ニンテンドーラボVRキット 分析というか雑感

 ニンテンドーラボのVRキットが思ったより鋭いアイディアだったので雑感まとめ。スイッチならではのVR体験がしっかり練られていると感じた。
 先に断っておくと私はVR関連に詳しい訳ではない、ただの任天堂好き。ラボシリーズは未購入だが、公式情報とSNSで雰囲気だけ掴んでいる。今回のラボはちょっと惹かれるものがあったので記事にしてみた。

・任天堂らしいVR

 VRキットの紹介から「任天堂が考えるVRのあり方」が徐々に見えてきた。単にダンボールで自作できて遊び心があるというだけではない。

 最大のポイントは頭に固定できるようにしなかったことだと思う。一般的なVRのイメージは「がっつり映像の世界に没入」だが、VRキットはゲームを目元から離せばいつでも現実に戻れる。
 VRゴーグルはディスプレイを目に近づけるので、長時間のプレイは眼球へのダメージにつながるだろう。立体視による負担やVR酔いの懸念も聞く。
 VRキットの場合本体を手で支える必要がある。腕が疲れやすいぶん、自然とこまめに画面を下ろすことになるはずだ。熱中しすぎて目が痛む心配が少なく、子供にも与えやすい。

 また、遊んでいる人が孤立しにくいという特徴もある。一般的なVRゴーグルは何を見ているのかわかりにくく、プレイヤーが周囲から浮きやすい。
 VRキットならいつでも人に手渡せる。実際上記の動画にも二人で本体を交換しながら遊ぶシーンがあった。一人でじっくり遊ぶだけでなく、誰かと体験を共有してほしいという思想が見て取れる。

 リアルな世界に黙々と浸ることを目的とするならVRキットは向かないかもしれない。この辺りの割り切ったスタイルが任天堂らしいと言える。

・スイッチの特性を生かす

 もう一つ鋭いと思ったポイントがここ。スイッチの仕様のおかげで、非常に手軽なVR体験が実現している。

 他のゲーム機やPCならVRのために専用ゴーグルが必要だが、スイッチには程よいサイズのディスプレイが最初から付いている。携帯ゲーム機と比べてスペックもあるので、それなりの立体視が可能なはずだ。
 このため、比較的安価なパーツを追加するだけでそこそこのVRゴーグルが手に入る。「携行できるサイズの据え置きゲーム機」というスタンスがぴったりVRとマッチしている。

 調べた所、スマホをセットして使うVRゴーグルもあるらしい。ただこれだとタッチ操作ができなくなるので、ゲームとの相性はいまいちだと思われる。
 その点スイッチには最初からコントローラが2個付いている。VRの要件が概ね揃っている訳だ。

 単に「VR流行ってるからウチもそろそろやろう」ではないのがわかる。現行のデバイスと相性がいいことを任天堂は理解しているのだろう。

・VRとラボを組み合わせる意味

 任天堂は長らく立体視について試行錯誤を重ねてきたし、VRの模索を続けていたはずだ。スイッチをこの方向性で使うことを早い段階から計画していたのかもしれない。
 例えば、スイッチをVRゴーグル化する組み立て済みの別売りパーツを用意することもできたはずだ。そうなると、それをどんなソフトと組み合わせるかが課題となる。
 上記の通り、任天堂の考えるVRはがっつり長時間遊ぶものではなさそうだ。だとすると何かのスピンオフとか、ミニゲームを売ることが考えられる。

 メイドインワリオVR、というのも考えられなくはない。ただこの場合、手で支えながら操作するためジョイコンを本体から切り離せない。せっかくの分離コントローラが生かせず、2つのモーションセンサーとジャイロセンサーは腐ってしまうことになる。
 その点ニンテンドーラボはどうか?ラボ自体は「スイッチの特性を生かす」というコンセプトから、主にジョイコンを活用するために生み出されたもので、VRを企図していたようには見えない。この辺りは公式のインタビューを読むと伝わってくる。

 しかしラボはある種のミニゲーム集である。個々のゲームはシンプルだが、そのためのコントローラを工作する楽しみを付加することで遊びの幅を広げた。最終的にはプログラミングで遊びを自作することもできる。
 VRとラボを結びつけることで「単なるミニゲーム集」という印象を減らし、発想的に遊べるよう展開している。
 また、ダンボールを用いてスイッチ本体とジョイコンを緩くつなげているのも面白い。ある程度の可動領域を設けつつも全体としては1つのおもちゃになっており、両手で支えやすい。それでいてジョイコンのセンサー類も生きてくる。

 長年培ってきた研究と最近のアイディアが突然結びつく。いかにも任天堂らしい。古いものも新しいものも大事にするからこそできる結合だ。

・任天堂VRの今後

 前述のように、任天堂の考えるVRは「一人でがっつり浸る」ではない(少なくとも現状は)。つまり「頭に固定する機器を作って、何十時間も遊べるVR専用ゼルダでも作りましょう」という線は薄いように思う。

 ここからは推測でしかないが、任天堂はラボのVRゴーグルを用いた機能を、様々なタイトルに付随する形で作っていくつもりなのではないか。すでにマリオカートがラボのトイコンに対応しているが、同じように様々なソフトにVRモードを付加し、おまけとして楽しめるようにするという可能性だ。
 今回のVRキットには「ちょびっと版」という廉価版が用意されている。単に手軽に手に取って欲しいという意図もあるだろうが、ラボにあまり興味はないがVRゴーグルだけは欲しいという層を見据えているように思える。将来的にVR対応のソフトを増やす上での布石になり得るものだ。

 最後に個人的な感想になるが、VRゲームの主流はこういったおまけ・ミニゲーム的な方向性になる気がしている。高価なVRゴーグルを頭に装着して長時間遊ぶスタイルはどうしても人を選ぶからだ。
 私自身、長年のデジタル依存で視力を落としているので、目に負担のかかるディスプレイが一般化することへの疑問も大きい。技術の進歩で何か変わるかもしれないので、長期的にはどうなるかわからないが。
 いずれにせよ、今回の任天堂の一手がどう市場に評価されるか楽しみだ。


 noteの書き方を模索中です。文体とか説明の量とか、しばらく記事ごとに雰囲気がバラけそうな予感。

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