未経験で人事になりたいあなたへ 022/100 岡田 直也さん
未経験で人事になりたい方向けに、人事コンサルタントの多田が100人の人事にインタビューをする企画「未経験で人事になりたいあなたへ」
岡田さんは、このインタビュー企画のために友人から紹介してもらってお会いさせていただきました。
新卒で現職に入社され、現場で経験を積んだ後に人事にキャリアチェンジをされた方で、会社・事業への理解が深い方だなぁ、という印象が強かったです。今在籍されている会社の中で人事へのキャリアチェンジを考えている方には特に参考になるお話だと思います!
経歴
ー 学校をご卒業されて最初のキャリアは何から始められたんですか?
新卒で株式会社ワンスターの親会社にあたる株式会社ファインドスターグループに入社しました。私が入社した当時はグループ会社ごとで採用活動をしていたわけではなく、親会社に就職して研修を経て、各グループ会社に配属されるという仕組みでした。新卒で入社してから2年間は、新しく法人登記された会社で社長と2人で新規事業の立ち上げに従事しました。
ー 新規事業の立ち上げは具体的にはどんなことをされていたんですか?
事業内容は、EC業界に特化した人材紹介ビジネスでした。販管費などの固定費を抑えるというEC業界のビジネスモデルの特徴から、職種あたりの採用人数が少ないことがほとんどで、大手の人材紹介会社からも敬遠される傾向にありました。そこで、元々ファインドスターグループ自体がEC業界に特化した支援業をメインとしている会社であったこともあり、その一環としてEC業界に特化した人材紹介事業に取り組みました。なので、人材業からキャリアをスタートさせたことになります。
ー その後はどんなことをされてきたんですか?
その新規事業が軌道に乗ったこともあり、代表がスピンアウトしたことをきっかけに、社会人3年目のタイミングでワンスターにグループ会社内異動しました。そこから3年半の期間、ワンスターでweb広告代理事業の法人営業を担当しました。26~27歳の時に8名程度のチームマネジメント、10億円規模のプロジェクトの統括を経験した後に、2019年7月に人事に異動しました。
ー 人事に異動されてからはどんなお仕事をされてきたんですか?
人事に異動してから1年半程度は中途採用の責任者として、営業職やクリエイティブ職、人事職など幅広い職種の採用に携わりました。その後、今年に入ってからは組織開発に関する部署の責任者をやっています。具体的には社内の制度設計やコミュニケーションデザイン、現場の課題解決などに取り組んでいます。
現在の仕事内容
現在は主に社内向けの人事に取り組んでいます。
具体的には、
既存の制度をベースとした社員評価制度設計・運営
新しいキャリアプランコースの企画立案
理念やそれに付随する社内制度の浸透を目指すプロジェクト
現場で働いていた経験を元にした現場の課題解決
などです。
経験してきた人事の仕事
採用は経験してきましたが、「人材育成・組織開発」や「制度設計・運用」は採用ほどの期間経験していないですね。労務に関しては労務担当の方々と連携をとっているので、多少知識はあるといった感じです。
人事の仕事のポジティブな面
・世の中への貢献を実感できる
採用という入り口から携わったメンバーを、組織開発の観点から研修など要所でサポートしながら、本人が入社時に熱く語っていた夢やビジョンに近づいく様子を見ることができるのは面白いところだと思います。会社や事業において人材はとても大切で、自分達が採用に携わった方々がどんどん増えていくことで、今まで手が届かなかった事業が回せるようになったり、お客様との取引を広げることができるようになります。そういった観点から、採用活動を進めることが、間接的にでも世の中への貢献に繋がっていることを実感することができます。
・経営に近い仕事ができる
組織開発に携わるようになってから、経営層との距離の近さをさらに感じるようになりました。経営会議に入っていくと、経営層ならでは悩みや現場で起きていることを理解しきれない歯痒さを感じます。一方で現場は現場で感じることがあって、その2つを繋げるということによって、人事はバリューを発揮することができると考えています。経営層と現場のお互いの意見を汲み取って双方に発信することで、組織を一つにまとめあげられることを実感します。
・現場のメンバーの良き相談役になれる
現場のメンバー同士だとちょっとした相談をしにくい瞬間があるかと思いますが、私は現場メンバーを評価する上司でもなければ経営陣でもないので、フラットな立場で相談に乗ることができます。組織によるのかも知れませんが、私たちの会社では気軽に悩み事を相談してもらう機会があります。1人で勝手に決断する前にまず人事に相談しようと思ってもらえることは、ポジティブな面の1つだと考えています。
人事の仕事のネガティブな面
・現場の問題に気づきにくい
リアルタイムで現場の悩みや苦悩をキャッチアップすることの難しさを感じる瞬間はあります。もっと早く相談に乗れてあげれていれば、そこまでネガティブな思いを抱えたまま働かなくてもよかったのに、というケースはあります。最悪な場合はそれが退職に繋がってしまったり、退職面談で初めてメンバーの苦悩を耳にすることもあります。もっと早く気づいて関係を取り持っていれば上手くやれたのにと思うことがあるのは、ネガティブな面だと思います。
