路線図をたどって
いつからだったか、路線図を眺めることが好きだと気づいた。
自他ともに認める方向音痴で、地図はそこまで好きじゃないのだけど、線路が張り巡らされたさまが描かれた路線図は、いつまででも見ていられる。
高校生までは、電車に乗るといっても隣町の高校まで通う一駅の区間だけだったから、JRと地下鉄を乗り継ぎ、1時間かけて大学まで通うようになった頃だろうか。
そういえば、青春18きっぷを初めて使ったのも、新幹線に初めて乗ったのも、大学生になってからのことだった。
路線図に描かれた通りに線路を辿っていけば、日本中のあらゆる場所へ行けるのだと知った。
社会人になってから、東京から岐阜まで在来線だけを乗り継いで帰省したことがある。大学時代にたくさんお世話になった、青春18きっぷを使って。
在来線に乗ると、その土地に生きる人たちの暮らしが垣間見える。
エナメルバッグを肩から下げた男子高校生。
電車通勤のサラリーマン。
近くの街まで買い物に出かけた帰りと思われる主婦。
そして、そこに居合わせる縁もゆかりもない自分。
なんだかさすらいの旅人のような気分になって、心が躍る。
新幹線のぞみに乗れば、名古屋まではたったの1時間40分。
だけど、新横浜から一度も停車しないその乗り物は、人々の生活から少し離れたところを目にも止まらぬ速さで駆け抜けていってしまう。
路線図をたどって、陸続きになったさまざまな土地の暮らしを眺めながら移動するのがたまらなく好きだ。
さすがに、毎回在来線で帰るわけじゃないけれど。
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