より建設的だと思います。
型式認証取得機の増加へ
上記の通り、第二種の型式認証を受けた機体は現状ありませんので(申請は4件ある)、二等無人航空機操縦士の資格を取っても、宝の持ち腐れとなっています。制度趣旨に適わない、全くもって酷い状況です。
そこで、型式認証取得機を増加させるため、社内試験データの活用など効率的な認証取得を実現するとしています。
個別の許可承認では「資料の一部を省略することができる無人航空機」を定めるなど、国交省は市販の機体について一定の知見を有している(そして、1年間の包括承認も認められている)ことからしても、型式認証で非常に重い手続が課されているのは、ややナンセンスといえます。
今後、型式認証も進み、操縦ライセンスが広まり、皆が安心して安全にドローンを飛行させることができるようになるのを願ってやみません。