・退職に向き合わなければならない
会社によるとは思いますが、ワンスターは理念に共感しているメンバーが働きやすいことを重要視しています。そのためワンスターでない会社で働いた方が幸せと感じるメンバーに対して退職も含め考えてもらう面談を行うなど、難しいコミュニケーションを強いられる場面があります。会社を強くするためには必要な仕事ではありますが、個人としては誰もやりたくない仕事だと思います。そういった仕事も割り切って行わないといけません。
・自分の好きな人を採用できるわけではない
採用の際に、個人的には好きでもワンスターには合わないなと思う人に出会った際に、歯痒さを感じることがあります。個人として仲良くなれそうかどうかと、一緒に事業を回すことがその候補者様にとっても最適であるかどうかは、必ずしも一致しません。私個人を主語にした採用したいという気持ちと会社を主語にした気持ちは異なるので、個人の気持ちに折り合いをつけることに最初は苦労しました。
人事プロフェッショナルに必要な要素
・会社を主語にするというスタンス
人事の中でも採用という役割は個人を応援することができる仕事だと思われがちですが、基本的に人事は会社の理念をより体現したり、事業をよりドライブさせることが目的となっているので、会社の想いを軸に物事を進めていくスタンスが大事だと思います。
また、個人の思いと会社の思いを切り離して考えることも求められます。人間なので個人としての好き嫌いはあるかと思いますが、その感情と組織の人事としての意思決定を切り分けることが必要です。
・周囲に協力を仰ぐスタンス
人事は他のポジションよりも、周囲の協力によって成り立っている仕事だと考えています。例えば採用であれば、人材を紹介してくださるエージェントの方々であったり、面接に協力してくれるメンバーの方々であったり、様々な方に支援していただいています。特に社内のメンバーに関しては、彼ら事業に取り組む時間を削ってまで協力してもらっているため
、人事に協力したいなと思ってもらえるようなコミュニケーションの取り方や配慮が必要です。具体的には、エージェントの方々に対して紹介していただいた人材の合否をただ通知をするだけではなく、「ここはマッチしていますが、ここはミスマッチで〜」といった文章を添えることが信頼獲得に繋がることもあります。社内に対しては、採用に協力してもらうことの重要性を発信し続けることが大切だったりもします。
・自分は不完全であるという意識
人事は社内においては売上を生み出さない組織で、組織全体の社員数に対して人数がかなり少ないことがほとんどです。そのため、人事という組織の中だけで完結しないという意識が大切だと考えています。社内の人事部で常識だと思わていることも、世の中の人事からしたら当たり前ではないことがあります。外の人事の動きや立ち回りを学ぶ姿勢は重要だと思います。私自身、業務がなんとなく回っていたとしても、仕事が上手くいっていると勘違いしないようにすることを大切にしています。
人事キャリアを目指す方にアドバイス
人が好きだから人事をやるというよりかは、好きな会社を見つけることが大事だと思います。この会社の理念やビジョンのためであれば、自らも納得して行動出来ると思える会社で働くことが大切です。そうでないと、例えば採用において「なんでこの方が採用されなかったんだろうか」といった様に、会社の意思決定に納得できないということが起こり得ると思います。
そのためにも人事をやるのであれば、どういう思いを大切にして人事をやりたいのかということを事前に棚卸ししておくといいと思います。「採用に携わりたいから人事をやる」というだけではなくて、「採用に携わることで何を実現したいのか」といったところまで理解ができると、自分が入りたい会社を選びやすくなるかと思います。
あとは、伝える力を磨き続けることが大切だと思います。
人事は営業に似ているとよく言われていますが、その所以がこの部分なのかなと思います。というのも、例えば採用において自分の会社を良く伝えるという意味ではなくて、相手が知りたいと思っていることに対して良いことも悪いことも適切に伝えることが大切だと思います。そのためにも、今やっている仕事から伝える力を磨き続ける意識をして損はないと思います。また採用のシーンだけでなく社内で何か物事を伝えるというケースでも、同じ内容を伝えるにしても、どの言葉を選択するかどういった文脈で伝えるかなどを工夫する場面はあります。
また人事として採用された後には、その会社の現場の仕事を1回体験してみるといったことも大事かと思います。もし会社としてそういった制度がないのであれば、手をあげてやってみてもいいですし、営業や現場の仕事に同行してみるのもいいと思います。私自身も現場業務を経験したことによって、現場の人の想いを汲み取れたり現場の人が悩むポイントがわかったりと、人事としての幅が広がっていることを実感しています。
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