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未経験で人事になりたいあなたへ 003/100 佐田 雅弥さん

未経験で人事になりたい方向けに、人事コンサルタントの多田が100人の人事にインタビューをする企画「未経験で人事になりたいあなたへ」

3人目は、トヨタからスタートアップに転職をされた佐田さん。2020年の春ごろ、ひょんなきっかけでオンラインでお話しさせていただき、その後はSNSを通じて情報交換をしてきた、とっても今どきな関係な私たち。

トヨタで学ばれてきた人事のポリシー、佐田さんの人事の仕事に対する考え方を聞かせていただき、胸がグッと熱くなりました。

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経歴

ー 最初のキャリアから伺ってもいいですか?

2009年に新卒で、トヨタ自動車に入社しました。
就職活動を通して、色んな社会人にあっていく中で、入社したい会社を10社程度選んでいました。その中でも、1番最初に内定が出て、自分にもマッチするなと思ったトヨタ自動車に入社を決めました。トヨタ自動車では1年目から人事に配属されました。

ー 元々人事を希望していたんですか?

トヨタ自動車はものづくりの会社だし、トヨタ生産方式を理解・実践できる人になることが将来に活きると思っていたので、生産管理を希望していました。しかし発表された配属先は、人事部で配属と同時に福利厚生シェアドサービスを提供している子会社へ出向することになりました。

ー そこではどのような仕事をされたんですか?

施設管理の仕事をやっていました。具体的には、寮や社宅の管理、福利厚生の設備投資に関連する仕事をしていました。他にも、従業員の利用する駐車場管理や通勤に関する施策を企画・実行するといったこと担当していました。当時は、同期が海外出張したり、重要な意思決定に携わったりとキラキラした仕事をしていく中で、「辛いな」と思ったこともありました。ただ、今振り返ると、このときの仕事が最も「人」というものを知ることができた期間でもあり、その後のキャリアにとても生きています。
この仕事を約4年間した後に、研修出向という形で、インドネシアトヨタ自動車に2年間在籍しました。

ー インドネシアではどのようなことされていたんですか?

初めの半年は、語学研修を受けつつフルタイムで仕事をしていました。インドネシアでのミッションは、「新車プロジェクトの立ち上げに際する労務リスクの極小化」でした。当時は多くの関連会社がインドネシア進出してきた時期でもあり、そうした関連会社の日本人社長の方々にに労務管理の重要性を理解いただき、新車プロジェクトを遅滞なく立ち上げるという仕事をしていました。
他にも、現地法人のマネージャー層向けの研修の立ち上げ、ナショナルレベルでの賃金政策のロビーイングにも取り組みました。その後、帰国して、本社で人事異動の担当になりました。

ー 人事異動の担当とは具体的にはどんなことをしていたんですか?

どういう風に仕事を通して育成していくのかという個人レベルの話から、事業のどこにリソースを重点配置していくのかといった組織レベルの企画と実行です。これに関しては、新人の配置から、ベテランの出向ポストを探すところまで、幅広く携わっていました。そこから、心境の変化もあり、2019年2月から、今の会社に移りました。

ー 転職した際の心境の変化について伺ってもいいですか?

自分のキャリアについて振り返った時に、人事業務について「型やそこにこめられた理念も理解しているけれど、自分で作ったことはない」ということに気づきました。当時、豊田社長の「他流試合で勝てる人間になろう」という言葉を思い返した際に、このままいくと私が他流試合で勝てる人間になる頃には、40歳後半になっているのではないかと思ったんです。また、その時には、コーポレート部門の仕事は縮小されていたり、それまで学んできたことは陳腐化していたりするかもしれない。そうなってくると、自分が「他流試合で勝てる人間になる」ためには、トヨタという安全柵を外して、自分で課題を設定し、物事の習得スピードを高めていく必要があると思いました

現在の仕事内容

主にコーポレート部門全般の仕事をしています。自社のプロダクトを世に出していくに当たって、関連するヒト・カネの管理をしています。

経験してきた人事の仕事

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人事採用に関しては、前職時代は新卒採用のリクルーターをやった程度でしたが、現在は中途採用中心に行っています。
制度設計・運用については、会社の根幹を変えるような制度設計には携わったことはなかったのですが、自分の担当領域における制度設計は行っていました。今の会社では、枠組みは作ってある段階で、ビジネスの推移を踏まえて、今後具体的なものを導入していこうという感じです。
私は、配属が日常労務管理に関連する業務であったこともあり、これを軸にキャリアを形成してきました。華々しい仕事というわけではないので、若手のときはなんだか辛いなと思ったこともありましたが、「人」を理解するという点で、配属時の仕事は本当に今に活きていると思っています。

人事の仕事のポジティブな面

・大事な意思決定に携われる。
私が人事の仕事をしているときに意識していることがあります。新入社員のときに大先輩が実際の経験として教えてもらったエピソードなのですが、

ある経営者の方に、
「一人優秀な人を採用できたら何をさせますか?」
と聞くと、
『営業をさせる。二人目には、お金の管理をさせる。』
と言われた。人事をさせるという返答がないなと思っていたら、
『人事は1番大事だから、俺がやる。』
と言われた。

