剣道をやっていました。
小学生の頃はスポーツクラブに属していた。種目は剣道。仲の良かった同級生に誘われて始めたのがきっかけだった。運動神経は決して良い方ではなく、肥満体型であったことから小学2年生から6年の引退の時まで取得した本数0という脅威の記録を持っていた。得意技は面を打つモーションから胴を撃つことだった。
剣道は面、胴、小手の3点(小学生なので首元を狙う突きは反則)に綺麗に当てることで3人いる審判の2人以上が旗を上げたら1本という明確な判定の無いゲーム性であった。その中でも胴は綺麗に入れるのが難しく、最も1本が取れない攻撃であると教えられていた。
しかし面を打つフリをし相手が釣られて頭部を守った隙に胴を入れるという決まるととても美しいこの胴に魅入られ、ひたすら胴の練習をしていた。
最後の公式戦、団体戦の副将として出場した際に自分でも納得いく胴が決まったことがある。会場がどよめくのを感じた。審判を見ると3人のうち最も若そうな男が旗を上げていた。残りの中年男性が旗を上げず、若い審判を睨みつける様子が見えた。旗を上げていた審判は萎縮し旗を下ろした。結局その後は警戒され胴を打つ前に仕留められてしまった。
試合後、監督が言うには対戦相手は旗を上げていた男性を睨みつけた審判の息子だったようで太った奴に我が子が1本取られるのを嫌ったようだったと聞いた。全てを聞き二度と剣道をやることはないと決意をした。
この経験から、好みを押し通して認められるのは難しいが、それを知った上で押し通したいと思ってしまう頑固な人間であるとわかりました。
「では、結果は追って連絡させていただきますね。失礼します。」
「かしこまりました。何卒よろしくお願い致します。」
後日、活躍と健勝を祈るメールが来た。どうやらまた旗を上げることはできなかったようだ。
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