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人事のためのキャリアコンサル_002:自分の市場価値が分からない、初めての転職活動
「人事のためのキャリアコンサル」とは、"人事"プロフェッショナルの方々のキャリア支援を目的に、架空の人事経験者のプロフィールを元に、「もし私だったらこんなアドバイスをする」をまとめたコンテンツです。
キャリアサマリ:
32歳、女性
日本語ネイティブ、英語初級レベル
新卒から現在まで1社経験、グローバル展開する日系大手メーカー
経験業務は、新卒・中途採用、海外人事、労務対応、人事システム導入など
現在年収800万円、希望年収900万円以上
課題:
一度も転職活動をしたことがないため、自分の市場価値が分からない。
人事としてどんなキャリアの可能性があるかを知りたい。
転職活動をする上で、どのような準備をすればいいのか?
キャリアアドバイス:
一度も転職活動をしたことがないため、自分の市場価値が分からない。
一度も転職活動をしたことない方であれば、誰もが思う疑問。自分が現在もらっている給与・ポジション・仕事内容は、転職市場で見た時に適切なのか?
最も簡単に分かるのは、ビズリーチ/Green等の転職サイトと、人材紹介会社に登録をすることです。
ビズリーチやGreenなどの「ダイレクトリクルーティングサービス」では、自身の経歴・経験や年収を登録すると、いろんな企業からスカウトが届きます。また、人材紹介会社では、コンサルタントのヒアリングを経て、あなたにマッチする可能性のある求人を紹介してもらえます。
いずれのサービスも無料(一部サービスは課金あり)で利用できるため、今すぐの転職のニーズがなくても、まずは登録をしてみて、どのような求人のスカウト/紹介があるのかを見てみるのが良いでしょう。
その上で、"人事"専門の人材紹介・エージェントの立場から、新卒で1社経験の人事の方に対しては、転職の意思が高くなくとも一度は他社の面接を受けた方が良い、と伝えています。特に、20代後半〜30代前半の方には。
スカウトや人材紹介会社からの求人紹介は「文字情報」での判断です。新卒から一貫して人事経験があり、一度も転職をしていない30代前半のプロフィールは、おそらくかなりの数のスカウト/求人紹介を受け取るはずです。しかし、文字情報から抱く期待値と、面接官が面接を通じてあなたに抱く期待値が、必ずしも一致するとは限りません。
面接官から直接的なフィードバックをもらえることは多くありませんが、少なくとも「合否」という結果でフィードバックをもらうことができます。もし仮に、複数社の面接で「不合格」をもらった場合、書類と面接の期待値のギャップがどこかにあることは間違いありません。このギャップを1日でも早く知ることが、長い目で見たときのあなたのキャリアにとって重要です。
もし不合格が続くようであれば、例えば、信頼ができる外部の人事の方や、何人かあった人材紹介会社の中で信用できそうなコンサルタントから、客観的なアドバイスを求めた方が良いでしょう。
人事としてどんなキャリアの可能性があるかを知りたい。
50代以上の人事プロフェッショナルの方々と面談をさせていただいた経験から、人事のキャリアの可能性、キャリアゴールには大きく4つあると考えています。
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HR Head
複数の人事チームを管轄する人事部門のトップのポジションで、タイトルとしては、CHRO/HR Head/HR Director/人事責任者等です。HR Business Partner
経営・事業目標を人・組織の観点から実現するパートナーで、タイトルとしては、HR Business Partner/ HRBP/ 人事ビジネスパートナー等です。Stand Alone HR
小規模企業の人事トップのポジションで、タイトルとしては、HR Headと同じく、CHRO/HR Head/HR Director/人事責任者等です。HR Specialist
特定の人事領域に特化したプロフェッショナルのポジションで、タイトルとしては、Talent Acquisiton Director/L&D Director/C&B Director等です。
4つのキャリアゴールのうち3つが「ジェネラリスト」です。ジェネラリストとして経験を積んでいかれた方が、キャリアの晩年でスペシャリストに転向しているケースは見たことありますが、その逆はあまり見たことがありません。
30代前半の方で、かつ、定年まで正社員として就業をすることを目指していくのであれば、特定の人事領域の経験を積んでいくこと(スペシャリスト)よりも、複数の人事領域の経験を積んでいくこと(ジェネラリスト)をお勧めしています。
ただし、上述の表の通り、年齢を重ねていけばいくほど、転職市場にマッチするポジションの数が減っていき、競争が激しくなっていきます。50代の方で、会社都合で解雇をされた方とお話をさせていただくと、解雇をされる前から「独立」を視野に入れて準備をしていた方とそうでない方で、はっきりと次のキャリアに違いが出ていました。
準備をしていた方は、そのまま独立をされたり、計画的な資産形成をされていたために年収へのこだわりがないため、年収を下げて転職をされるなど、ポジションクローズの危機に対して、対処をされていました。
一方、準備をされていない方は、年収を維持する必要があるものの、同水準の年収を獲得できる求人がほとんど存在せず、最終的には大幅に年収を下げて転職せざるを得ないケースが多かったです。
30代前半であれば、まずはジェネラリストを目指し、キャリアの幅を広げつつ、40〜50代にかけて、「転職」だけではなく、「独立」の可能性を視野に入れて準備をしていくことが、これからの人事のキャリア戦略です。
転職活動をする上で、どのような準備をすればいいのか?
人事の転職に限らず、まずは「職務経歴書のアップデート」を習慣化しましょう。
3ヶ月/6ヶ月/1年など、自分のロールが変わるタイミングで、自分の過去の仕事の棚卸しも兼ねて、職務経歴書を書き直しておくことをお勧めします。理由はシンプルで、忘れてしまうからです。
ご自身の5年前の仕事について深ぼって質問をされて、すぐさま答えられますか?
例えば、採用の仕事をしていた場合に、
年間の採用目標は?
扱っていたポジションは?
採用チャネルは?
業務範囲は?
応募数/面接数/月の入社数などは? など
直近の仕事であれば答えられるかもしれませんが、数年前の業務では答えるのはかなり難しいと思います。しかし、それを聞かれるのが面接です。
職務経歴書の定期的なアップデートは、面接対策はもちろん、「会ってみよう/会ってみたい」と思える書類を作り込む=書類通過率の高い職務経歴書を作り込む作業です。
職務経歴書をアップデートする際には、特に以下の観点を踏まえてアップデートしてください。
目標/実績を定量的に記載する
担当業務を具体的に記載する
上から概要→詳細/現在→過去の順番で記載する