未経験で人事になりたいあなたへ 012/100 緒方 慎吾さん
未経験で人事になりたい方向けに、人事コンサルタントの多田が100人の人事にインタビューをする企画「未経験で人事になりたいあなたへ」
緒方さんとは、私が事業会社で人事をやっている際に「人事」と「就活生」という立場で出会ったのがきっかけで、2020年には一緒に仕事をする機会もあったという関係です。その時は、めちゃくちゃ感慨深かったです・・・!
緒方さんご自身も「人事未経験」から現職の人事ポジションに転職をされた方なので、これからキャリアチェンジを考えている方にはぜひ読んでいただきたい内容です!
経歴
ー 最初のキャリアから教えていただいてもいいですか?
エンジャパンという人材系の会社に新卒で入社しました。エンジャパンに内定していた先輩からの紹介というのが入社の背景です。当時どこで働くかはあまりこだわりはなく、選考の過程で会ってきた人もよかったので、この会社で頑張ってみようかなと思うことができたので、入社を決めました。
ー エンジャパンではどんな仕事をしていたんですか?
人材紹介事業に配属をされて、サービス業界を専門とした採用コンサルタントをしていました。そこから、声をかけてもらって新卒領域に特化した新規事業にジョインして営業をやっていました。新規事業の内容としては、上位学生と大手企業を繋げるようなカフェを展開するというものでした。学生と企業側で使用ニーズがマッチしていなかったことなどが原因であまり上手くはいきませんでした。2年半程度経ったタイミングで、転職することに決めました。
ー 転職をしたきっかけはなんですか?
携わっていた事業が終了のタイミングを迎えましたし、そのまま在籍するというよりも外の世界も見てみたいなと思いました。また人は好きでしたが、会社のカルチャーにフィットしている実感はなかったのも正直なところではあります。そして、具体的に転職を考えた時に「人事」になりたいと思いました。
ー 人事になりたいと思った理由はなんですか?
理由は2つです。1つが、色んな企業の採用コンサルタントを経験していく中で愛する自社の採用をしてみたいなと思ったからです。もう1つは、近年色んな会社が立ち上がっていて、それらの会社が大きくなっていくために一番必要とされるものは、HRの領域だと思ったからです。採用・育成・組織活性など人事の仕事をマルチにできたら、各所から求められる人材になれるのではないかと考えました。
ご縁があって、マイクロアドに入社して、現在2年半程度になります。
現在の仕事内容
コーポレートデザイン本部に所属しています。元々は人事部付けだった組織ですが、採用・育成・組織開発は現場に近い部門になるので、人事部から一歩抜け出してビジネスサイドに近いHR組織として独立した部門になります。HRBPというやつでしょうか。
具体的な仕事内容としては、新卒中途の採用フロント、エンゲージメントツールを活用した組織活性、全社総会・社内ラジオなどのパーソナリティなどをしています。よく「会社をいい感じにする仕事」と表現させてもらっています。
経験してきた人事の仕事
得意な領域は、採用と組織開発ですね。制度設計・運用に関しては一部経験がありますが、経験豊富とまでは言えないです。
人事の仕事のポジティブな面
・会社のカルチャーを作る裏の立役者になれる
僕らの発信したことが現場に定着し、さらに社内の共通言語になったりします。例えば社内ラジオを通してグッドジョブを「GJ」と表現していて、それがお互いを賞賛する文化が定着するきっかけになったと思います。このように社内の文化を作るきっかけになることができます
採用の観点でも、会社の入り口を担当するので、文化に合う人や文化を作っていける人を集めることができます。入社後のオンボーディングでも、馴染みやすい環境を作っていくことができます。
・自由度が高い
例えば営業は売上を作ることが目標で、そのために色々な手法があります。一方で人事のミッションは「会社を良くする」ことなので、無数のアプローチ方法があります。採用や社内イベントはそのアプローチ方法の一つに過ぎないと思っています。そういった意味で、クリエイティビティが発揮できる仕事だと思います。
・経営に近い
会社の今後の経営方針に、早いタイミングで触れることができます。会社がマーケットの影響を受けてどう動いていくのか、ということに絡むことができるのは面白いところだと思います。会社がなりたい姿を先に察知して、それに合わせてどう仕組みを作っていくかを考えます。「会社を作っているなぁ」と実感しながら働くことができます。
人事の仕事のネガティブな面
