「データの世紀」の登壇者に聞く日本企業のDXへの取り組み
11/1に開かれる「データの世紀 新時代のビジネスルール」に向けて、事前インタビューに参加させていただくことになり、当日登壇する本間さんのお話を聞いてきました。
今回は特にデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)まわりの最近の事情を中心にお話を聞くことができました。
DXと従来のデジタル化の違い
DXは最近よく見聞きする単語になりましたが、未だ意味はモヤっとしたものになっています。
すでに仕事や生活の中にIT技術は浸透していて当たり前のものになっているいます。その中でDXとは一体何なのかというと、以下のような変革をしていくとのことでした。
・仕事の取り組み方を再定義する
・新しい産業を生み出す
・新しい顧客体験を提供する
よくあるレジの無人化などは単なる省力化であって、データを活用したDXではないということでした。「IT技術を使う」という今までのデジタル化のスキームとは全く異なるアプローチを必要とのことでした。
例としてはタクシードライバーがありました。AIで最適化されたレコメンドよりも地元のタクシードライバーの方から聞く方が、いわゆる「地元の人しかしらない名所・名店」のようなものにたどり着ける場合があります。
今後自動運転が普及していくことでドライバーという仕事が、運転よりも乗客への会話やコミュニケーションが中心になっていく可能性があります。こうなると、もはやドライバーという定義が変わっていて、デジタルによってアナログもより進化させているように思えます。
ここまでで、デジタル技術によって得られるデータを利用して、従来の仕事のあり方や顧客との関係性を変化させること・未知の領域を開拓することがDXへの取り組みである、ということがイメージできました。
DXによる競合の変化
新しい顧客体験の提供は、従来の競合の概念を大きく変えるものになっています。
従来でいうとコンビニの競合はコンビニ業界の中にありました(セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートなど)。
しかし、技術の進化とともにDXに取り組んでいくことによって、新しい顧客体験を提供できるようになると、顧客の時間の取り合いになっていくことで全く異なる業界が競合となりえるようになっていきます。
その事例として、コンビニ x Uber Eats という構造のお話がありました。従来であれば、「コンビニでお弁当や惣菜を購入して家で食べる」という体験価値に「家にいながら専門店の料理を食べる」という体験価値をぶつけることで、食べるという共通の行動に対して競合の構造ができあがっています。
DXはNew Worldへ足を踏み入れること
ネスレの高岡さんの言葉が印象的でした。
・DXに対する勉強時間が長い(ので行動に移るのが遅い)
・NewWorldには成功体験がない(ので成功するか誰にもわからない)
ネスカフェ ドルチェグストは、今までの4〜5杯取りで家族が利用することを前提にしたコーヒーメーカーではなく、先の時代を見据えて1杯しかとれないコーヒーメーカーを作る、という自身の業界の常識や文化を覆して(New Worldに突入して)誕生した製品です。
結果的にネスカフェ ドルチェグストは多くの反響と話題を呼んで成功しています。
ドルチェグストが提供した価値は、家族団らんではなく職場のコミュニケーションの活性化だったようです(いわゆるネスカフェアンバサダー)。これが先の「新しい顧客体験を提供する」に繋がっていると思います。
日本企業にDXは浸透させるためには
DXに取り組むにあたって以下がポイントになりそうです。
・既存の文化や常識を一度考え直す(自社の強みを見直す)
・失敗する覚悟を持つ(ファイナンスの安全と心理的安全性の確保する)
これらは今の大企業が苦手とするポイントと重なっているような気がします。特に日本企業でありがちなのが儲かるかどうかと人事考課への影響があると思います。
スタートアップと違って新規事業がその企業の収支の大半を担っているというケースは少ないと思われます。
ビジネス上、確かに利益が出るかどうかは重要な指標ですが、失敗したら割り切るという覚悟を決めて行動することも重要だということでした。
また、新規事業の成功が昇進や出世などと関連付いてしまうと、積極的にDXに取り組むことに抵抗が生じます。
本来はGiverとTaker、レールを作る人と修理する人のように、得意な人・不得意な人がいるはずなのに、日本ではGeneralistを作ろうとしてしまったという点も誤った新規事業への取り組み方だということでした。
こういったGeneralistを作りたがるのは、失敗を恐れリスクをヘッジするための守りの姿勢であるようにも思えます。以下のANAの事例のタイトルにあるように「攻め」の変化が必要であると思いました。
感想
これからはデータエコノミーの時代になっていくという認識はあったものの、まだまだ知らないことも多かったなと感じました。
特に日本企業にありがちなところは、以前イノベーションのジレンマを読んだときとかなり近いものを感じました。
それでも最近の日本企業におけるDXの事情ははとても興味深く、こういった事情の中でスタートアップではなく日本の大企業から変革の動きやDXの成功事例が増えていくと良いなと思いました。
お話を聞いた後からもう当日のイベントがさらに楽しみになりました。特に海外の事例などは、さらに踏み込んで話が聞けるのではないかと思っています。
アフターデジタルもおもしろかった
インタビューとは離れますが、当日イベントに参加するにあたって、登壇者の藤井さん著書のアフターデジタルも読みましたが、こちらもとても興味深い内容でした。
中国における事例を中心としていますが、今の中国のDXへの取り組みスピードに改めて驚かされるとともに、日本との文化の違いなど大変興味深い内容でした。
その中でも、個人的には以下の文が強烈に印象に残っています。
「実は不便で、顧客をだまし、お金がちゃりんちゃりんと入ってくるサービス」は、高頻度接点と高付加価値をもたらすアフターデジタル時代のサービスに淘汰されていく
現在多くのSaaSがある中で、時代の流れに飲み込まれずに生き残って進化し続けられるようにしていかなければいけないな、と感じました。
追記 2019/10/18
日経新聞電子版のCOMEMOの注目記事に掲載されました!
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