「こんなんちゃうねんもうええわ」

漫才コント(コント漫才?)で「こんなんちゃうねん、もうええわ」という〆かたが最近増えていて、多分自分は一生やらないので言うが、この終わり方がおかしくておかしくてたまらないのだ。

昔は「全然できてへんやんけ、もうええわ」というパターンをよく見た。漫才コントの入りが「〇〇やってみたい(んやけど、おかしなところあったら言って)」であることが多くて、最終的な相方がちゃんとできているかの総括ということで、一応〆として成立している。ただおかしなところがあったら指摘するというツッコミの形式の制約があるので、見るほうもその形式に飽きてくるし、できることの有限さが浮き彫りになってきて停滞してくる。そこでツッコミ自身もコント内に入り込んで、一緒になってつかの間の共犯コントをやればこの壁が壊せることに漫才師が一斉に気づいた(そしてこれ自体は漫才の正当な進化であると思う)。

その結果、漫才内のコントからネタ尺の中で抜け出すことができなくなってしまって、最終的に「こんなんちゃうねん、もうええわ」というセリフによってネタ全体を否定して終わるという手順しかなくなってしまった。電源ボタン長押ししか搭載されていないパソコン。

こんなんちゃうのなら、なぜもっと早くこんなんちゃうと言わなかったのか?と言いたくなるが、そういうことはよくある。歯医者の「なんでもっと早く来なかったんですか?」はハラスメントだ。ツッコミも怖くて言い出せなかったのだろうな。もっと早めにコントを中断することもできたが、それは歯をドリルで削るくらい痛くて苦しい。分かる。

ボケごとに訂正するネタや、コント外の傍観者としてツッコんでいる場合は漫才として見れるのだけど、二人でともにコントを作り始めると、私の脳が融通利かないせいでコントを見る体勢になっていく。二人がかりだから、どんどん練り上げられて質感を増していくコント世界。ボケのせいでどんどんめちゃくちゃになるコント世界。おいおい、どうなっちゃうんだ!黒煙を上げて崩壊しそうになる世界で突然「こんなんちゃうねん、もうええわ」が聞こえたかと思うと、漫才師の二人だけコント世界から緊急脱出!

プシュー!!!

お~い、どこ行くね~ん!👆💦💦💦

そのままパラシュートで悠々と舞台袖に着陸。コントの世界に一人取り残される私。

「こんなんちゃうねん!もうええわ」のイメージ

「こんもう」は現在過渡期にあり、言うときにちょっと気恥ずかしいような、苦々しいような顔をする漫才師もいて、これはこれで好物である。「無理やり終わらします、堪忍してください」という顔。ただ「最後くらい漫才らしく終わりますか……」みたいなすがすがしい顔で言うコンビもいる。これもいとをかしだ。

今思えば『ゴジラ -1.0』のラストは「こんもう」だったのかもしれない。戦闘機で特攻するけど間一髪で脱出してました、のオチ。VTuberの引退も「こんもう」。みんな崩壊寸前の世界で生きていて、その世界の約束事にノリながら生きているけど、最後はこんもうで脱出すればいいという精神。死ぬよりマシだわな。


いいなと思ったら応援しよう!