未経験で人事になりたいあなたへ 016/100 村上さん
未経験で人事になりたい方向けに、人事コンサルタントの多田が100人の人事にインタビューをする企画「未経験で人事になりたいあなたへ」
村上さんとは、4年前に初めてお会いさせていただき、今回のインタビューを機に、久しぶりにお話を伺わせていただきました。「人事」だけの経験ではなく、営業・事業開発、またフリーランスとしての活動経験もある、ユニークな経歴の方です!
経歴
ー 大学を卒業して一番最初はどんな会社に入ったんですか?
設立9ヶ月目の総合営業代理店のベンチャー企業に入社しました。当初は採用代行や人材派遣などの営業を兼務しながら自社の新卒・キャリア・アルバイト採用に従事していました。入社を決めた理由は、当時の人事責任者の方と会社の成長速度に魅力を感じたからです。会社の成長速度に対して、人数が足りない状態だったので、手をあげればなんでもできる環境でした。
ー 具体的にはどんな仕事をしていたんですか?
最初の3年目までは、主に採用と研修の企画・運営に従事していました。
1年目から採用以外にもオンボーディングなどに携わり、2年目以降から事業所立ち上げに伴う採用や、子会社・協力会社の採用支援などで、一人で関西や九州にて採用活動を行っていました。この頃には予算管理や人員計画、退職分析からの施策改善などにも携わり、経営層の方と直接、予算立てから人員計画・戦略について話し合う経験もさせていただきました。
ー 人事の仕事は自ら望んでいたんですか?
最初は営業寄りの立場でしたが、組織編成などの経緯を経て、人事の仕事に寄っていきました。
ー 3年目以降はどんな仕事をされていたんですか?
この頃には1,000人以上の組織になっていたこともあり、採用と教育だけでは解決できないところに課題感を持ち始めました。4年目に制度企画や組織開発、労務対応から組織改善を目指すHRM課を立ち上げて、評価制度の策定から導入、社内イベントの施策運営、就業規則管理、社内の労務トラブル対応やリストラクチャリングなどにも従事するようになりました。
その後、リーマンショックの他様々な影響が重なり、会社が倒産してしまいましたが、倒産後は社外の労働組合と協力し、従業員の労働債権の対応などにあたりました。
ー 次はどんな仕事をしたんですか?
社内の先輩から採用の委託案件を紹介いただいた事を機に、業務委託や契約社員というフリーランスに近い形で人事を1年半ほど経験し、その過程で社内広報や新規事業のサポートなどに携わりました。
30歳手前の時に、インテリア小売業最大手のグループ会社であるメーカーに人事で入社しました。日本人従業員が30人程度で海外従業員が約5,000人の会社で、日本の会社における人材採用・教育研修・制度企画・昇給昇格管理・労務管理・就業規則管理・給与計算といった人事周りはほぼ全て担当しました。他にも、海外子会社の賃金体系や評価制度の見直し、ローカル幹部候補の育成プログラム、また人事の仕事以外にも、自社商品を国際家具展示会に出店する際のプロジェクトにも携わることができました。
現在の仕事内容
現在はIT企業にて、人事制度企画を担当しており、主に福利厚生や働き方に関する制度の企画を取り扱っています。また、兼務でキャリア採用も行なっております。
経験してきた人事の仕事
戦略から実行まで幅広く行なってきましたが、日々勉強と反省と内省の連続ですね(笑)
人事の仕事のポジティブな面
・人と事業の成長に貢献できる
採用や教育などを通じて人が成長していく過程を見ると、その個人だけでなく事業に対しても貢献ができていると感じることができます。自分が採用した方がイベントや表彰の際に壇上に上がるなどで、活躍しているところを見ると、採用することができた喜びとともに事業成長への貢献を実感することができます。
・経営の視座に触れられる
仕事内容や役割によっては経営に起案することや意見を聞く場面もあるので、経営の視座や重要な意思決定に触れられることがあり、自分が見つめたことのない新たな視点や考えを醸成することができます。
時に厳しい指摘を受けることもありますが、それは会社の成長に関する視点からの指摘であり、それを達成することが自分の成長にも繋がると考えています。
・会社の文化醸成に寄与できる
制度などの仕組みを作ることよりも、文化を創造していく事の方がその何倍も難しいですが、文化醸成していく過程にこそ面白みがあります。複雑で難易度の高い仕事を楽しむことができるのは、人事の仕事の醍醐味だと思っています。