・結果が出るまで時間がかかる
やったことに対して結果が出るのが、短くて半年長くて数年かかります。結果がダイレクトに出にくい仕事です。数年前に離職が増えた背景から、会社の組織偏差値をあげるプロジェクトとして制度の見直しに取り組みました。もちろん現場のメンバーが頑張ってくれているというのもあると思いますが、ここ最近で退職者が出ていなかったり、経営層からもいい評価をもらえています。このように、仕組みや土台作りに対して効果を実感できるまでに時間がかかります。
・評価や賞賛を受けにくい
あくまで裏の立役者であることが美しいポジションだと思うので、評価や賞賛にこだわる人には苦しいかもしれないです。そもそも人事という仕事にインセンティブはないし、社内表彰も現場スタッフにフォーカスするのが当たり前です。そこで、「こんなに頑張ってるのに」と思う人にはネガティブに映ると思います。いい意味で一歩引きながら、人をキラキラさせる側の仕事です。
人事プロフェッショナルに必要な要素
・現場至上主義
繰り返しにはなりますが、いかに主役を現場として考えることができるかが大切だと思います。現場を知っている人事が発する施策とそうじゃない人事が発する施策には、大きな違いがあると思っていたので、僕自身も人事を離れて営業を経験したことがあります。施策が現場に浸透しなかった時に現場に課題を探すのではなく、みんながやりたいと思うような仕組みを作れなかった責任を自分に向けることが必要だと思います。
・個人事業主に近いスタンス
個人事業主みたいな感覚を持った方がいいんじゃないかなと思っています。人事はそこに座っているだけでは1円の価値も産み出していない仕事だと思っています。それでも存在しているだけで給料は発生しています。その給料に見合う以上の価値を出して、毎月契約を更新してもらっている様な意識は必要だと思います。人事は1ヶ月単位で測ることは難しいですが、安定的に給料を払ってもいいと思ってもらえるようなパフォーマンスを求められる仕事です。
・事実に基づいて判断すること
これが僕も陥りがちな事例ですが、「多分現場こうだと思う」とか「多分ここに欠点があると思う」という判断に基づいた意思決定では、現場は動いてくれないと思います。事実としてどこに問題があるのかをちゃんと見つけた上で組織開発に取り組むというプロセスを踏むことが、信頼に繋がると思います。うちの会社では特に、「それって本当なの?」と聞かれた時に、理由まで答えられるようなデータがあるかどうかは意識しています。
人事キャリアを目指す方にアドバイス
「人事の仕事ってなんだと思う?」って聞かれた時に、どう答えるか?
自分が”人事”という職種に対して持っている認識が表れると思ってます。
人によって異なりますが、人事になりたい人は、「過去に出会った人事の人がイケてた」とか「採用がしたい」とか「会社を良くしたい」とか色んな想いから人事キャリアを目指していると思います。そういった仕事は人事の仕事の中の瞬間的なものに過ぎないので、たくさんの人事の人にどんな仕事をしているのか聞いた方がいいと思います。
人事はかなり広義な言葉なので、それに惑わされないで欲しいです。
人事キャリアを目指している人は、人事になりたいのではなくて、人事という仕事に内包されている何かをしたいと思っているはずです。そこについて自分自身で知ってもらいたいと思います。採用も何かを達成するための手法の一つに過ぎませんし、手法にこだわりすぎるとキャリアも視野も狭まってしまいます。
人事は一言でいうと「会社を良くするためになんでもアプローチしていい仕事
」だと思っているので、もっと色んな人事を知ってもらいたいなと思います。
転職の面接の際には、この会社で人事キャリアを積んだ後に何をしたいのかというところまで語れる様にしていました。さらに面接の場では、会社に長くいることは前提で、会社が僕に求めているものと僕が将来やりたいことがフィットしているかの擦り合わせをしました。
ちなみに僕は、採用・育成・組織活性とマルチにできる人材になって、だれかが起業したり何かいい事業を見つけた時に、その人事周りを任せてもらえる様な人材になりたいという風に公言していました。将来の話をしておくことで、会社側も仕事を振る時に相談してくれるといったメリットもあります。
「どういう人事になりたいのか」と「会社はどういう人事をやってほしいのか」を面接・入社のタイミングで擦り合わせておかないと、後々苦しくなると思います。
最後に、人事は1人で結果を出せる仕事ではないので、ついつい助けたくなってしまう様な、周りを巻き込んでいける様な人に向いていると思います。