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第27話 神様のお仕事(転生神語)

「変えられないのは、過去と他人」
昔、この言葉をよく聞いた。しかし、本当にそうなの?って、思える出来事を、何度も経験した。

別人になる瞬間

十年ほど前、少しの間、占い師をやっていたことがある。占いの学校があることを知り、面白そうだと思って、説明を聞きに行ったら、占い師になることを勧められた。別に、占いに興味があった訳でもなく、見えない世界も分からないし、霊感も無い。しかし、当時、自分のコミュニケーション能力の低さに悩んでいたので、見ず知らずの人と話せば、能力が上がるかもしれないと思い、学校へ通い始めた。授業は、面白かった。一通り勉強して、占いブースに座るようになった。しかし、お客さんが来るのを、座ってひたすら待つというのが、自分には合わなくて、数ヶ月で辞めてしまった。

ある日、占いのブースに座っていたら、若い女性がやって来た。とても暗く、重苦しい雰囲気の女性だった。悩みを聞くと、同棲しているパートナーからDVを受けていて、どうしたらいいか分からない、とのことだった。タロットカードを引きながら、アドバイスをしたが、反応が今一つで、なかなか、彼氏との関係を断ち切れない様だった。このまま、お金を貰って帰す訳にはいかない。さて、どうしようか?と、思っていたら、とっさに、
「あなた、本当は、そんな人じゃないでしょ?」
という言葉が出て、自分でもびっくりした。すると、彼女の顔が、パッと明るくなり、
「そうなんです。私、本当は、やりたい事があるんです」
と言って、堰を切った様に、彼女の口から夢が溢れ出した。
「もう、大丈夫ね!」
実家に帰れると言うので、
「先ず、実家に帰りなさい。そして、夢に向かって、頑張ってね!」
と言って、帰した。

彼女は、来た時と帰る時は、全く別人だった。すごく喜んで、お礼を言って、帰って行ったが、お礼を言いたいのは、私の方だった。人が別人になる瞬間を見せてもらったのだから。一瞬で1秒も掛かっていない。まるで、オセロの石が黒から白に変わった感じだった。私の言葉がキッカケになったのは確かだが、彼女を変えたのは、私ではない。人間って、こんなに一瞬で、真逆に変われるのか?と、驚きだった。

嫌な人がいなくなった!

目の前の人が、一瞬で変わるのを見たのは、その時だけだったが、この数年間、自分が関わった人が、真逆に変わるのを、何度も経験した。

夫も、あんなに威張り散らしていたのに、すっかり別人になった。
近所の人たちのトラブルに巻き込まれた時も、集まって、話し合いをしたが、平行線で、解決の兆しすら見えなかった。しかし、二度目集まった時、皆、穏やかになっていて、10分足らずで、問題が解決してしまった。誰か、事前に根回しをしたのかと思った程だった。

不思議なことに、自分にマイナスの影響を及ぼす人たちが、次々と、別人に変わっていった。しかも、その変わり様に、私は、毎回、驚かされた。こんなふうに、人を変えるなんて、私にはできない。これは、もう、神様が、私の為にやってくれてるとしか思えなかった。
毎回、神様が、
「やっといてあげたよ」
と、言ってくれてる様な気がした。
気がつくと、私の周りには、嫌な人がいなくなり、他人から受けるストレスが、無くなっていた。

「変えられないのは、過去と他人」というのは、人間界の話。 
神様の世界は関係無い、と思える出来事だった。

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