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わたしの伝えたい親子のお話。
先日、頼んで送っていただいた小冊子「知ってもらいたい家族がいる」が届いた。noteを介して知ったエムズコドモシッティングの青木美紀さんが自費で出された。ページを開いた途端、柚子の香りがする。香が染み込んだしおりがセットされていたのだ。感覚遊びのプロの仕掛けだ。この香りとともに家族のお話を読む。香りとともに、いろんな家族の物語が記憶される。
そしてふと思い出したのだ。私も伝えたい親子の話がある。
講習を終えて帰ろうとすると、Aさんが私を待っていて呼び止めた。
「せんせー、おもちゃ作ったんです!見てほしくって」
とても弾んだ大きな声だったので、私は少し驚いてしまった。いつもはとてもおとなしい方なのだ。
Aさんが手に大切そうに持っていたのは、プラスチックをくり抜いて作った「はらぺこあおむしのぽっとんおもちゃ」だった。
Aさんのお子さんは、重い障がいのある9歳の女の子。そのおもちゃは、その子に合わせて色々な工夫がしてあった。
「この教室でおもちゃを作る楽しさを教えてもらったんです。
だからどうしてもせんせいに見て欲しかったんです」
と、彼女は可愛い大きな目で真っ直ぐ私を見つめながら話してくれた。
Aさんと出会ったのは3年前の母子生活支援施設での手芸教室。いつも必ず参加してくれて、わいわい賑わう教室の中で、1人静かに黙々と縫っている。作品は絶対完成させる。それもひと工夫加えて、サンプルより可愛く仕上げしまう。
あまりおしゃべりをしたことがなかったから、彼女がこんなふうに教室を想ってくれてるなんて、全然知らなかった。
嬉しくて嬉しくて、私の涙腺はすっかり崩壊してしまった。
すると私が泣いているのが、何か悪いことが起こったのかしらと感じたお子さんが、とても不安そうな顔をしたのだ。
「ごめんごめん、違うの違うの。
ママの作ったおもちゃがあまりに素晴らしかったからね、嬉しくて泣いてるの。
いいおもちゃだねえ、ママはすごいねえ」
そういうと、その子はやっと安心して、ギュッとおもちゃを抱きしめて、にっこり笑ってくれた。
Aさんは、私のおかげで楽しさを知ったって言ってくれたけど、私はAさんのおかげで、伝える喜びをもらった。
そして、みきてぃさんの「知ってもらいたい家族がいる」
家族の写真とともに、その家族にしか語れない物語が6つ載っている。みきてぃさんの出会いの中で育まれたいろんな想いが、熱く伝わる。
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