というものです。新入社員だった私はその話を聞いた時に、「これから責任を持って、経営者が担う役割を代行しているという目線で仕事をしなければいけないな」と思いました。人事は経営戦略だから大事という、単純な話ではなくて、その会社で働くことや会社についてどう魅力的に思ってもらうか、1人ひとりの従業員とどのようにコミュニケーションをとっていくかといった観点を念頭に日々働くことが大切かと思います。

・人の可能性開花に携われる
本人も気づけていない才能や可能性が人事配置を通じて開花する瞬間に立ち会えるということです。自分が提案した配置案を通じてその人が活躍していく過程に携われるのはとても嬉しく、その仕事をやって良かったなと感じます。

人事の仕事のネガティブな面

・勘違いしてしまう

大事な意思決定を行い、社長の仕事を代行している意識を持つことは重要な一方で、自分自身が偉くなった気になってしまうことはあると思います。私自身も、気をつけているつもりですが、他の人から見ると横柄に見えている場面があるかもしれないですし、常に自分をけん制することは大事だなと思っています。

・過小評価されやすい仕事ではある

基本的に、お金を生む仕事ではないのと、当たり前のことを着実に行い続けるという側面もあるので、周囲からできて当たり前と思われることはあるように思います。

人事プロフェッショナルに必要な要素

・謙虚な姿勢
当時の上司から、「人事は神ではない。アドバイスはそれだけだ」という言葉をかけてもらったことがあります。そもそも、他人の評価をするのは神でない限りやってはいけないこと。しかし、経営を回すためには誰かがやらなければなりません。評価の仕事をする時には、「誰が良いか悪いか」ではなく、「誰が適切か」の視点が大切です。「誰が適切か」を判断するためには、自ずと会社・組織の将来を念頭に、個人に関するヒアリングを徹底的に行うなど、全体像を理解する必要があります。それを繰り返すことで自ずと謙虚になり、最適な答えを導き出せるような気がしています。
あと、昇格、人員配置などは、経営のメッセージと捉えています。皆が頑張っている中で、誰かを昇進させるということは、他の人に、「この会社は彼/彼女のような人を評価している」というメッセージとして受け取られます。それが、1人ひとりの活力を上げたり下げたりする可能性があることまで意識すると、自ずと「私は『この人が良い/悪い』と思う」というような考えだけで、評価に携わることがなくなってくるように思います。

・社会情勢からブレイクダウンする思考
会社の規模による違いはありますが、社会の中の1法人であるということに変わりはないので、常識から外れないようにすることが重要です。そのために、社会のトレンドを常に抑えておく必要があります。そこから、自社がどういう方向に向かうべきなのか、そのうえでどのような人材戦略を取るべきなのかを説明できる必要があります。

・主語を「I」にしない
「私がこうしたい」という意志はとても大事なのですが、エゴイストにならないことが重要です。「あなたはどう思いますか?」と投げかけられた際には、「何が組織にとって最適だと思いますか?」という様に置き換えて考えるようにしています。場合によっては、個人の考えとは異なっていても、組織にとって適切なことは多くあると思います。

・相手に思いを馳せながらも、冷静に判断すること
相手の状況は理解しつつも、周りの人たちとの公平感や、経営のリソースをどこまで費やせるかみたいなところも踏まえてフェアに判断し、その理由も正直に伝える必要があります。もし仮に、個人のニーズに答えられない場合でも、「制度だからダメ」と伝えるのではなく、「制度上はここまでできる。これ以上は難しい。でも、こういう工夫もできるし、そういう人を紹介することもできる。」というところまで丁寧にすると大抵の場合は理解していただけます。

人事キャリアを目指す方にアドバイス

まず、基本的にはそんなにキラキラした世界ではなく、凡事徹底の世界であるということをお伝えしたいです。
次に、働き方という観点では、私たちは労働法の下で働いているので、どういう判断をするにしても法律や制度、判例に立ち返る意識を持つことが大切です。
そしてこの2つが意識できていると、一見キラキラしている様な仕事をやっても、地に足ついた判断ができ、信頼される人になれると思います。

結構、多くの企業で人事としての1番最初のキャリアとして「採用」にアサインすることがあると思いますので、その観点でお話します。個人的にはファーストキャリアで採用に携わることは、良いことだとは思います。会社のことを最も理解しようと取り組めるし、それを外部の人に上手く説明するという意味でも、重要な最初の仕事だと思っています。ただ、上から目線にならないようにマインドの持ち方には注意をする必要があります。あと、「採用」を担当するにあたって、私がかつての上司からアドバイスされたのは「採用は会社の門番である」ということです。これは、「良い人を採用することに注力するだけでなく、組織に合わない人をできるだけ採用しないように取り組む」ことです。一度採用した人は簡単には辞めさせることはできないですし、組織に合わないまま働くということは、本人にとっても関係者にとっても決して幸せなことではありません。携わった人には幸せになってもらいたい、出来るだけ不幸せにならないように最善を尽くすというこの目線をぜひアドバイスしたいです。

あとは、給与や人事厚生に関するオペレーションを担当する方もいらっしゃると思います。そうした仕事に関しては、その仕事の意味や目的を常に念頭におくことが大切だと思います。実務の仕事をミスなく完遂するということは素晴らしいことなので、仕事の目的・前後工程との関係を意識しながら仕事をすると、自分なりの課題意識が芽生えたり、改善を提案したり、一段高いレイヤーで仕事に臨むことができるようになったりすると思いますので、ぜひおススメしたいです。

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