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「教会に行くから」と言われ、ホッとした話

アメリカにはNEXTDOORというご近所SNSがある。ご近所の便利情報やモノの売り買いができるというサービスで、わが家は引っ越しの際に大量の不良品をNEXTDOORで売ったり、無料であげたりして、大量に処分をすることができた。

ものすごく便利なのだが、不特定多数の人とやり取りをすることになるので、「変なヤツ」に遭遇する可能性も決して低くない。事前に引き取り時間を決めてくれない、買うと言って時間も決めたのに引き取りに来ない、急に一切連絡がとれなくなる、なんてことも残念ながら少なくない。

昨年末に家を購入したわが家。前のオーナーがおいていった冷蔵庫を。長らくガレージに放置していた。先日、家族が一足先に日本に一時帰国し、比較的に時間がとれるので重い腰をあげてNEXTDOORで公開をした。数名ほどから連絡があったのだが、やっぱり要領をえないことを言う人がいたり、引き取り時間を特定したがらない人がいて予想通り苦戦した。そのうちの一人が携帯の電話番号を共有してきて、話した方が早いので、少し話せる?と言ってきたので、電話で話すことに。

やっぱりテキストと異なり、電話の方が意思疎通がスムーズに進み、引き取り時間まで決めちゃおうとなった時、相手が

今日は、もう遅くなってしまったので、明日の日曜日でよければ引き取りにいけるよ。でも、午前中は教会に行くから、明日なら正午以後ならいつでも良いよ。

と言った。その時、私は自然と

あっ、まともなやつだから、きっと大丈夫だ

と、ほっとしたのだ。そう、私は「教会に行くから」という一言で、この人はきっとそんな滅茶苦茶な人ではない、という判断を直感的にしたのだ。自分でも、この認識は興味深かったので少し深堀りしてみる。この内容がどこから来ているのかと言うと、『ヒルビリー・エレジー』という本の下記のくだりからかもしれない。

教会に定期的に通っている人は、まったく教会に行かない人と比べると、犯罪者になる可能性が低く、より健康で長生きし、稼ぎも多い。高校中退者も少なく、大学を卒業する人が多い。マサチューセッツ工科大学の経済学者、ジョナサン・グルーバーは、そこには因果関係があるとまで言っている。人生がうまくいっている人が、たまたま教会に通っているのではなく、教会がよい習慣をつくるのに寄与している、というのだ。

『ヒルビリー・エレジー』 J.D.ヴァンス

アメリカはヨーロッパ諸国と比較すると、キリスト教への信仰心がまだまだとても高い。定期的に教会に通う人の比率は24%程度と、未だにそれなりの高さを保っている。教会のコミュニティというのは、宗教的な説教をするだけでなく、教育活動や地域への奉仕サービスの提供を通して、そのメンバーに道徳的規範を教える下地が備わっている。実際、良きコミュニティで良き習慣を培っている人も多いので、有象無象の沢山いるアメリカ社会では結構信頼できるのだ。勿論、色々な人がいるので十把一絡げにすることはできないが、今回の出来事から自分の中にそういう判断基準も備わっているのは、新鮮な発見であった。

かくして、ガレージの冷蔵庫は指定時間より少し前にきちんと到着したマシュー君によって引き取られていった。さて、独身生活中の一つのTODOを消化することができた。次なる一手として家族のいぬ間に、ガレージの一角にプチ・ホームジムを作るという計画にうつっちゃおう。

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