・新しいものに触れる機会がある
時代の変化とともに人事の仕事も変化をしていくので、新しいツール・システム・ノウハウなどに触れる機会があります。会社が何を求めているかにもよりますが、自分次第で、新しいものをインプット・アウトプットをする機会が得られるはずです。
人事の仕事のネガティブな面
・自分の行いがすぐに結果となって現れることは少ない
採用活動などでは定量的な目標を定めることができ、目に見えて結果がわかる一方で、人材育成や組織開発、制度設計などでは、その効果がすぐに現れるとは限りません。むしろ長期的な視野を持って行動する必要があり、短期での成果を好む方には辛抱強さが求められます。
また、労務系の仕事においては、社内サービスの提供を誠実に的確に行うことが求められ、主役というよりも縁の下の力持ちの存在としての考えが必要です。
・多くの人と関わる一方でストレスも溜まる
部署内で完結する仕事が少なく、人事の仕事は多くの人たちとの連携が求められます。それぞれの意見や考えを集約していく過程で双方の間に挟まれ葛藤する場面もあり、時に「憎まれ役」となり、厳しい現実を経営者や従業員に理解してもらう場面もあります。その上でうまく自分のストレスやモチベーションと向きあうことが必要になります。困った際には、人事経験者の方に事象と課題を聞いてもらってアドバイスをもらうこともいいかもしれません。
人事プロフェッショナルに必要な要素
・価値あることを正しく行い、強い意志を持つ
「社内の◯◯さんが言っていたから…」「著名な本に書いてあるから…」よりも、今起きている事象に対してどう向き合ったらいいのか?本当に価値のあることは何か?を考え、正しく判断する必要があります。そのためには、会社・組織の理想像を常に考えることが重要だと思います。
例えば、社内の制度を作る際に、答えがない中で色々な人の話を聞いていくと、本質的な課題などが見えにくくなることがあります。結局何がしたいのか、何を実現したいのか、と自分の意志を持つ必要があると考えます。
・主体的に関係者を巻き込む
一人の力で成し得ることには限界があります。また、誰かの主体性に任せるのではなく、自ら必要な関係者を巻き込み推進していく事が必要だと考えます。泥臭いことも多々ありますが、主体性を持って取り組んでいけば、意志を汲み取ってくれた仲間(関係者)とともに大きな推進力を生むことができます。
・人事は会社の顔であるという認識
人事は社内外における会社の顔であると考えています。採用活動においては社外向けの顔ですし、社内においては従業員の見本です。社内のルール・遵守事項・コンプライアンスを率先して守っていかなければなりません。
人事キャリアを目指す方にアドバイス
時代は常に変化していて、それは人事の世界でも同様です。
特にIT業界やベンチャー企業の流れは速く、組織変革も求められる中で、正攻法があまりありません。1年前の手法で解決・達成していたことが数年後には綻びが発生し、耐えられなくなったり、満足に達成できなくなることもあります。時代は変化し続けているため、自らも変化していく必要があり、そのためには学び続ける姿勢が大事だと日々思います。
また社内外において、多様な職種の方達との繋がりを持つ事で自分の視野を広め、成長の機会を持つことで、人事というキャリアを選択した際の可能性を大いに広げられるでしょう。
人事でなくても人事に関する仕事はできると思います。例えばその会社の採用活動です。採用活動を行うのは人事だけである、というのはひと昔前の考え方で、会社全体としていい人を採用しようという文化が広がっています。まずは、うちの会社にとってどんな人が入ってくれたら嬉しいのだろうかと考えてみるのもいいと思います。
自分が縁の下の力持ちでありたいという方は労務管理などに向いていると思います。勤怠管理や給与計算などのオペレーション業務以外にも、休業やメンタルに関する分野を対応する際には、人に寄り添うスタンスが重要となってきます。一方で、労務管理は採用とは違って、前提となる知識がある程度必要となってきます。その知識を本・ネット・人からインプットしておくことをオススメします。
最後に、人や会社やその会社が扱うサービスなどに関心があったり、それらの成長・可能性を広げていきたいと考えている方にこそ、人事になってもらえたらなと思います。きっと、楽しんで人事をすることができると思いますし、苦しい時にもその可能性を信じて、前向きにいることで、自分だけでなく人事に関わる関係者とともに良い成長ができると思います。