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あなたの書く字が知りたい

誰かの筆跡を見るのが、とても好きだ。

現代社会においては、基本的にテキストのやり取りは電子的方法で行われる。
キーボードをたたくと画面の中に並ぶ、均一で癖も乱れもない文字の列。
文字間隔も一定で、とても読みやすい。

けれど、気持ちを伝える場面においては、どんな心を尽くしたLINEのメッセージだって、手書きで添えられたメモにはかなわないと思ってしまうのだ。

交換ノートの順番が回ってくるのが楽しみだった小学生時代。
毎日顔を合わせて話しているにもかかわらず、授業中は毎時間のように友だちへの手紙を書いていた中学生時代。
当時は手書きの授業ノートや課題を目にする機会も多かったから、もう滅多に会うことのない同級生たちの筆跡を、いまでもありありと思い出せる。

先生顔負けの、お手本みたいに美しい字を書く子。
まるくデフォルメされた、でもフォントみたいに安定した字を書く子。
筆圧が弱くて、すこし細長いシルエットの字を書く子。

筆跡から受ける印象は、普段の対面コミュニケーションで受けるその子たちのイメージと一致することもあれば、ギャップを感じることもあって、それがまたおもしろくて好きだった。

社会人になってから親しくなった人たちは、どれだけ仲が良くても、意外にその人がどんな字を書くのか知らないことが多い。
新年のあいさつも、節目のメッセージも、オンラインサービスやSNSのメッセージで済ませられる時代だけど、たまにはあえて手書きで気持ちを伝える機会があったっていいじゃないか、と思う。

(629字)

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